高女
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
高女(たかおんな、たかじょ)は、日本に伝わる妖怪。
目次 |
[編集] 特徴
和歌山県や秋田県に現れたと伝えられている。普段は人間の美女のようだが、下半身だけを伸ばして常時の3倍ほどの身長となることができ、遊女屋などの2階を覗いて男女を脅したり、時には人の命を奪うとされる。
容姿の醜い女性や嫉妬深い女性が、この妖怪に変化すると言われている。
[編集] 伝承
その昔、和歌山の商人の男が女房をめとり、子供ができた。しかしその子供は、5歳になると突如、消息を絶ってしまった。そればかりか、店にいた30人ほどの使用人も次々に死に、元の半分以下の人数となってしまった。
そんな折、女房の世話をした問屋が店を訪れ、変わったことがないかどうか訊いた。男は「別にない」と答えると、問屋は「気をつけろ」だけ言い残して帰って行った。
そこへ女房が激しい剣幕でやって来て、あの問屋が何を訊いたのかと問い詰めた。男が「変わったことがないかどうか訊いた」とだけ言うと、女房は恐ろしい形相の顔となった。恐怖した男は仮病を使い、布団の中へと逃げ込んだ。男が布団の中で一心不乱に念仏を唱えていると、何者かの声がした。「女房の様子をよく観察し、隙を見て逃げろ」とのことだった。
男が寝たふりをしつつ、陰から女房の様子を覗いていると、女房の姿は七尺(約2.1m)もの鬼女となり、服を脱ぎ捨てて井戸の中へ飛び込んだ。そして轟音と共に井戸から飛び出した女房は、打って変わって美女の姿となっていたが、それは上半身のみで、下半身は深い井戸の中に浸ったままだった。男は驚き、たちまち山へと逃げ去って行った。
この女房こそ、男の子供や使用人たちの命を奪った高女だったのだ。
[編集] 考察
本来は鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に描かれていたものだが、その絵では説明文が添えられていないため、「高女」の名や伝承は、その絵を後年に見た者が想像したことに過ぎないとする説もある。
また、特徴で述べているような醜い女性や嫉妬深い女性が、男性や周囲の人々に虐げられて悲惨な人生を歩んだことから必死に幸福を得ようとした、即ち「背伸びした女性」の様子がこのような妖怪の伝承に繋がったとも言われている。
[編集] 関連項目
[編集] 出典元
- 水木しげる 『図説 日本妖怪大全』 講談社、1994年、276頁。
- 村上健司 『妖怪事典』 毎日新聞社、2000年、208頁。
- 水木しげる 『妖鬼化 3 近畿編』 Softgarage、2004年、79頁。