無細胞タンパク質合成系
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無細胞タンパク質合成系(cell-free protein synthesis system )とは大腸菌等の細胞を直接使用せず、代わりに大腸菌などの各種細胞内に存在する酵素などを利用してタンパク質を合成する方法のことである。大別するとコムギ胚芽由来・大腸菌由来・ウサギ網状赤血球由来・昆虫細胞由来の合成系が広まっており、転写及び翻訳の際にはそれぞれの細胞由来の酵素類を用いる。
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[編集] 細胞系と無細胞系
DNAはPCRによって容易に複製することが可能となった。しかしタンパク質の場合、2006年の時点においてタンパク質を複製する技術は見つかっていない。このためタンパク質合成を行う場合、DNAからmRNAに転写し転写産物を翻訳するという一連の流れを大腸菌等の細胞を用い人為的に行うことで、タンパク質合成を行うという手法がある(細胞利用のタンパク質合成系)。しかし細胞を用いる方法ではいくつかの問題点が挙げられる。例を挙げると合成に手間がかかる、合成可能なタンパク質が制限される、合成によって得られるタンパク質の量が少ない、合成に必要とする時間及びコスト等が非効率的、バイオハザードの危険が存在するといった点が挙げられる。また生命倫理の問題も存在している。
一方無細胞タンパク質合成系には様々な利点が存在する。例としては、生きた細胞を利用しないために合成に必要な労力が細胞系と比較して小さくバイオハザードのリスクも少ない、生物にとって有害となるタンパク質も合成することが可能、容易な作業によって大量に目的のタンパク質を合成することが可能といったものが挙げられる。
従って、無細胞タンパク質合成系では細胞利用のタンパク質合成系の持つ問題点のいくつかを解決することが可能だと言える。
[編集] 応用分野への展開
ゲノムの塩基配列を解読するゲノムプロジェクト以後の研究としてポストゲノムが存在する。ゲノムから合成されるタンパク質の総称をプロテオームと呼び、ポストゲノムの一分野としてプロテオームを扱う研究分野をプロテオミクスと呼ぶ。無細胞タンパク質合成系はプロテオミクスにおいて研究に欠かせない手法であるため、バイオ機器として商品化されている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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