高エネルギー物理学
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高エネルギー物理学は、加速器で作られる高エネルギーを持った基本粒子の衝突反応を詳しく調べ、究極の物質構造や基本的相互作用の解明、時空の構造等を研究する研究分野である。
また、素粒子物理学と原子核物理学の分野をまとめて言い表したり、実験もしくは理論科学として、素粒子物理学と原子核物理学が不可分なときに使われるような用語である。
日本では、高エネルギー加速器研究機構における世界最高強度の電子・陽電子衝突装置KEK-Bを使ったBELLE実験、つくば市から飛騨市へニュートリノを飛ばしてニュートリノ振動を検証するK2K実験など、世界的に注目される最先端の研究を行っている。
[編集] 歴史
「何を持って、高いエネルギーとするのか?」これについては、様々な見方が存在すると思う。通常の生活では考えられもしないような物理現象を取り扱うのが、高エネルギー物理学である。
原子核物理学は、化学から始まった。マリー・キューリーらによる、ポロニウムの発見やラジウムの発見。そして、それらの原子が発する放射線の研究から、高エネルギー物理学への道が開かれたといっても過言ではない。つまり、この項の定義である「高エネルギー物理学」とは、可視光線以上の周波数を持つ(もしくは、短い波長を持つ)放射線の研究から始まったものと定義できる。その後、様々な実験装置の開発によって、紫外線からエックス線、ガンマー線が発見され、それらが原子及び原子核内の物理反応に由来することが判明した。
素粒子物理学は、古代ギリシアの自然哲学者デモクリトスの原子仮説から始まった。様々な試行錯誤の末、物質が原子から成り立っていることが分かったのは、イギリスのドルトンらの業績による。
20世紀に入り、実験装置(加速器、泡箱、写真乾板の発明)の進歩によって、それらが宇宙から来るものも分かり、それが全ての物質の根源であるというところまで来た。さらに、研究が進み、原子自身も電子、陽子、中性子からなることが実験的に証明された。更に、陽子や中性子を結びつけるものとして、中間子が発見され、物質の根源を探す研究者達の探求の周辺はにぎやかになってきた。宇宙由来の放射線の研究や加速器が次々に建設され、対称性を持つ粒子や今の宇宙には存在しない粒子が見つかることになり、これらを分類することによって、素粒子物理学の第一期が訪れた。この時期に活躍したのが、日本人では湯川秀樹や朝永振一郎、南部陽一郎である。
第二期は、素粒子物理学の分類から始まり、その素粒子群が増えてきたことによって、これらの粒子にも根源となる粒子があるはずという仮説から、マレー・ゲルマンらによるクォーク仮説が提唱された。なお、同様の仮説は、名古屋大学の故坂田昌一によって提唱されているが、言語の壁等もあり、世界的に広まらなかった。しかし、実験分野では世界的に大型の加速器が建設され、日本でも大型の実験施設であるトリスタン計画がスタートし、遅ればせながら実験分野での貢献が始まった。
[編集] 外部リンク
- 高エネルギー加速器研究機構
- K2K つくば-神岡間 長基線ニュートリノ振動実験
- 高エネルギー物理学・大学紹介 - 高エネルギー物理学の研究を行っている大学一覧
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