経営戦略論
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経営戦略論(けいえいせんりゃくろん;strategic management, competitive strategy)とは「いかに競争に成功するか、ということに関して一企業が持つ理論」である経営戦略(以下「戦略」と呼ぶ)に関する研究を行う学問分野である。
かつては現役を退いた経営者がビジネススクールで授業を行い、そのなかで彼らの経験則を議論したり、経営の各機能(研究開発、オペレーション・マネジメント、マーケティング、会計などの機能分野)にそれらの経験則を応用してみたりといったものであったが、今日ではほとんどのビジネススクールの教員は経営学か関連分野での博士号を持ち、授業では学術的研究に裏打ちされたさまざまなモデル、概念、理論を議論したり現実のケースに適用したりする内容になっている。このことは、経営の人間的要素が授業から失われてしまった側面でもあり、これに対処するため、ビジネススクールでは「ケース」を用いる教育手法により、理論モデルを現実の世界で用いる場合に対処しなくてはならない社会的複雑性を擬似的に体験することで克服しようとしている。
経営戦略論は、経営関連諸学の進化プロセスにおいてもっとも未開拓であり、もっとも未熟な領域の1つである。財務(Finance)と組織行動学(Organizational Behavior)は1950年代までに厳格な学術領域として地位を固めつつあったし、マーケティング、会計、オペレーション・マネジメントの分野も1960年代までには同様の地位に達していた。
経営戦略論が学問として未熟な状態から現代の学術理論ベースの分野へと大きく進化した象徴的な出来事は、マイケル・ポーターのCompetitive Strategy (1980) (邦訳『競争の戦略』)と、リチャード・ルメルトのStrategy, Structure, and Economic Performance (1974) (戦略、企業構造、そして経済的パフォーマンス)の発表である。