遺伝的連鎖
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遺伝的連鎖(いでんてきれんさ)または連関(れんかん)とは、特定の対立遺伝子の組合せ(ハプロタイプ)が親から子へ一緒に遺伝する遺伝学的現象をいう。
典型的な場合には各対立遺伝子は、他の遺伝子座位で対立遺伝子のどちらが遺伝するかには関係なく遺伝する(メンデルの独立の法則)。染色体は減数分裂の際にランダムに分配されるから、遺伝子が別の染色体上にある場合には独立の法則が成り立つ。しかし同じ染色体上にある2つの対立遺伝子は一緒に遺伝しやすく、このときそれらは連鎖しているという。連鎖の現象はメンデルの法則再発見の直後、ウィリアム・ベイトソンとレジナルド・パネットによって発見された。
例えば、メンデルの実験に於いて、彼が取り上げたエンドウの七組の対立形質では独立の法則が成り立つ。もし彼が、更に多くの対立形質を取り上げていれば、連鎖に遭遇したはずである。一方ショウジョウバエでは例えば眼の色と羽の長さを支配する遺伝子は連鎖しており、ともに遺伝しやすい。ただし、多くの場合、連鎖は完全なものではなく、決まった組み合わせ以外の形で、遺伝子が伝えられたと判断できる子孫が少数ながら生じることがある。この現象を組み替えと言う。
減数分裂で染色体が分離するときにはある程度遺伝子の乗り換えが起こるので、同じ染色体上にある対立遺伝子でも分離して別の娘細胞に行くことも多い。組み替えは、これによって行われると考えられる。
このことから、組み替えの起こる確率は、染色体上の距離にかかわると考えられる。大まかにいえば、2つの対立遺伝子が染色体上で離れていればいるほど乗り換えが起きる頻度が高くなる(厳密には乗り換えの起きやすい位置、起きにくい位置がある)。2つの遺伝子の間の物理的距離は、2つの連鎖した遺伝的形質をもつ生物の子孫で、2つの表現型がともには現れないものの割合から計算できる。この割合が高いほど、2つの対立遺伝子は染色体上で離れていると考えられる。このような解析は一般には実験的に行われるが、ヒトを対象にした場合にも親兄弟や親族の間で形質を比較することにより可能である。これを連鎖解析という。
多数の遺伝子の間の連鎖から遺伝子地図(連鎖地図ともいう)が作成される。
染色体の挙動との間に共通点があることから、遺伝子は染色体上に乗っていると想定されるようになってはいたが、これを証明することは難しい。その後モーガンによりショウジョウバエの連鎖と組み替えについて詳しく研究され、また遺伝子地図の概念が確立された。他方で彼はショウジョウバエの唾液腺染色体に見られる縞模様に注目し、特定の形質と縞の異常に相関関係があることを見いだし、それがその形質の遺伝子の位置であると仮定し、顕微鏡観察による染色体地図を作製した。このように異なる根拠からなる二つの地図が一致したことによって、染色体上に遺伝子があることが確定した。
一般の生物の集団で特定の対立遺伝子の組合せが多く見出される例があり、これを集団遺伝学で連鎖不平衡という。これは基本的には連鎖によるものだが、例外的に対立遺伝子が別の染色体上にあることもありうる。