翼指竜亜目
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?翼指竜亜目 Pterodactyloidea |
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翼指竜亜目(よくしりゅうあもく、Pterodactyloidea)は、翼竜目の2大グループの一つ。プテロダクティルス亜目、翼手竜亜目ともいう。グループの名称は、この群を代表する属プテロダクティルス(Pterodactylus:πτερόν=翼・δάκτυλος=指)から取られ、日本語はそれを訳したものである。
目次 |
[編集] 概要
翼竜目のもう一つのグループ嘴口竜亜目に遅れて現れ、ジュラ紀後期から白亜紀末期にかけて世界中に分布していた。嘴口竜亜目に比べてさらに特殊化が進んでおり、祖先種と目される化石はまだ発見されていないが、嘴口竜亜目から進化したことはほぼ間違いないと考えられている。生息期後期には非常に大型の種が現れたことでも知られ、史上最大の飛行動物もこのグループに属する一方、最小種Pterodactylus elegans は翼竜のなかでも最小の翼開長25cmほどである。
[編集] 形態
嘴口竜亜目に対して以下のような身体的特徴を持つ。
- 尾は短縮しておりほとんど消失しかかっている。
- 中手骨は長く、最低でも前腕長の半分以上、場合によっては前腕よりも長くなる。
- 頭骨は非常に伸長し、外鼻孔と前眼窩窓が一体化する。大後頭孔は頭骨の下方に向かって開口するため、頸椎は頭骨下部に接続する。
- 後脚の第5趾はほとんど退化消失している。
- 頭骨の前部・後部の正中線上に鶏冠状構造が発達することがある。また、歯を失う者も多い。
- 頸椎が伸長して首が長くなっていることがある。
- 後期には身体が大型化し、滑翔・帆翔に適応したと思われる種が多く現れた。
- 胸胴椎の前部が融合して背心骨(notarium)と呼ばれる構造になることがある。
[編集] 生態
基本的には魚食性、小型のものは虫食性であると考えられているのは嘴口竜亜目などと変わりはないが、特筆すべき点として濾過食性のものが現れていることが挙げられる。クテノカスマ科の翼竜は上下顎辺縁に細長い歯が外向きにびっしりと並び、プテロダウストロ科では下顎から上向きに細い毛状の濾過構造(真性の歯かどうかは明確にされていない)が並び、時代や場所を越えて似たような濾過食に適応した構造を進化させた。彼らは現生のフラミンゴやカモ類のように水中の微小生物をその構造で濾過して食べていたと考えられている。
また、魚食性の仲間にも捕食行動に即した構造を独立に獲得した者がいる。クリオリンクス科やアンハングエラ科では、口吻先端に団扇のような半円の鶏冠状構造を有している。これは一般的には水面上を飛行しながら口吻を水面下に投入して餌となる魚を捕まえる際に、水切りとして抵抗を減ずるための構造だと考えられている。現生の鳥類にも嘴が側扁している者はいるが、特に口吻先端にそのような鶏冠状構造を発達させたのは翼竜独自の方法である。
翼竜の仲間には羽ばたく能力はなく全て滑空だけだった、という旧来の説は現在ではほとんど否定され、翼竜はちゃんと羽ばたいて動的飛行を行っていたというのが一般的な見方である。しかし、このグループに属する白亜紀後期に現れた大型種もばたばた羽ばたいて飛行していたというのは流石に現実的ではなく、主な飛行は滑翔・帆翔によると考えられている。ジュラ紀や三畳紀の翼竜も飛行生物である以上、常に羽ばたき飛行を行っていたのではなく、ある程度の大きさの者は羽ばたきに滑翔・帆翔を織り交ぜて飛行していたのはほぼ確実であるが、滑翔・帆翔をその主な飛行形態としていたのが明らかとなったのは白亜紀後期の翼指竜亜目の仲間が最初である。
[編集] 分類
翼指竜亜目には以下の科が含まれる。嘴口竜亜目に対してその科数は4倍になっており、多様性の増大が認められる。基本的な構成はWellnhofer (1991) に従っている。
- プテロダクティルス科 Pterodactylidae Bonaparte, 1828
- ジュラ紀後期 ヨーロッパに分布。翼指竜亜目最古の科。しかしこのグループは既に翼指竜亜目としての特徴を全て兼ね備えていた。
- ガロダクティルス科 Gallodactylidae Fabre, 1974
- ジュラ紀後期 ヨーロッパに分布。プテロダクティルス科に含められる場合もある。
- ゲルマノダクティルス科 Germanodactylidae Young, 1964
- ジュラ紀後期ヨーロッパに分布。ズンガリプテルス科に含められる場合がある。
- クテノカスマ科 Ctenochasmatidae Nopcsa, 1928
- ジュラ紀後期 ヨーロッパに分布。濾過食性。Nesov(1981)によれば白亜紀後期まで生存。
- プテロダウストロ科 Pterodaustridae Bonaparte, 1971
- ジュラ紀後期から白亜紀前期 南米に分布。濾過食性。プテロダウストロ1属が含まれる。
- ケアラダクティルス科 Cearadactylidae Wellnhofer, 1991
- 白亜紀前期 南米に分布。魚食性。ケアラダクティルス1属が含まれる。
- タペヤラ科 Tapejaridae Kellner, 1990
- 白亜紀前期 南米に分布。歯がなく、前頭部に大きな鶏冠を持つ。
- トゥプクスアラ科 Tupuxuaridae
- 白亜紀前期 南米に分布。全身骨格が発見されて研究が進んだことから独自の科であるとの説が出されているが、歯がない、頭部に鶏冠を持つ、等の特徴が共通する事からタペヤラ科に含まれることもある。
- ズンガリプテルス科 Dsungaripteridae Young, 1964
- ジュラ紀後期から白亜紀前期 東アジア(もしかしたら南米)に分布。口吻先端がピンセット状になっており、甲殻類や貝類を食べていたのではないかと推測されている。
- アズダルコ科 Azhdarchidae Nesov, 1984
- 白亜紀後期 ヨーロッパ・北米・中央アジア・西南アジアに分布。大型翼竜を擁するグループで、史上最大の飛行動物ケツァルコアトルスも本科に含まれる。
- オルニトケイルス科 Ornithocheiridae Seeley, 1870
- ジュラ紀後期から白亜紀後期 ヨーロッパ・アフリカ・南米に分布。
- クリオリンクス科 Criorhynchidae Hooley, 1914
- 白亜紀前期 ヨーロッパ・南米に分布。魚食性。口吻前端に水切りを持つ。ここに含まれるクリオリンクス、トロペオグナトゥスはオルニトケイルスのシノニムであるとして、オルニトケイルス科に含まれるとする説(Unwin, 2003)がある。
- アンハングエラ科 Anhangueridae Campos et Kellner, 1985
- 白亜紀前期 南米に分布。魚食性。口吻前端に水切りを持つ。現在のところアンハングエラ1属を含む。上述のクリオリンクス科を無効とする考えでは、これもオルニトケイルス科に含まれるとされる。
- オルニトデスムス科 Ornithodesmidae Hooley, 1913
- 白亜紀前期 ヨーロッパに分布。口吻は縦扁し、歯のあるカモの様になっている。
- プテラノドン科 Pteranodontidae Marsh, 1876
- 白亜紀後期 ヨーロッパ・北米・南米・東アジアに分布。日本からも本科と思われる化石が発見されている。プテラノドンを含む。
- ニクトサウルス科 Nyctosauridae Williston, 1903
- 白亜紀後期 北米・南米に分布。プテラノドン科に含められる場合がある。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- ペーター・ヴェルンホファー 『動物大百科別巻2 翼竜』 平凡社 1993 ISBN 4-582-54522-X
- E.H.コルバート 『脊椎動物の進化』 築地書館 2004 ISBN 4-8067-1113-6
- 内田亨 山田真弓 『動物系統分類学//9 下B1』 中山書店 1992 ISBN 4521072011
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