香港終審法院
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終審法院(しゅうしんほういん、英:Court of Final Appeal)は、香港特別行政区の司法機構における最高の上訴裁判所である。高等法院からの上告・上訴を管轄し、最終的な審判を下す。1997年に香港が中国へ返還されたのと同時に、設立された。返還前も香港には最高裁判所が存在したが、宗主国イギリスの枢密院司法委員会に上訴することができた。この役割を担う機関として、返還後に設置されたのが終審法院であった。また、終審法院の設置により、返還前に香港に存在した「最高法院」は、返還後に高等法院となった。
[編集] 法解釈
終審法院には、法解釈権が与えられている。ただし、香港特別行政区の法律に限定され、全国性法律に対する解釈権はない。香港基本法を含めた全国性法律の解釈権は全人代常務委員会にある。実際には、全人代常務委員会の下にある香港マカオ基本法委員会が解釈について議論を行う。
1999年の香港居住権問題では、香港住民を片親に持ち、中国本土で生まれた子供が香港居住権を持つか否かが争点となった。終審法院は、香港法に対する解釈としてこれを認めた。しかし、全人代常務委員会は、香港基本法の規定に関わる事柄であり、この問題について香港の終審法院には解釈権がないとの判断を示した。その上で、香港住民が片親でも中国本土で生まれた子供には、香港居住権を認めなかった。つまり、香港の終審法院による解釈権が否定されるという事態が発生したのである。そのため、全人代常務委員会の解釈権は、香港における司法の独立を損なうものとの見方もある。(香港基本法#香港基本法に対する解釈権とその行使事例の項目も参照)
[編集] 終審法院の法官
終審法院の長は主席法官(Chief Justice)である。終審法院主席法官は、香港司法機構の長でもある。行政長官が指名し、立法会の承認を経て、全人代常務委員会によって任命される。終審法院主席法官は、他国に永住権を持たない中国公民でなければならない。
返還後は、李国能が一貫して主席法官を努めている。彼は、李国章教育統壽局長(前香港中文大学医学院教授)や李国宝東亜銀行会長、李福兆・元香港聯合交易所会長の一族の出身である。