ペンタックスの銀塩一眼レフカメラ製品一覧:35mm判 (KマウントAF機種)
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ペンタックスの銀塩一眼レフカメラ製品一覧:35mm判 (KマウントAF機種)とは、ペンタックス(旧:旭光学工業)が発売したオートフォーカス式Kマウント規格一眼レフカメラのシリーズ製品一覧記事である。
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[編集] Kマウント:AF機シリーズ
[編集] ペンタックス SFシリーズ
ペンタックスSFシリーズとは、旭光学工業初のAFシリーズである。ちなみにその名称は"Super Focus"より由来する。
旭光学工業もMEFの後もAF化の開発研究を続けてはいたものの、1984年末にミノルタによって世界初のAFシステムカメラである『ミノルタα-7000』が完成すると、一眼レフカメラメーカーすべてがその遅れを挽回する側に回ることとなったのである。これは業界全体を揺るがす大きな出来事であったために、後に「αショック」と言われるようになった。
その「αショック」による急激なAF化のニーズに応えるべく『ペンタックスSF X』は短期間で会社の総力を結集して開発された。初代のAF機である『ペンタックスME F』のアピール不足による反省から、今度はシリーズまるごとAF化への刷新を行い、全機種のワインダー内蔵化による巻上げ巻き戻し作業の全自動化、交換式ファインダースクリーン、交換式データバック、外部ケーブルレリーズの新規格化などの対応アクセサリーも専用のものへと一新され、また高度に電子化されたAEカメラの操作に特化したボディデザインの採用など、新世代のカメラであることを全面的にアピールする商品展開を行った。
同じ物では競争にならないといった判断から、付加価値として世界初の格納型(リトラクタブル)TTLダイレクト測光方式のストロボをボディ内に搭載し、先行他社製品との差別化を図った。また暗所での合焦性能を向上させるため、非球面レンズを使用したAF補助光装置も搭載され、内蔵TTLストロボの利便性の向上が図られた。
AF機構に関しては、従来の精度は高いものの実用面で問題があった「コントラスト検出方式」AFマウントであるKfマウントではなく、新たに「位相差検出方式」AFマウントとして新規開発されたKAfマウント(注1)を実装し、ようやくAF合焦精度と速度のバランスが実用レベルに達した。その新機能に対応したSMCペンタックス-Fレンズ群(注2)も同時に用意され、その新レンズ群のデザイン、機構も従来のMFレンズ群より一新された。
ボディデザインは、従来のシリーズとはがらりと変わって大型化され、電子化されたAEカメラに最適化された筐体デザインとなった。主な特徴は、液晶パネルがペンタ部に移り、各情報の視認性の向上が図られたこと。また、内蔵ストロボ用大型コンデンサの搭載位置の関係から、グリップ部が大型化され、ホットシューが軍艦部右肩に移ったことなどが挙げられる。グリップ感の良さや、使い勝手が良かったことなどから、この基本デザインは次のZシリーズにも継承される。
その企業努力の甲斐もあってかSFシリーズは成功を収め、また世界初のズームレンズ内蔵コンパクトカメラの『ペンタックスズーム70』の成功と相まって、旭光学工業の窮地を救うこととなった。国内においてこのSFシリーズは、全モデルにデータバック(クォーツデート機能)のある製品と、ない製品の2種類がラインナップされた。
※注1:KAfマウントの詳細記事はKマウントの系譜の節を参照のこと。
※注2:SMCペンタックス-Fレンズ群の詳細記事はKマウント用交換レンズ:35mm判カメラ用の節のSMCペンタックス-Fシリーズの項目を参照のこと。
- SF X / クォーツデート - 1987年3月発売。『ペンタックスSF X』とは、ミノルタの『α-7000』より遅れること2年、満を持して登場したシリーズ第1号機である。地味なスペックではあるがカメラとしての基本は抑えており、当時のAFカメラを望む多くの一般層に受け入れられた。売りであった世界初のTTL内蔵ストロボだけではなく、軍艦部、液晶表示部を撮影者側に傾斜させたことによる操作性、視認性の向上を考慮した筐体デザインなどから、α-7000を相当意識し、それ以上の製品を作ろうとした開発スタッフの努力が垣間見える。またフル・プラスチック外装ながらも、堅牢性も高く、まず最初にデザインされたという、グリップ部のホールディング性も良い。プロダクトデザイナーの工夫がうかがえる実用的な機種であったが、当時では実用性を重視しすぎた感のある奇抜なデザインや、発売時期がわずかに『キヤノンEOS650』に遅れを取ったことなどから、その販売実績や、実力に対してやや地味な印象を持たれているものの、後の多くの他社一眼レフカメラ製品に内蔵TTLストロボが採用されていることから、そのアイデアは正しかったといえる。
- SF 7 / クォーツデート - 1988年9月発売。『ペンタックスSF 7』とは、SFシリーズの廉価機として登場した。初代機SFXとの差別化のためか、配色や表面処理は、同時期に発売されたSFXnに合わせられ、グレーの胴体部が「平面処理」から「梨地処理」に変更されている他、マウント左脇のフォーカスモードセレクターの文字色が赤に変更された。SFXから、マルチプログラム、視度調整機能が省略されたが、ペンタックス初の多分割測光機能である2分割測光(SPD素子)の採用や電池ボックスが底板の開閉フタ式に変更されるなど廉価機といえどもスペック、実用面においては従来の上位機種であるSFXとも遜色がなく一面では上回る機種であった。注目すべき点は、形状、スペックにおいてSFX/Xnと酷似するが、内部構造が大きく異なり、パーツの一体成形化、組立工程の簡略化などの各所に大幅なコストダウンが図られていることである。後のZシリーズ廉価機のベース機になったが、やや大型なのはペンタプリズム(銀蒸着)を採用しているためである。なおこの機種よりフォーカシングスクリーンが、より明るい「アスフェリックマイクロマットスクリーン」が採用される。
- SF X n / クォーツデート - 1988年11月発売。『ペンタックスSF X n』とは、AF機における激しい技術競争の中でわずか2年足らずで性能的に古くなってしまったSFXの後継機種である。シャッター速度がペンタックス・カメラ初の最高1/4000秒を実現し、ストロボ同調速度は1/125秒にまで引き上げられた。そればかりではなく、連射性能の向上や、オートブラケット機能の追加、低ミラーショックのためのミラーアップ機構の設計の見直しなどの大幅な改良とグレードアップが図られており、「n」、つまり”New”の名に止めておくには惜しい機種であった。従来のSFXに対して実力的にはワンランク以上の実質上の上位機種となったが、外装部品、デザイン、と目に見える部分がほとんど同一であるために、これもまた地味な印象の機種となってしまった。その酷似するSFXとの外装面での主な違いとして、先行発売されたSF7のカラーリングや「梨地処理」を踏襲しつつ、軍艦部の色がブラックからメタリック・ブラックとなったこと。他にグリップ部の”SFX”のプリントロゴがグリップ部のバッテリー蓋側(外側)から、本体側(内側)に変更された点などが挙げられる。
[編集] ペンタックス Zシリーズ
ペンタックスZシリーズとは、SFシリーズの筐体デザインを踏襲しながら即応の思想という新たなコンセプトのもとに開発されたAF機第2世代のシリーズである。大手各メーカーともにプロトタイプとなった第1世代のAFカメラの開発に成功し次世代の開発競争に突入しており、Zシリーズもそのような背景の中で生まれた。筐体デザインは前シリーズを踏襲するものの、旧MF機の色合いを残していたSFシリーズよりも更に高いレベルでの電子化が果たされ、その一例としてフィルム巻き戻し操作におけるスプロケット開放機構が電子制御化されていることなどが挙げられる。また新コンセプトに合わせて操作体系もより洗練され数々の新機軸が惜しみなく注ぎ込まれた。そのひとつであるハイパーマニュアル露出(以降、HyM露出と記述)はシリーズ全機種に採用され、これによって露出制御の操作性が大幅に向上された。さらに新規のKAf2マウントが採用され、これもまた全機種がパワーズーム機能を始めとした各種ズーム補助機能すべてに対応(Z-70pはパワーズームのみ)している。他にも全機種に多分割測光機能が実装され、測光機能も強化された。これによってプログラム撮影機能も新たに盛り込まれたハイパープログラム露出(以降、HyP露出と記述)と組み合わせることによって大幅に自由度の高いものとなった。このことからも、旭光学工業が総力を挙げて開発した、きわめて贅沢な仕様の高性能機揃いのシリーズだったといえる。また、Zシリーズにあわせて、SMC PENTAX-FAレンズ群も発売された。SFシリーズから続く大柄なボディのために大口径レンズとの相性も良く、新マウントのパワーズーム系機能も対応ズームレンズにおいては大いに威力を発揮した。そのため、同じくこのシリーズにあわせて発売された高級レンズである、FA★レンズ群との相性も良好である。しかし、実際に手にとって使ってみないと伝わりにくい独自の操作性を上手くアピールすることができず、皮肉にも「ハイパー・・・」などの独自の用語がむしろ一般層には分かりにくい印象を与えてしまったようで、個性的なデザインも相まってか期待されたセールスには結びつかなかったようである。なお、このシリーズより”PENTAX”のロゴデザインが現行製品のものに変更されている。国内発売製品ではすべての機種が標準でデータバック(クォーツデート機能)仕様となっている。アメリカではPZシリーズとして販売された。
- Z-10 クォーツデート - 1991年6月発売。ペンタックスZ-10とは、Zシリーズの第1号機である。廉価機ながらもZシリーズの方向性を示す「HyM露出」、「6分割測光」、「スポット測光機能」を実装。さらに、廉価機ながらも新たに採用されたKAf2マウントの全機能に対応している。先代のSFシリーズとの差別化のため、グリップ部のセレクトレバーのマーキングデザインが「露出値変更機能」であることを明確化させるためにSFシリーズの「▲/▼」から、「+/-」に変更されている。特に注目すべき点はベース機であるSF7よりも高性能化されながらも約150gの大幅な軽量化を実現していることである。
- Z-1 クォーツデート - 1991年12月発売。ペンタックスZ-1とは、Z-10より遅れること約3ヶ月、ようやく発売された「即応の思想」を体現した最高級機。スペックも先代の最上級機種であるSFXnから大幅にパワーアップされた。それにともなってシャッタースピードは最高1/8000秒まで引き上げられ、そのためより耐久性の高いシャッターユニットが搭載された。また連射性能の強化、プレビュー機能、8分割測光機能などが実装され、スペック面だけではなく、撮影時の利便性の向上も図られた。もっとも、この機種の一番の“売り”は、ボディのグリップ側前後に配置された、2ダイヤル式(廉価機は1ダイヤル式)によるHyM露出、HyP露出制御である。電子ダイヤルであるためにロック機構も不要、右手のみで「絞り値」と「シャッター速度」を自在に操作できるため、HyM露出、HyP露出との相性が抜群に良く、その機能を中核としていた同シリーズの中でも特に露出制御のしやすい機種であった。その様々な新機軸が評価され、「第9回(1992年)カメラグランプリ」を受賞している。
- Z-20 クォーツデート - 1992年11月発売。Z-10をより高性能化した、Zシリーズ中級機。(書きかけ項目です)
- Z-20P クォーツデート - 1993年6月発売。(書きかけ項目です)
- Z-50P クォーツデート - 1993年6月発売。Z-20/pより、学習機能などを省き、機能を整理した廉価機である。(書きかけ項目です)
- Z-5 クォーツデート - 1994年3月発売。基本性能・外観はZ-1とほとんど同じだが、カスタムファンクション機能の一部が削除され、その分若干安価になっている。Z-5(P)はZシリーズで唯一クロームボディが存在する(Z-1リミテッドは除く)。
- Z-1P クォーツデート - 1994年6月発売。Z-1の後継機。連射性能が秒間4コマへ向上。また、パノラマの撮影も可能となった。外観はZ-1とほとんど同じだが、UVコートが施されたほか、ファインダー内表示項目(露出インジケーター)の追加、Z-1では極めて複雑だった巻き戻し動作の簡略化、グリップ部のラバーの改質(Z-1リミテッドと同じものに改良)、内蔵ストロボの制御方式変更等細かく改良されている。Z-1Pからナチュラルブライトマットが採用されており、従来のクリアブライトマットから更にピントの山が掴みやすくなっている。本来で有ればもっと注目されるべき機種であったが同年にEOS-1Nが発売となり、その陰に隠れてしまった感がある。
- Z-5P クォーツデート - 1994年8月発売。Z-1PベースのZ-5の後継機。短い期間しか販売されなかった。
- Z-70P クォーツデート - 1995年4月発売。愛称は”Zメイト”。シリーズ全機種にハイパー露出制御やパワーズームなどの練られた操作体系を実装し、上級撮影者向けの色合いが強かったZシリーズであったが、それがむしろ複雑な印象を与えたのか販売台数はかんばしくなかったようだ。この愛称を設けたのも、親しみやすさを考慮したためだと思われる。そのような背景の中でシリーズ最終機として、あまりに遅すぎた初の入門機である本機が登場した。まず、ボディの軽量化が図られ、470gと500g以下のボディとなった。それに伴って大口径レンズ向けのパワーズーム機能も一部を残して大幅に整理された。測光範囲も2分割測光と大幅に簡素化され、このシリーズの生命線でもある、スポット測光機能も廃止された。操作性の向上のため、SFシリーズから続いた「スイッチ兼モードセレクトレバー」がダイヤル式に変更されたが、この唯一の改良点がZシリーズに欠けていたものであった。このスリム化された入門機の必要性を感じたペンタックスは、次のMZシリーズ廉価機にて「入門機のあり方」を模索することとなる。
[編集] ペンタックス MZシリーズ
MZシリーズとは、従来のSF、Zシリーズより一転して新たなコンセプトで始まった小型軽量AF機シリーズである。機能の拡張よりも、「スリムでコンパクト」、「分かりやすさ」、「趣味性」に重点が置かれ、かつてのMシリーズ系統のAF機版といった趣きである。それに伴い、従来の実用性重視の発想から生まれたデザインであった大型筐体から、“スタンダードなデザインの小型筐体”に変更された。操作体系も大幅に変更され、ハイパー露出は継承されず、ダイヤル式操作をメインとする、見た目で分りやすい操作体系への回帰が図られた。これは操作性は良かったが一般に受け入れられなかったZシリーズが商業的に成功しなかったことの反省と考えられる。シリーズ上級機は、趣味性を重視したマニュアルMF機と同様のアナログ風のダイヤル操作方式を採用。一方普及機は、ダイヤル操作式であることは同様であるがオート撮影に特化した操作体系となった。スリム化路線の徹底によって必ずしもKAf2マウントではなくなり、またMF機もラインナップされるなど、マウントも機能も、機種の位置付けによって異なるバラエティに富んだシリーズ展開となった。このシリーズより、AF機シリーズ初のクローム(銀)とブラック仕様のカラーバリエーションが展開される(一部機種を除く)。このシリーズにあわせて、高性能だけでなく趣味性を加味した、新たな小型軽量化された高級ブランドレンズであるFAリミテッドレンズ群が登場した。アメリカではZXシリーズとして販売された。
- MZ-5 クォーツデート - 1995年11月発売。ペンタックスMZ-5とは、MZシリーズ第1号機である。時代に逆行するかのような、まるでMF機であるかのような筐体デザインは、「MZシリーズ上級機の方向性」を示す役割を果たすのには十分過ぎるほどであった。電子式AF機ながらも、絞り操作はレンズ側で行い、シャッタースピードはMFカメラと同様のアナログ式デザインのダイヤルで設定。このため旧来のMFカメラに慣れた者であれば簡単に扱うことが出来、熾烈な開発競争によって操作や機能が複雑化していた当時のAFカメラに一石を投じる機種となった。MZ-5はその後継機であるMZ-3の登場と共に姿を消した。
- MZ-10 クォーツデート - 1996年6月発売。ペンタックスMZ-10とは、MZシリーズ初の普及機である。ペンタミラー化などのコストダウンが図られている他、後のペンタックスの一眼レフでおなじみとなる「オートピクチャーモード」を初めて搭載した。MZ廉価機の方向性はこの機種によって明確となる。この時期には一部Zシリーズも併売されていたため、普及機では唯一KAf2マウントが採用されている。
- MZ-50 クォーツデート - 1997年5月発売。ペンタックスMZ-50とは、MZ-10の廉価機である。更なるスリム化が図られ、KAfマウントへの変更(パワーズームの使用不可)、オートピクチャーモードが省略された。さらに、35mm判ペンタックスカメラ初の絞り輪にA位置のないレンズ(K、Mレンズ)が使用不可能な機種となったが、当シリーズの方向性を明確に示しているといえる。
- MZ-3 クォーツデート - 1997年7月発売。ペンタックスMZ-3とは、MZ-5の後継機である。外観は酷似するも、各所に実用面・操作性に重点をおいた機能向上が施され、メモリーロック機能(AEロック)、プレビュー機能搭載、各ダイヤルの高さの変更、グリップ部の形状変更など、MZ-5で不評だった箇所がほぼ改善された。最高シャッター速度が1/4000秒になるなどスペック面も向上され、その結果非常にバランスの良い機種となり、当シリーズでももっとも人気の高い機種となった。その操作性から写真の学習にも適していると判断され、ニコンのFM2と並び写真学校の推薦機種にもなった。しかし、MZシリーズの方向性ゆえに質感などが犠牲となっていたため、高品質化された「幻の後継機」を待ち望む声も未だに聞かれる(金属製MZ-3やさらなる高級機)。
- MZ-7 クォーツデート - 1999年8月発売。ペンタックスMZ-7とは、名前の通りシリーズ中級機に相当する機種である。MZ-10をベースにワンランク高性能化された機種で、ペンタックス初のストロボのオートポップアップ機能や、リモコンによるワイヤレスの遠隔撮影機能が追加された。また「オートピクチャーモード」も復活し、ダイヤル内にランプが埋め込まれ、その点灯位置によってどのモードが選択されたのかが分かる新機構が組み込まれた(通称:”光っておまかせプログラム”)。他にも上級機にあった多重露出機能、視度調整機能の追加。調光機能、測光機能も強化され、絞り輪にA位置のないレンズの使用の可能など、スペック面では過去の上級機であるMZ-5とほぼ遜色のない機種となった。後にブラックモデルも発売された。
- MZ-30 クォーツデート - 2000年2月発売。ペンタックスMZ-30とは、MZ-7をベースにした新たな廉価機種である。光るモードダイヤル、オートポップアップ機能、強化された調光機能などを受け継いだ。廉価機らしくオートピクチャーモードは省略され、Aレンズ群以降のレンズしか使えないシンプルな仕様である。
- MZ-5N クォーツデート - 2001年3月発売(国内)。ペンタックスMZ-5Nとは、シャッターユニットはMZ-5、ボディはMZ-3という海外輸出専用機種であった。もともと海外では安価なモデルの需要が多く、MZ-3のような高速シャッターを搭載する必要性がないため、安価な1/2000秒の(MZ-3は1/4000)シャッターユニットを搭載したのがMZ-5Nである。つまり国内ではMZ-5がなくなり後継機MZ-3が発売されたが、海外ではMZ-5の後継機種はMZ-5Nであった。安価な「海外版MZ-3」とも言える。海外輸出専用であったのもが何故か国内でも発売されたが、発売当時既に上位機MZ-3の販売価格が下がっていたため差額がほとんど無く、国内販売数は他機種と比べれば僅かである。
- MZ-S クォーツデート - 2001年5月発売。ペンタックスMZ-Sとは、シリーズ最上級機である。MZ-3で指摘されたいくつかの問題点の解決が試みられたが、デザインの変更によって操作フィーリングが微妙に異なってしまったために、期待された評価は得られなかったようである。開発コンセプトとして、スペック面の向上よりも、”質感や、より使いやすい操作性と信頼性”に重点を置かれた。最高シャッター速度は”シャッターユニットが安定して正確な幕速を出せる数値”が採用され、またミラーショックを小さくするために、ミラーアップ機構も“モーターによって制御”され、さらにセルフタイマーを利用したミラーアップ機能の追加など、速射性よりも「正確なワンショット」を重視して設計された。AF機能は、ペンタックス初の6点測距、測距点選択機能が実装され、調光機能は、この機種より新規に設けられたP-TTLシステムに対応し、それぞれ強化された。また、データバックに撮影データの印字機能が標準実装され、ペンタックス645シリーズでも採用されたパーフォレーション間印字機構が取り入れられている(レリーズコード用コネクタも、シリーズで唯一645NIIの新規格が採用されている)。操作面では、MZ-3のアナログ操作体系を継承しつつ、Zシリーズの「即応の思想」が取り入れられ、シャッターダイヤル・ロックが廃止され、新たな操作体系である「ハイパーオペレーティングシステム」が採用された。また、ダイヤルの操作性と液晶画面の視認性の向上のため、軍艦部が撮影者に向けて大きく傾斜され、それによって、独特のいかり肩の筐体デザインとなった。オプションの縦位置レリーズ付きの専用バッテリーグリップ『BG-10』のホールディング性も良好で、グリップ形状、レリーズ位置に工夫がみられる他、MZ-7のリモコン機能にも対応された。カスタマイズ項目も豊富で、きわめて実用性の高いモデルであった。当時、MZ-Sの筐体を利用したフィリップス製フルサイズ撮像素子搭載のデジタルカメラの登場(試作機:K-1)がアナウンスされていたが、コスト面を理由に開発を断念している。これはMZ-Sが設計段階からデジタル機に合わせて設計されていたことを示すもので、MZ-Sが実用性はともかくスペック的には中途半端に終わってしまったことの原因であろう。
- MZ-L クォーツデート - 2001年11月発売。ペンタックスMZ-Lとは、MZ-7の後継機種である。機能はすべて継承された上でワンランク以上のスペックアップが図られた。最高シャッター速度が1/4000秒に引き上げられただけではなく、P-TTLを始めとした2001年以降の数々の新規格の各機能に対応すべく仕様変更され、『ケーブルスイッチ(レリーズコード)』のコネクタも現行機の*istで採用されているものが初採用された。他に「電子プレビュー機能」、「オートブラケット機能」、「ペンタックスファンクション(カスタムファンクション)」が追加され、総合的にはMZ-3以上にまで高性能化された。MZ-7より受け継がれたリモコン機能にはAF機能が追加され、より実用的になり、まさにMZ普及機の完成型といえる。
- MZ-60 クォーツデート - 2002年11月発売。現行機である。ペンタックスMZ-60とは、MZシリーズの最終モデルである。MZ普及機シリーズの最新機種であるが、MZ-Lとは異なり徹底的な機能のスリム化が図られた。外部レリーズコード用ソケット、露出補正機能までが廃止され(ISO感度設定変更は可能である)、さらにAF機能付きレンズ専用機になってしまった。同様に構造も簡素化され、従来の撮影モード設定ダイヤルを無くし、ボタン+セレクトダイヤル方式に変更。更に裏ブタのデート設定機構をボディ本体側に移し、ボディの構造を単純化させるなどの工夫がなされた。しかし替わりにオートブラケット機能(1/2、1段)や、セルフタイマー機能を利用したミラーアップ機能、バルブタイマー機能(最長32分)などが実装されており、単体でも最低限使えるカメラに仕上がっている。最終期MZシリーズ(MZ-S、MZ-L、MZ-60)で生まれた新規格、スペック・機能、操作性、デザインは、来たるべき新世代の、*ist、*istDシリーズの雛型となった。
[編集] AF機の問題点
ペンタックスの銀塩一眼レフAFカメララインナップの後期(MZシリーズが展開された時期)においては、ミノルタα9シリーズ・ニコンFシリーズ・キヤノンEOS-1シリーズなどに対応するようなフラッグシップ機が存在していない。また☆(スター)レンズに代表される大口径レンズとデザイン的にバランスのとれるカメラボディも存在しない。当該時期においては、MZ-Sを除いたMZシリーズはすべてベースが同じで、高級機が存在せず入門機ばかりが増えてしまうという状況が商品ラインナップに発生していた。ペンタックスファンの間ではニコンF5やキヤノンEOS-1Nに対抗できるカメラを望む声が多かったが、MZ-Sがラインナップ上位の機材として発売されたものの、MZ-Sはデジタル機開発上の副産物的性質の製品であったため、メカニカルスペックとしてはフラッグシップ機として物足りないものとなっており、ファンは大いに落胆した。一部ユーザーの間では「(ニコンからのOEM供給による)KマウントのF5を」という意見まで出たと言われる。 結局2006年現在、フラッグシップ機と呼ぶにふさわしいスペックを持つ銀塩一眼レフAFカメラボディはZ-1P QD以降ペンタックスより発売されてはおらず、また新規に発売される予定も無い。
これがメーカーとユーザーの意思疎通ができていなかったことに由来するものか、あるいは単純に技術不足によるものかは定かではない。ファインダー関係ではLXで高視野・高倍率を達成しており、シャッター関係ではZ-1で1/8000秒シャッターの搭載などある程度の基礎技術は既に持っていたと思われるが、他社のAFシステムの性能・機能向上に付いていけなかったという見方がある。事実、同時期に発売された他社のMZシリーズ競合機種においてもAF性能では水をあけられている。本格的な多点測距AFはMZ-Sまで待たねばならなかった。MZ-5発売からMZ-S発売までの5年以上の間、AFシステムにはほとんど変化が見られなかったことになる。
[編集] ペンタックス *ist
*istとは、後期MZシリーズの方向性と、MZ廉価機の操作性・機構を踏襲し、より洗練させた新ブランドである。数々の新機軸が採用され、デジタル時代を意識された「新世代のカメラ」である。35mm判銀塩機の*istは1機種のみで終焉を迎えるが、*istに搭載されたAF測距機構、新測光システム、背面インジケータパネル表示、小型軽量化路線などは*istDシリーズにそのまま継承され、新たにデジタル一眼レフのシリーズを展開していくためのコアコンポーネントとなった。逆に言えば最初から「完成された」カメラであり、入門機という位置づけでありながら高級機並みの性能、操作性を持っている唯一のカメラと言っても過言ではない。シャッタースピード限界などのメカニカルスペックは高級機並みであっても、操作系統が入門用と割り切った簡易すぎるそれであるためその実力を発揮できないカメラは同業他社製品をふくめて数多いが、そんな中、操作性に優れた入門機を発売したペンタックスの姿勢は評価すべきことであるといえよう。
- *ist - 2003年4月発売。現行品である。ペンタックス*istとは、35mm判AF機において、世界最小・最軽量ボディを標榜した、ペンタックスの小型軽量化路線の集大成ともいえるカメラである。小型化のために、フィルム装填方式をコンパクトカメラのようにグリップ側に装填する左右逆転の方式を採用した。スペック面でも抜かりはなくペンタミラー方式ファインダーを採用しながらも、シャッター速度は最高1/4000秒を実現。他にオートブラケット機能、電子プレビュー機能なども実装しており、こだわった作品作りをするのにも十分である。更にAF測距点が従来のMZ主流機の3点から11点選択式に、多分割測光機能も従来の6分割から一挙に16分割にまで増加され、まったく新しいカメラとなった。また、選択されている測距点はスーパーインポーズ機能でファインダー上に直接表示されるようになり、背面データバック部には小型化の代償として新たに液晶パネルが移動し、選択用カーソルキーが設置され、現行のデジタル一眼レフ機の操作系に近いものとなった。なお、MZ廉価機の機構を踏襲しているため、絞りの制御は「ボディ側」で電子的連動によって行われるため、絞り環にAポジションの無いレンズは使用に制限がある(カスタムファンクション設定によって絞り優先オート、あるいは露出計非作動のフルマニュアル撮影での使用に限定される)。また、この機種よりクォーツデート機能が一般化されたため、”クォーツデート”の呼称が無くなった。TIPA主催のカメラ賞である、「TIPA ヨーロピアン・フォト&イメージング・アワーズ 2003-2004」の”最優秀35mm一眼レフカメラ”に選出された。
[編集] Kマウント:MF機シリーズ
詳細記事:ペンタックスの銀塩一眼レフカメラ製品一覧:35mm判 (KマウントMF機種)
[編集] 関連項目
- ペンタックス(旧・旭光学工業)
- ペンタックスのカメラ製品一覧
- ペンタックスの銀塩一眼レフカメラ製品一覧:中判・110フィルム用
- ペンタックスの銀塩コンパクト・APSカメラ製品一覧
- ペンタックスのデジタルカメラ製品一覧
- ペンタックスの写真レンズ製品一覧
- 一眼レフカメラ
- レンズマウント
- 写真レンズ
- 写真フィルム
- デジタルカメラ
[編集] 参考図書
- 豊田堅二 『入門・金属カメラオールガイド』 カメラGET!-スーパームック第11巻、CAPA編集部、学習研究社、2003年7月20日、ISBN 4-05-603101-0
- 中村文夫 『使うペンタックス』 クラシックカメラ-MiniBook第10巻、高沢賢治・當麻妙(良心堂)編、双葉社、2001年5月1日、ISBN 4-575-29229-X
- 那和秀峻 『名機を訪ねて-戦後国産カメラ秘話』 日本カメラ社、2003年11月25日、ISBN 4-8179-0011-3
- 『アサヒカメラニューフェース診断室-ペンタックスの軌跡』 アサヒカメラ編集部、朝日新聞社、2000年12月1日、ISBN 4-02-272140-5
- 『往年のペンタックスカメラ図鑑』 マニュアルカメラ編集部、枻文庫、2004年2月20日、ISBN 4-7779-0019-3
- 『ペンタックスのすべて』 エイムック456-マニュアルカメラシリーズ10、枻出版社、2002年1月30日、ISBN 4-87099-580-8