訴えの利益
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訴えの利益(うったえのりえき)とは、 国家の裁判機関を用いて紛争を解決するに値するだけの利益・必要性のことである。これを欠く訴えは不適法として却下される。
民事訴訟においては、原告の請求に対し本案判決をすることが当事者間の紛争を解決するために有効かつ適切であること。
行政訴訟においては、行政処分の取消訴訟の場合、事案において本案判決を下す利益があること。
[編集] 民事訴訟
- 給付の訴えの利益:給付の訴え(給付訴訟)は、通常、被告が任意に履行しないために提起されることから、一般的には訴えの利益があるといえる。確定した給付判決がある場合には、通常は重ねて給付判決を受ける利益がないが、時効の中断の必要がある場合には訴えの利益が肯定される。
- 将来の給付の訴えの利益:将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる(民事訴訟法135条)。履行期限が到来していない以上債務者はその請求に応じる必要がないから、特にあらかじめ請求をする必要があることを要求している。将来の給付の訴えの利益が認められる例としては、原告が主張する権利の存在を被告が争っており、将来の履行期において被告が任意に履行することが考えがたい場合などが挙げられる。
- 確認の利益(確認訴訟における訴えの利益)
- 形成の訴えの利益:形成の訴え(形成訴訟)は、法規の定める形成権の行使による権利義務関係ないし法律関係の形成・変更を目的とする訴訟であるから、訴えの利益が認められるのが通常である。しかし、事情の変更等の理由により、形成権の行使が無意味であると認められる場合には、訴えの利益を欠くことになる。例えば、重婚を理由とする後婚の取消しの訴えは、後婚が離婚により解消された場合には訴えの利益を欠く(最判昭和57年9月28日民集36巻8号1642ページ)。
[編集] 行政訴訟
裁判は、現実的救済を目的とするので取消判決により原告の救済が達成できなければ、訴えの利益は認められない。
- 処分の効果が完了した時
- 行政処分が効力を失ったとき
- 原告が死亡したとき