熱帯降雨観測衛星
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熱帯降雨観測衛星 (ねったいこううかんそくえいせい)、英語名Tropical Rainfall Measuring Mission (TRMM)とは、日本(宇宙開発事業団(NASDA)と通信総合研究所)とアメリカ(NASA)の共同人工衛星ミッション、およびその人工衛星の名前である。 打ち上げは日本のH-IIによって行われ、運用はTDRSを利用しゴダード宇宙センターに委ねられている。
衛星の設計寿命は3年であったが、NOAAの要望等もあり運用延長の決定を重ね、2009年まで運用されることが決定している。 観測域は熱帯域(緯度が約38度より赤道側)に限られているが、海洋学・気象学にとって重要な観測データを提供しENSOの機構解明などに貢献している。
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[編集] 搭載測器
TRMMには日本が開発したPRとアメリカが開発した4つのセンサーが搭載された。
[編集] Precipitation Radar (PR)
PR(降雨レーダ)は13.8GHz付近の2つの周波数で観測する世界初の衛星搭載降雨観測レーダであり、通信総合研究所とNASDAによって開発された。観測幅は220km、距離分解能は250m、水平分解能は4.3kmで、海洋および陸域上の降雨の3次元構造を観測する。
[編集] TRMM Microwave Imager (TMI)
TRMM Microwave Imager (TMI) はマイクロ波放射計で観測周波数は10.7、19.4、21.3、37.0、85.5GHz(水平/鉛直偏波)、観測幅は760km、水平分解能は4km(85.5GHz)から38km(10.7GHz)である。TMIによって海洋上の雲水量、可降水量、海面水温、海上風速が観測される。
[編集] Visible and Infrared Scanner (VIRS)
Visible and Infrared Scanner (VIRS)は可視・赤外域の放射計であり、観測波長は0.64、1.6、3.75、10.8、12μm、観測幅は720km、水平分解能は2kmである。VIRSから、高解像度の雲分布、海面水温などが観測される。
[編集] Clouds and the Earth's Radiant Energy System (CERES)
Clouds and the Earth's Radiant Energy System (CERES)は0.3から50μmの3つの広域帯観測バンドで観測する水平分解能25kmの放射計で、地球放射エネルギーおよび雲の上端を含む大気上層から地表面までの大気放射エネルギーを観測する。
[編集] Lightning Imaging Sensor (LIS)
Lightning Imaging Sensor (LIS)は雲内部、雲から地表までの高度の雷の分布や変化を観測する観測幅600km、水平分解能4kmの光学センサである。
[編集] 計画の推移
- 1997年11月28日、NASDAのH-IIによって打ち上げられる。高度350km、傾斜角約35度、周回周期約90分の太陽非同期軌道に投入。
- 2001年1月31日、定常運用終了、延長運用へ。
- 2001年8月7日、大気の影響を減少させるため軌道高度を402kmへ上昇。
- 2004年7月5日、NASAからの提案によりJAXAは同年7月中の運用停止に同意。
- 2004年8月5日、ハリケーンシーズンを迎え運用延長を決定。
- 2005年1月4日、再び運用延長を決定。
- 2005年8月28日、2009年まで科学ミッションが継続されることが決定。