転位
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転位(てんい:ディスロケーション)は材料力学の用語で、結晶中に含まれる、線状の結晶欠陥のことである。外力などによって、転移近傍の原子が再配置されることによって転位の位置が移動し材料が変形するため、変形に要する力は原子間の結合力から理論的に計算される力よりも小さく金属の硬さ(変形のしにくさ)は転位の動きやすさが決めている。転位が動くことによって、金属などは外力に対して、破壊せずに変形する塑性変形を起こす。
転位には刃状転位(エッジ・ディスロケーション)と、らせん転位(スクリューディスロケーション)と、2つが混合した混合転位がある。刃状転位は転位のない結晶に余分面を無理やり押しこんだ形の結晶欠陥である。らせん転位は転位線に対して平行に結晶面がずれているものをいう。転位線の周りの原子の不一致の向きをバーガース・べクトルで表し、刃状転位は転位線とバーガース・ベクトルが垂直で、らせん転位は転位線とバーガース・ベクトルが平行である。
1930年代に材料の理論的せん断強度をエゴン・オロワン(Egon Orowan1902-1989)が 求めて、
ここでGは剛性率、τmはせん断強度である。
実際の金属の剛性率が約20GPaから150 GPaであるのにせん断強度は 0.5MPaから10 MPaにすぎない。オロワンらによって金属の転位の概念が導入された。
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