陸上特殊無線技士
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陸上特殊無線技士(りくじょうとくしゅむせんぎし)は、無線従事者免許の1つ。総務省管轄。旧・特殊無線技士(多重無線設備)・(無線電話乙)・(国内無線電信)に相当。
第一級(旧・多重無線設備)・第二級(旧・無線電話乙)・第三級(新設)・国内電信級(旧・国内無線電信)に分かれ、第一級は多重無線設備を使用した固定局などの無線設備、第二級は陸上移動系の無線局、VSAT(衛星通信超小型地球局 ハブ局)などの無線設備、第三級はタクシー無線の基地局などの無線設備の操作ができる。警察官や消防官、海上保安官など、無線を扱う職場では例外なく必要になるのが二・三級免許。 いずれの免許とも、アマチュア局の操作はできない。これはアマチュア無線技士の工学試験がアマチュア業務用無線設備の内部回路取り扱いも想定した知識内容になっているのに対し、陸上特殊無線技士のそれでは内部回路取り扱いは全く想定されていないため(陸上業務無線の設備内部を扱えるのは陸上無線技術士である)。
試験の水準による学歴区分は、第1級陸上特殊無線技士が高等学校卒業程度、第2級陸上特殊無線技士と第3級陸上特殊無線技士が中卒程度に区分されている。合格率は第1級が20%~25%、2級以下は、70%~80%となっている。
国内電信級は陸上に開設する無線局(海岸局、海岸地球局、航空局及び航空地球局を除く。)の無線電信の国内通信のための通信操作と、それぞれ制限が定められている。国内電信級は、その名のとおり通信の内容が電信に、対象が日本国内に限定されるので、その需要は防衛省の一部など公的な部分に事実上限られるが、試験自体は職業等に関係なく受験できる。(総合無線通信士試験の前哨戦として国内電信級を受験する者もいる)
国家試験は年3回実施される(実施は日本無線協会)。科目合格の制度はなく、無線工学、法規ともに一度の試験で合格する必要がある。国内電信級を除き、日本無線協会による養成課程講習会を受講し、修了試験に合格することでも取得できる(第一級に限り高等学校卒業など受講資格の制限がある)。
陸上無線技術士と名前が似ているためにしばしば混同されるが、操作範囲は陸上無線技術士の方が上位に位置付けられている。
目次 |
[編集] 試験科目
- 第一級
- 無線工学
- 多重無線設備(空中線系を除く)の理論、構造及び機能の概要
- 空中線系等の理論、構造及び機能の概要
- 多重無線設備及び空中線系等のための測定機器の理論、構造及び機能の概要
- 多重無線設備及び空中線系並びに多重無線設備及び空中線系等のための測定機器の保守及び運用の概要
- 法規
- 電波法及びこれに基づく命令の概要
- 第二級
- 無線工学
- 無線設備の取扱方法(空中線系及び無線機器の機能の概念を含む)
- 法規
- 電波法及びこれに基づく命令の簡略な概要
- 第三級
- 無線工学
- 無線設備の取扱方法(空中線系及び無線機器の機能の概念を含む)
- 法規
- 電波法及びこれに基づく命令の簡略な概要
- 国内電信級
- 法規
- 電波法及びこれに基づく命令の簡略な概要
- 電気通信術
- モールス電信 1分間75字の速度の和文による約3分間の手送り送信及び音響受信
[編集] 受験料
第一級5,350円、第二級及び第三級5,150円、国内電信級4,550円
[編集] 備考
陸上特殊無線技士と同様に4段階の等級がある海上特殊無線技士は、各等級間の難易度・範囲等の較差は一般通念からみて妥当な程度とされるが、陸上特殊無線技士の場合は第一級と第二級との間の試験難易度の較差が著しい(つまり第一級が格段に難しい)とされ、この試験に挑戦する者・無線を趣味とする者の一部には第一級陸上特殊無線技士のことを、分類が上の陸上無線技術士(既存の級は第一級と第二級)の下位に匹敵すると評価して俗に「第三級陸上無線技術士」と呼ぶ向きもある。市販されている受験参考書なども、同じ第一級の特殊無線技士でありながら、海上よりも陸上のほうが内容・ページ数が多くなっている。
[編集] その他
電車及び緊急車等に搭載している無線機は、第3級陸上特殊無線技士の取得者であれば操作できる。基地局は第1級陸上特殊無線技士の免許が必要となる(運用責任者並びに免許人)。移動局相互の通信に当たって責任者の承認を要する「通信宰領方式」を採っている無線局では、被統制局の使用者は無資格でもよい。