男の星座
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男の星座(おとこのせいざ)は、梶原一騎原作、原田久仁信作画による劇画作品。日本文芸社の漫画雑誌「漫画ゴラク」連載。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
「一騎人生劇場」の副題もあり、主人公に自分自身を据えた、梶原一騎の本格的自伝漫画である。梶原はこの作品を引退作品として描いていたようだが、結局完結を待たずに梶原は他界し、残念ながら未完で終わっている。
それまでも『四角いジャングル』・『空手バカ一代』など、空手・プロレス界を中心とした実録(とされる)作品を手がけてきた梶原だが、今度はそれを今まで裏から見てきたフィクサー的存在の、自分自身の視線で描こうとした集大成的なものになるはずであった。が、物語は、最終的に「週刊少年マガジン」からプロレス漫画の原作を依頼されるところで終了という、フアンからすればなんとも歯がゆいところで終了している。
大山倍達との関係決裂については、「後に述べることにする」というナレーションが入る回があったものの、そこまで話は展開しなかったため、梶原と大山の蜜月状態しか描かれていない。また、大山に次いである意味で最も梶原と縁深い格闘家としてアントニオ猪木がいるが、本作では入門会見のシーンでジャイアント馬場とともにほんの1・2ページ登場したにすぎない。その場に梶原もいて、猪木についての質問を力道山にぶつけるシーンがあるが、「まさかこの数十年後、愛憎の大ドラマを繰り広げるとは夢にも思っていなかった」とある。
問題の「内容の真偽についての信憑性」だが、この作品に至ってもやはり100%事実かは疑問。例えば春山章(春山一郎)の存在については当時を知る人の意見を見ても「実在はしたけど、あの人物像は梶原の創作」と見る向きが強い。
前半はまさに梶原の生い立ちから家族との関係性、劇画原作を手がけるに至る経緯など自伝的であったが、後半になると大山道場の話や、力道山、柳川次郎、ジャニー氏など他人のエピソードが増えてきて、作品の主人公としての一太の影も薄くなってくる。関係者の間では、「あいつは誤解されやすいんだから、自分の事を知ってもらうチャンスだったのにここにきてなぜ他人の話ばかり書くんだ」といわれていたらしい。
何度か復刻されたが、最初の単行本であるゴラクコミックス版には、最終巻巻末に真樹日佐夫原作(作画は本編と同じ、原田久仁信)による「さらばアニキ」が収録されている。梶原の葬式を仕切る真樹が、幼少時から、成長し劇画原作者として成功するまでの梶原との思い出を振り返る短編。あとがきも寄せておりここで、最も梶原本人やその周辺を知る真樹に続編を望む声があったという事実を明かすが、やはりこれは原作者に失礼とのことで固辞している。
[編集] 登場人物
- 梶一太
- 主人公。子供のころからケンカっ早くて少年院にも入っていた。講道館に通う柔道少年だったが、木村政彦と力道山の試合を観戦に行った際、リングにあがって力道山にケンカを売った男・大山倍達に心を奪われ、以後大山とは不思議な縁を保つ。少年雑誌の原稿募集に応募し採用、ペンネームを梶原一騎とし、少年向け小説家として起つ。酒と女に弱い。
- 梶東輔
- 一太の父親。戦後の文壇史を知るやり手編集者だったが、「世間と妥協せん」ことで編集者を辞めている。肥後もっこすで無愛想。作家を目指す一太を影ながら見守っていたが、胃ガンで死亡。
- 梶真二
- 一太の実弟。頭脳明晰学力優秀ながら、ケンカっ早さと腕力は兄譲り。本作では、陰日向と一太をサポートしてくれる理解者。もちろんモデルは真樹日佐夫。
- 八神カオル
- 浅草の超売れっ子ストリッパー。一目ぼれした一太の突撃アタックにより陥落。一太の初めての女性である。共に暮らし始めるが、エリートサラリーマンに言い寄られたカオルの将来を慮った一太が身を引き離別。
- 言うまでもなく、世界で最も有名であろう空手家であり、梶原作品に登場する実在キャラクターとしても最も有名な人物の一人。ウシ殺しの記録映画に出たり、空手の大会で優勝したり、アメリカで他流試合をしてはいたものの、日本では全く無名に近かった彼にほれ込んだ一太により、マスコミに紹介され、以降一太との友情が生まれる。現実には、梶原と大山の関係は断絶してしまうのだが、そこにストーリーが至る前に連載は梶原の死によって終了してしまった。それまで梶原によって描かれた大山本人像や、大山を投影して描かれたキャラクターのいずれとも雰囲気が違い、明るく穏やかなキャラとして描かれている。
- スーパースターのプロレスラー。力道山の観戦記を執筆した一太の記事が自分寄りではなかったことに怒り、関係者を呼び出して会見の場であった料亭の柱を空手チョップで叩き折って見せる。その時の一太の妙に腹の据わった態度に感銘し、それが縁で一太が少年向けプロレス小説「鉄腕リキヤ」を連載するにあたり協力し、以後度々付き合うことになる。感情の起伏が激しく、「リキさん」「イッキさん」と呼び合う仲になっても途端に冷たくなったりする。
- ユセフ・トルコ
- 力道山門下の外人だが、元レスラーで力道山のマネージャー。日本語に堪能で、一太と力道山のパイプ役を務める。現実では力道山死後、梶原プロのスタッフとなるが、そこまでストーリーは進展しない。
- 春山章
- 空手バカ一代に登場した「有明省吾」のモデルとなったとされる青年。大山の門下生。長崎で原爆に被爆しており、余命いくばくもない。非常にストイックで、大山を神のごとく崇拝している。一太とはウマが合い、よく一緒に行動していたが、ジャニーが死んだ原因を作った相手への復讐で大暴れして逮捕、脱走しようとクルマで逃走の際に運転ミスで壁に激突、壮絶な死を迎える。
- ジャニー
- 自称、大山空手道場の私設応援団長。大山道場の近くでいつもオデンの屋台を開いているオカマ。美男子の春山にホレており、春山をつれてきた門下生は無料サービスで飲ませるとあって、店は練習後はいつも大山門下生でにぎわっている。過去、大きな店を構えて繁盛していたが、覚醒剤に手を出して捕まり、服役中店のナンバー1であったリズに店を乗っ取られてしまった。その後、リズの雇ったヤクザにイヤガラセを受け、商売が出来なくなりまた覚醒剤に手を出し、手入れを受けた雀荘から逃げようとして転落、死亡する。実在の人物らしいが、一際キャラクターが立っている。
- 超大物のヤクザ。興行の関係で力道山と知り合いであるが、戦後のグレン隊時代に大山とも旧知。ヤクザともめ事を起こした一太から相談を受けた大山の依頼で裏から手を回し、手を引かせた。
- 大山道場四天王の一人。元、佐郷屋留雄(劇中では佐郷屋寅雄)の高弟であり、大山を慕って入門してきた(実際は大山側から有望な人材を求められて来た)。最初期の弟子のため、人数が増えた大山道場では門下生たちの鬼師範代であり、人情味あふれる兄貴分的存在。
- 最強をほこり、実際には名勝負とされていた力道山との試合さえ実は勝敗の結果から試合展開にいたるまで一方的にコントロールし、リング内外の実力差を表現していたプロレスラー。インタビューに訪れた一太の、レオ・ノメリーニに負けた試合についての容赦ない質問に、試合内容を決めるのは自分自身の意志だと伝え、そのとてつもない強さとしたたかさを見せ付けた。