謄写版
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謄写版(とうしゃばん)は、印刷方法の1つ。孔版印刷の1種である。ガリ版(がりばん)ともいう。
発明者はトーマス・エジソンで、1893年ごろに原型がつくられた。日本の堀井新治郎が改良。1894年に完成したものが現代につながる最初の謄写版印刷機であるとされる。ほぼ20世紀全体を通して、日本で多く使われた。
ロウ紙と呼ばれる特殊な原紙を専用のやすりの上に載せ、鉄筆という先端が鉄でできたペンで文字や絵をかく (この作業を「原紙を切る」という)。この部分は紙がけずれて細かい孔がたくさん開く。原紙の上にインクを塗り、下に紙をおいて押さえると、描いた部分の文字や絵の部分だけインクが通過し、印刷されるしくみである。原稿用紙と原版が同一であるのが特徴で、印刷後、原紙は破棄される。1970年代後半には、「ボールペン原紙」と呼ばれる、ボールペンで筆記することによってインクが通過する部分をつくる印刷原版も存在したが、ろう引き原紙にくらべて線が粗くなるものであった。
ガリ版の呼称は原紙を切る作業中に生じる音から来ている。
非常に簡易な印刷装置で、小型のものは手で持ち運ぶこともでき、原紙とインクさえあれば、電気などがなくても印刷が可能であるのが特徴である。このため、日本では小学校で多く使われ、戦地でも活用された。また、政府非公認組織がビラなどを作成するためにも多く使われた。
特に日本や中国で多く使われた理由は、これらの国では文字の数が数千から数万種類あり、すべての種類の活字を活版印刷用にそろえるのが困難だったためである。
20世紀末、1985年ごろを境に、他の簡易印刷機が出回るようになり、日本ではほとんど使われなくなった。ただし、一部の美術家がまだ使用している。
現在では、電気などがない、アフリカやアジアの小学校などで多く使われている。 インクジェットより印刷コストが安く、質では劣るが印刷スピードも謄写版方式の方が早い。