教皇
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教皇(きょうこう)は、キリスト教の称号の一つ。 ギリシャ語でπάπας、ラテン語ではpapaまたは"pontifex"という。パパとも。原義は「父」。儀典上の敬称は、聖下(せいか、His holiness の訳)または台下という。教会内とりわけ教派を同じくする場合には聖下を用いる。日本政府はローマ教皇に対して台下を使用する。
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[編集] 現在の用例
東方教会においては、アレクサンドリア総主教の称号として用いられ、かつ歴史的にはローマ総主教の称号(およびその歴史的後裔たるローマカトリック教会のローマ総主教の称号)としても用いられる。
東方正教会では、自派のアレクサンドリア総主教に使用される称号。歴史的にはローマ総主教の称号でもあり、かつローマ司教座(総主教座)の後継者はカトリックのローマ教皇であると認識する。したがって東方正教会は、東西分裂後のローマ総主教すなわちカトリックの首長も、教皇の称で呼ぶが、あくまでも他派の指導者として扱っている。
日本ハリストス正教会の奉神礼ではパパの語が使用されるが、生者の記憶に際しては教皇が使用される。(例:「ローマのパパ・グレゴリイ並びに諸聖人の転達によりて……」/「神はアレクサンドリアの総主教・教皇・至福なる某を記憶せん。今もいつも世々に」)。ただし、文書中などでは、「教皇」や「アレクサンドリア教皇」とはせず、もっぱら「アレクサンドリア総主教」と呼ぶ。
古儀式派、ロシア等スラブ系の正教会では、パパの語は、神品(聖職者)一般を意味する語としても用いられる。ただし、呼称としては用いず、呼びかけには「バブーシュカ」(お父さん、神父さんの意)と呼ぶ。この語は、カトリック教会の教皇を連想させるため、文脈によっては極めて侮蔑的な意味を用いるため、注意が必要である。
コプト正教会においても、自派のアレクサンドリア総主教に教皇の称号を用い、たんに教皇と呼ぶ。コプト教会と教義を共にする単性論教会では、この称号を尊重する。ただしコプト正教会もまた、ローマ総主教座が歴史的連続性をもち、教皇号を用いることを認めている。
一方、中世以降の西方教会、すなわちカトリック教会において、教皇はローマ司教にしか使用せず、「教皇」とたんに呼べばそれはローマ教皇を意味する。パパという敬称も同様である。この意味での教皇は、かつて法王とも別称されたが、現代では公式なカトリック教会の訳語としては教皇で統一されている。カトリックでは聖下はかつてローマ教皇のみの敬称であったが、第2バチカン公会議以降、上記のアレクサンドリア教皇を含む東方教会の高位聖職者にも用いている。
[編集] 現在の教皇
- カトリックのローマ教皇:ベネディクト16世 (ローマ教皇)
- 東方正教会のアレクサンドリア教皇:アレクサンドリア総主教テオドロス2世
- コプト正教会のアレクサンドリア教皇:アレクサンドリア教皇シェヌーダ3世
- その他、教皇を自称する小グループの指導者が多く存在する。
[編集] 歴史
初めは、福音書記者マルコが創設したとされるエジプトのアレクサンドリア教会を主管するアレクサンドリア総主教にのみ使用されていた。エウセビオスの『教会史』では、3世紀頃からアレクサンドリア主教の称号となったと伝えている。4世紀頃から使徒ペトロを継承するとされるローマ総主教にも使用されるようになった。
そして次第に、ローマ総主教が主管するラテン系の西方諸教会(現在のカトリック教会)では、ローマ総主教のみに使用されるようになった。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 「ローマ法王」と「ローマ教皇」、どちらが正しい? - カトリック中央協議会