液体水素
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液体水素(えきたいすいそ)とは、液化した水素のこと。沸点は摂氏-252.6℃で融点は摂氏-259.2である(重水素では、沸点-249.4℃)。水素の液化は、1896年にイギリスのジェイムズ・デュワーが初めて成功した。
ロケットエンジンの推進剤として利用され、LH2(Liquid H2)と略称される。液体水素を燃料、液体酸素を酸化剤としたロケットエンジンは実用化された化学推進ロケットとしては最も高い比推力を誇る。しかし、液体水素は非常に軽い液体で、その比重は70.8kg/立方メートル(20Kの時)と、水に対して約1/14でしかない。したがって燃料タンクに詰めた時、非常に大きな体積を取る。したがって、体積効率やタンクの構造効率から見た場合、液体水素は非常に効率が悪い推進剤である。
近年では、特に旧ソ連諸国の航空宇宙企業を中心として、石油の代替として液体水素を燃料とする旅客機の研究が進められている。液体水素燃料を用いた旅客機は(液体水素の製造過程はともかく)旅客機の飛行中には二酸化炭素を排出せず環境負荷が低いとされているが、前述のとおり極めて大きな燃料タンクが必要となるほか、飛行中の蒸発、極低温燃料の取り扱い、燃料供給体制の構築など解決すべき課題は多い。