相続放棄
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相続放棄(そうぞくほうき)とは、民法上の概念、用語の一つであり、相続人が遺産の相続を放棄すること。被相続人の負債が多いなど相続に魅力が感じられないケースや、家業の経営を安定させるために後継者以外の兄弟姉妹が相続を辞退するときなどに使われる。なお、3ヶ月以内に限定承認又は相続放棄のどちらかを選択しなかった相続人は(家庭裁判所に期間の伸長を申し出なければ)単純承認とみなされる(第915条1項、第921条2号)。
目次 |
[編集] 相続放棄の方法
[編集] 相続放棄の効果
始めから相続人とならなかったとみなされる(第939条)。放棄者の直系卑属について代襲相続も発生しない(第887条2項参照)。
その他、相続財産の管理義務として、第940条(自己の財産におけるのと同一の注意義務)。その他、単純承認、相続放棄と共通する効果として第919条(撤回の禁止)。
相続放棄により、後順位の者が相続人となる。たとえば配偶者と子が相続放棄をすると、直系尊属(父母等)が相続人となる。直系尊属が相続放棄をすると、兄弟姉妹が相続人となる。したがって、相続財産が債務超過の場合、債務を免れるためには、これらの者すべてが相続放棄をする必要があることになる。
なお、相続放棄をしても、他の相続人らが納付すべき相続税の総額は原則として変化しない。これは、相続放棄をすることで相続税の総額を変動させることができるとすると、租税回避を誘発するおそれが高いためである。例えば、長男が被相続人の場合に、両親が相続放棄をすることで次男~五男までが法定相続人となるとすると、法定相続人の人数の増加分だけ非課税限度額が増加し、納付税額が減少する。このような租税回避行為を防止するために、相続税法上、相続放棄によって法定相続人の数は変化しないこととされているのである。
[編集] 相続放棄と登記
相続放棄には絶対的な遡及効があるので、登記なくして第三者に対抗できるとするのが判例(最高裁昭和42年1月20日第二小法廷判決)である。