類別詞
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類別詞(るいべつし、Classifier)とは、名詞の種類(具体的な対象の種類や形状など)に応じてそれを表すために用いられる語または接辞である。代表的なのが、日本語などにみられる助数詞(名詞の数量を表すために数詞のあとに付く語)であるが、それ以外に形容詞のあとに付いたり、また単独で(名詞に対する冠詞のように)現れる言語もあるので、これらを総称して類別詞と呼んでいる。世界的には東アジアのほか、東南アジア(インドのベンガル語なども含む)から太平洋諸島、またアメリカ先住民の言語に多く見られる。
日本語や中国語などの助数詞(あるいは類別詞、量詞)については、助数詞を参照。
世界の言語には、名詞が複数の種類に分類される名詞クラスというシステムをもつものが多い。このうちで最もよく知られるものが、ヨーロッパ諸言語の「性」である。類別詞と名詞クラスによる分類は似ているが、次のように大きな違いもある。
- 類別詞はふつう20以上、場合によっては数百種類を含む。名詞クラスは名詞を2から20ほどの類に分けるものである。
- 類別詞は名詞句の中の名詞とは別の部分、あるいは文中のそれと独立した部分につく独立の語彙素である。名詞クラスは基本的には名詞そのものを分類するものであり、一般には名詞内に表示され、あるいはその代わりに名詞を修飾する形容詞等、またはそれを主語とする動詞が曲用すること(名詞との一致)で示されることもある。
- 類別詞をもつ言語では、多くは文法的な数(単数、複数など)がない。名詞クラスをもつ言語には、数の標示が義務的なものが多い。
- 類別詞は名詞が表現するものごとの種類や形状に基づいて分類されるが、名詞クラスはそうとは限らず、むしろ純粋に文法的な決まりである(例えばドイツ語のWeib[妻]は女性でなく中性名詞である)。
- 類別詞は元来具体的な単語に由来するが、名詞クラスを表す標識には具体的意味はない。
- 類別詞は、全ての名詞が特定の類別詞をとる必要はないし、1つの名詞が複数の類別詞をとりうることも多い。しかし名詞クラスでは普通このようなことはなく、厳密に決まっている。
- 類別詞は特定の統語構造でのみ現れ、また実際の用法は状況によって変えることができる。しかし名詞クラスは一般の文で用いられ、用法は厳密に定まっている。
とはいえ、歴史的には類別詞の使用が発展して名詞クラスに近くなることもあり、厳密に区別できない場合もある。
特殊なものとして、アメリカの南部アサバスカ諸語(ナバホ語など)では、一部の動詞が主語または目的語の種類に応じて変化し(類別動詞)、これを表す接辞も類別詞と同じくClassifierと呼ばれる。