琴古主
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琴古主(ことふるぬし)は、日本に伝わる琴の妖怪。景行天皇時代の伝承によるものと江戸時代の画図に描かれたものの二つがある。
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[編集] 景行天皇時代の伝承
佐賀県神埼郡でのこと。天皇の命により、家臣たちが宴の場を作るため、神崎郡南部のとある丘の草木を刈り取って宴ができるよう整えた。天皇は宴の場に喜び、記念として琴を丘の上に置いた。すると琴は姿を変え、青々と茂るクスノキの木となった。
それ以来、夜にこの木の付近を通ると、どこからともなく琴の音色が聞こえるようになり、いつしかその木は琴古主の名で呼ばれるようになった。琴古主の魂は、ときに人家の琴に乗り移ることもあったという。
[編集] 江戸時代の琴古主
鳥山石燕による『画図百器徒然袋』に、付喪神(器物が変化した妖怪)の一種として描かれている。筑紫箏がすたれ、その曲の音色すら人々の心から忘れ去られてしまったとき、筑紫箏を奏でる琴が変化して妖怪となったものとされる。
元の琴の持ち主の心が琴に乗り移り、人々に琴の音色を忘れさせないよう、琴古主自らが琴を奏でるとも言われている。
[編集] 考察
鳥山石燕より以前、古くは室町時代の『百鬼夜行絵巻』にも琴の妖怪が描かれていることから、石燕はこれをもとに琴古主を描いた可能性が示唆されている。