肝レンズ核変性症
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肝レンズ核変性症(かんれんずかくへんせいしょう)とは、先天性代謝異常によって無機銅が代謝されずに蓄積し、大脳のレンズ核の変性と共に肝硬変・角膜輪等を生ずる疾患である。ウィルソン病(Wilson's Disease)とも言う。5歳から15歳頃までに発病する。
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[編集] 原因
本来、消化管で吸収した銅は門脈を経て肝臓に運ばれる。肝臓では、肝細胞は銅を胆管に排出することで生体内の銅バランスを保っている。本症は、肝細胞が銅を排出する段階に異常があり、銅が肝臓に蓄積してしまう。過剰に蓄積された銅はやがて血中にあふれ出し、大脳基底核や角膜、腎臓などに沈着し、神経症状などを引き起こすようになる。
遺伝子診断により、本症ではATP7Bと呼ばれる遺伝子に異常があることが知られている。 本症は常染色体劣性遺伝である。
[編集] 症状
初期には筋硬直による歩行障害、多量のよだれを見る。進行するにつれ言語は断綴性になり、やがては発語不能となる。また、羽ばたき振戦や企図振戦が発現し、様々な精神症状(性格の変化、抑うつ、多幸、知能低下)も出現する。角膜輪はスリットランプで黄褐色・緑色の色素沈着を見ることができる。蓄積銅が肝を障害することで、劇症肝炎、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変など様々な病態を呈す。
[編集] 検査
- 身体基本検査
- カイザー・フライシャー角膜輪(Kayser-Fleischer corneal ring) : 銅が角膜の周囲に沈着し黒褐色のリングを示す。これをカイザー・フライシャー角膜輪と言う。
- 血液検査
- 尿検査
- 尿中銅排泄は増加する。
- 肝機能の低下
[編集] 治療
治療としては当然、銅の蓄積の改善である。したがって銅排泄および低銅食が治療の基本である。