水平歩道
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水平歩道(すいへいほどう)とは、黒部川の上流域に設けられた欅平から仙人谷までの約13kmの歩行者専用道(登山道)である。道は黒部渓谷の左岸の絶壁を「コ」の字にくりぬいて作られており、70cmから100cm程の幅で標高約1000mの等高線に沿って水平に伸びる。 水平歩道は、黒部川の水力開発を目的として1920(大正9)年に東洋アルミナム会社によって開かれたが、後に東洋アルミナム会社が日本電力株式会社に経営を譲渡したため、日本電力の管理下に置かれることになる。しばしば水平歩道は日電歩道と呼ばれることがあるが、この様に東洋アルミナム会社によって作られたという意味では不正確な呼称である。水平歩道は黒部川第三発電所の建設資材の運搬に利用されたが、当時は今ほど道が整備されておらず、重荷を背負った歩荷の転落事故が相次いだ。また、水平歩道が通過する志合谷では1938年に泡雪崩が発生し、84名もの犠牲者を出す大惨事も起きている。
戦後、関西電力が黒部ダム建設の条件として、水平歩道を含めて登山道を毎年整備することが義務づけられたため、今日まで維持管理されている。水平歩道は、歩行に困難を伴うが、その難易度は日電歩道よりも少なく、一応一般向けコースとされている。しかし、一歩足を踏み外すと数百メートルの絶壁の下に転落し、救出も収容も困難を極める難コースであり、実際に毎年、数件の転落事故が起きている。
地元では、より安全性を高めた整備を求める声もあるが、自然環境保護(全区間が中部山岳国立公園内)や、実際の工事方法などに課題が多く、具体化するには至っていない状況である。