釜賀一夫
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釜賀一夫(かまがかずお、1917年(大正6年)- 2003年(平成15年))は、日本陸軍の暗号作成者、暗号解読者である。戦後も陸上自衛隊で暗号解読に従事した。ペンネーム"加藤正隆"にて暗号関係の著作を持つ。
- 戦争末期に大学の数学者達との関係強化に尽力し、「陸軍数学研究会(陸軍暗号学理研究会)」に発展させた。
- 特別計算法を考案した。
- 米陸軍の機械式暗号、M-209を解読した(当時はZ暗号と称していた)
- Hammingよりも早く符号理論における距離の概念を「字差理論」として暗号通信での誤り訂正に応用
- 武官用暗号を仮名文字からローマ字式に変更し、当時の金額で年間240万円の電報料金削減に成功。
- 外務省が用いる機械式暗号、九七式欧文印字機の弱点を指摘。
- 「陸軍暗号=パーフェクト」の自説を強固に語り継ぎ、海兵出身の岩島久夫と紙上で論戦を続けた。
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[編集] 経歴
- 1917年1月1日に熊本県宇土市で生まれる。
- 1937年12月に陸軍士官学校(50期)を卒業
- 1938年1月に佐世保重砲兵連隊付の陸軍砲兵少尉となる。
- 1938年9月に砲兵中尉、暗号教育にて優秀な成績を納める
- 1938年10月に留守第十二師団司令部付き暗号班長
- 1939年8月に参謀本部付
- 1939年9月に航空兵団司令付
- 1940年12月に佐世保重砲連隊付
- 1941年3月に大尉になる
- 1941年5月に中隊長
- 1941年7月に参謀本部付第十一課暗号班
- 1942年4月に参謀本部付のまま、陸軍科学校(砲工学校改称)の学生となる
- 1943年3月に同技術科卒業
- 1943年10月に東京帝国大学理学部物理学科に員外学生として入学
- 1944年3月に少佐になる
- 1944年7月に第七技研所員
- 1944年8月に参謀本部第十一課暗号班(自国暗号開発)および陸軍中央特殊情報部付(他国暗号解読)
- 1952年に警察予備隊に三等警視正として入隊。
- 1954年に陸上自衛隊の二等陸佐に昇進、調査別室の7科(資料解析、暗号解読)の長となる。
- 1970年8月に陸将補として退官。光電製作所、内閣調査室、外務省の顧問となる
- 2003年11月23日に86歳で死去
[編集] 著作
- 『字差概論』が太平洋戦争中に執筆されたが、戦時中であり論文としては公表されなかった。
- 1989年 9月25日、『基礎 暗号学I - 情報セキュリティのために』、Information&Computing ex.3、サイエンス社
- 1989年11月25日、『基礎 暗号学II - 情報セキュリティのために』、Information&Computing ex.4、サイエンス社
[編集] 記事
- 1968年11月、"暗号一般"、数理科学(別冊数理科学『暗号』、1982年5月15日、サイエンス社に収録)
- 1968年11月、"暗号と数学"、数理科学(別冊数理科学『暗号』、1982年5月15日、サイエンス社に収録)
- 1973年11月、"実験計画法と暗号"、数理科学(別冊数理科学『暗号』、1982年5月15日、サイエンス社に収録)
- 1974年10月、"暗号と心理"、年報社会心理学(日本社会心理学会編、1974年、通号15に収録)
- 1975年11月、"米国における日本機械暗号解読"、数理科学(別冊数理科学『暗号』、1982年5月15日、サイエンス社に収録)
- 1976年11月、"パズルと暗号"、別冊数理科学 パズルI
- 1977年 4月、"乱数と暗号"、数理科学(別冊数理科学『暗号』、1982年5月15日、サイエンス社に収録)
- 1984年 9月、"日本陸軍暗号は”安泰”だった"(歴史と人物-増刊:証言-太平洋戦争に収録)
- 1985年12月、"座談会 日本陸軍暗号はなぜ破られなかったか"(歴史と人物-太平洋戦争シリーズ:日本陸軍かく戦えりに収録)
- 1986年 8月、"近代暗号概説"、数理科学 (特集 新しい暗号、1986年8月1日、サイエンス社に収録)
- 1989年 8月、"大東亜戦争に於ける暗号戦と現代暗号"(昭和軍事秘話 中巻:同台クラブ講演集に収録)
- 他にも偕行社の機関紙「偕行」に寄稿している。
[編集] 参考文献
- 桧山良昭、『暗号を盗んだ男たち - 人物・日本陸軍暗号史』、光人社NF文庫、1994年1月17日、光人社、ISBN 4-7698-2035-6 (p.229-、p.245- 等)
- "我が国暗号研究の長老『釜賀一夫氏の証言』"、Cyber Security Management、Vol.2 NUmver22、pp.36-40、2001年8月
- 岩島久夫、"陸軍暗号安泰神話の崩壊"、歴史と人物増刊号、昭和58年8月
- 岩島久夫、"解読されていた日本暗号 陸軍暗号は安泰だったのか?"、別冊歴史読本:太平洋戦争情報戦、1998年
- "Were the Japanese Army Codes Secure?", Edward J. Drea, CRYPTOLOGIA Volume XIX Number 2 (April 1995)
- 木村洋、"戦中日本暗号解読史における数学者の貢献"、第15回数学史シンポジウム(2004)、津田塾大学 数学・計算機科学研究所報
- 福留節男、"暗号数理学者 釜賀一夫のこと"、第17回数学史シンポジウム(2006)、津田塾大学、10月14日講演予稿
- 辻井重男、"釜賀先生を偲んで"、光電技報 第20号、光電製作所、2004年
- 宮内寒彌、『新高山登レ一二〇八』、六興出版、1975年