超大型住居
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超大型住居(ちょうおおがたじゅうきょ)は、東日本の縄文時代の遺跡にみられる、長さ20mを越すような超大型の建造物。特に明確な基準があるわけではないが、10m前後のものは大型住居と呼称する。竪穴式と平地式がある。縄文時代早期に現れ、前期および中期前葉に特に発展し、後期にも散見される。後述するように「住居」という名称は不正確であるが、「竪穴住居」という用語にひきずられるかたちで今日も広く使用されている。大型住居・超大型住居は、長方形・隅丸長方形および長楕円形を呈することが多く、その形状からロングハウスと称することもある。
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[編集] 特に巨大な例
いずれも、縄文時代の建物のイメージを一新する驚くべき規模を有する建造物である。北日本の豪雪地帯に所在することから、冬期の作業小屋説もあるが、祖先を共通にする近隣の集落の成員が、定期的に集まったときの宿泊設備とする考えもある。一ノ坂遺跡の場合は、石器の未製品・半製品も出土したことから石器工房址説もある。
[編集] 注目される検出例
- 美沢2遺跡(中期前葉、竪穴式、北海道苫小牧市)・・・同様の住居跡はその後北海道内では早期から後期にかけて多数存在することが確かめられている。
- 近野遺跡(前期、竪穴式、青森県青森市)・・・三内丸山遺跡に南接し、それとの関連が考慮される遺跡。
- 鳩岡台遺跡(前期、竪穴式、岩手県北上市)・・・複数の地床炉が一線に並ぶ超大型住居跡。
- 上ノ山Ⅱ遺跡(前期、竪穴式、秋田県大仙市協和)・・・中央に広場があり、その周りにロングハウス系の超大型住居だけが環状に多数並ぶというきわめて特異な構造をもつ集落遺跡である。炉は地床炉である。
- 池内遺跡(前期、竪穴式・平地式、秋田県大館市)・・・多数の竪穴住居とロングハウス系の掘立柱建物とが同時存在し、台地上を北より、東西方向に長軸をもつ竪穴住居、東西方向に長軸をもつ掘立柱建物、南北方向に長軸をもつ掘立柱建物、南北方向に長軸をもつ竪穴住居が整然と並び、集落構造の計画性が指摘できる貴重な調査事例。
- 不動堂遺跡(中期、竪穴式、富山県朝日町)・・・大型建造物発見の最初。埋甕を併設する炉(石組土器埋設炉)が2基あり、その中間に小柱穴が3本並び、さらに炉の形態が一方は円形石組、一方は方形石組になっていることで注目された。建物内部が二分されているだけでなく、異なる2つの集団の共存が指摘できる貴重な発見である。
- 池辺14遺跡(後期、平地式、神奈川県横浜市都筑区)・・・「超大型」とは呼べないがロングハウス系の平地式建物が数多く検出されたことで注目される。1つの集落で建物の形態の多様性がみられることも特徴的な遺跡である。
[編集] 大型建物(ロングハウス)の用途
大型建物(ロングハウス)の用途については、渡辺誠氏、小林達雄氏、小川望氏をはじめとして多くの人がさまざまな見解を寄せている。主要なものを以下に紹介する。
- 共同作業小屋的活用(渡辺誠氏)・・・縄文時代の食糧事情を考慮した場合、豪雪地帯において加工食品などをつくる冬期の共同作業小屋的空間、あるいは作業・貯蔵・居住兼用の家屋。
- 共同宴会場的活用(小川望氏・小林達雄氏)・・・共同宴会場的機能を含む公共的行事、儀礼、祭り執行の場、催事場、集会場、公会堂、ときには集落外からの訪問者の宿泊所的空間。
[編集] 参考文献
[編集] 一般書
[編集] 専門書
- 『縄文時代集落研究の現段階』(縄文時代文化研究会 編、2001)
- 『縄文時代の集落と環状列石 シンポジウムⅠ・資料集』(日本考古学協会1997年度秋田大会実行委員会 編、1997)