郡修彦
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郡修彦(こおり はるひこ)は音楽史研究家およびSPレコード(78s)復刻技術者。
メンゲルベルクの有名なチャイコフスキーの「悲愴」の復刻LPが、長年1937年版と1941年版のミックスであることを世界で最初に発見・指摘し、「レコード芸術」誌に発表して話題となった。
また、山田耕筰の作品および演奏録音を集成したCD14枚組みの大作は、郡氏の復刻プロジェクトとして永遠に残る仕事といわれている。
[編集] 代表作
1.TELEFUNKENメンゲルベルク・チャイコフスキー作品集 WPCS-4327/30 (ワーナー)
1937年12月録音の「悲愴」を、初めて混じり気の無い純正な復刻録音として上梓した、画期的なセット。また、日本国内では極端に入手が難しいといわれる1941年の「悲愴」を最上の状態のSP盤から極上の音質で復刻し、ラジオ深夜便での放送を通じて大反響となった。
このほか、珍品中の珍品であるチェコ・UltraphoneのSP盤からピアノ協奏曲第1番を初めて復刻し、ドイツテレフンケン盤からの復刻と併録した。その結果、両者は同一演奏の録音ながら、異なるマイクで同時に収録されたものであることが世界で始めて判明した。これは、特に第2楽章に顕著である。
また、弦楽セレナーデを金属原盤からの復刻テープによるものと、SPから採録を併録するなど、非常に凝った内容で、マニアには伝説のセットとなっている。
ちなみに、ワーナーの当初の予想を大幅に超える売り上げから、この手のCDとしては珍しく再販を繰り返したことでも知られる名品である。
2.山田耕筰の遺産 COR-13171~13184 (日本コロンビア)
山田耕筰の作品の自作自演や山田耕筰による名曲の指揮、さらには山田耕筰本人による音楽指導のレコードなど、山田耕筰をしのぶにふさわしい内容を収めたSPレコードを一挙に復刻したもの。郡サウンドが隅々にまでいきわたっていて、潔い作品に仕上がっている。
3.親子で読んで楽しむ日本の童謡 (ベストセラーズ(書籍にCDが付録))
日本の有名な童謡を、作曲・発売当時のレコードから収録したCDのついた、文献的価値の高い本。解説も丁寧でわかりやすく、子供よりは親の世代が大いに引き込まれる内容に仕上がっている。
4.戦前日本の名行進曲集:海軍軍楽隊篇・陸軍軍楽隊篇・秘蔵名盤篇(キングレコード)
軍艦行進曲や敷島艦行進曲に始まり、およそ日本の有名な戦前の行進曲が良く網羅されている。素晴らしいのは、その詳しい経緯やデータが整理されて述べられていることで、こうした体系的な企画は文化的に価値が極めて高い。軍艦行進曲にヨゼフ・スナガ指揮独逸ポリドール軍楽隊やアロイス・メリハル指揮ベルリンフィルハーモニー管絃楽団による録音を、抜群の復刻で収録した例は他に例がなく、非常に興味深い。
[編集] 放送出演
- NHK「ラジオ深夜便」
- NHK FM 「私の名盤コレクション」(2006.12.19-22)
- 日本文化チャンネル桜(SkyPerfect TV 767ch)「探訪 SP盤の世界」