OTHレーダー
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OTHレーダー(Over The Horizon Radar)とは、水平線寄以遠を観測するレーダーシステムである。超水平線レーダーとも呼ばれる。
一般に、航空機などを観測するレーダーの多くはマイクロ波と呼ばれる高い周波数の電波を利用し、反射波の時間から計測物との距離を算出している。しかしマイクロ波は可視光線に近い性質を示し、直進性が高い。そのため、構造物や山の裏側、さらには遠距離のため水平線・地平線下にある対象物を観測できない。
OTHレーダーは、短波帯の電波を利用している。電波を上方に向けて発射すると、高空の電離層の反射により、再び電波は地上方向に戻ってくる。その地上に電波が戻ってくる地点は、送信機から見て水平線以遠の遠距離の地点であり、その地域の航空機などを観測することができる。ただし、その精度は非常に低く、航空機の存在を確認できる程度である。また、近距離目標の観測はできないという短所がある。
OTHは周波数により異なる電離層の反射地点の状態がロケットの飛行による電離層の乱れを探知する事を目的とするのではないかとも見られた。
受信機と送信機が近い場所にあるOTH-Bと、受信機と送信機が何千キロも離れた場所にあるタイプがある。
このレーダーシステムは、固定式の大型設備である。冷戦期の1960年代中頃に北海道千歳市に米軍によると見られる地上高15メートル位の所にロンビック型大型空中線を10数個組み合わせた大施設(30本位の鉄塔)が作られ空中線の指向性はドイツ又はイギリス方面を向いており周波数は3MHzから20MHz位の7-8波の内3-5波を時間帯により選定して送信していた。電波の波形はA3復調に依れば固定した100Hz位の強力なパルス又は三角波を0.01Hz位の正弦波で振幅変調を行った時のヴァーという音がゆっくりしたフェージングに出会ったような音をしていた。この施設は10数年使われた。1980年代に日本の自衛隊も、喜界島などに導入を検討したことがある。
強力なパルス状の電波を無差別的に発信するため、多くの放送局や業務無線、アマチュア無線、短波放送などが迷惑を被った。このパルス状のノイズは、キツツキが木をくちばしで叩く音の様である(“パタパタ”“カカカ…”と聞こえる)ため、ウッドペッカー・ノイズと呼ばれる。
なお、中心周波数でパルスにあわせ打電(電信信号を出す)すると、エラーを嫌って一時送信が中止する(あるいはレーダー周波数が移動する)という噂がある。
2005年頃より、東アジアからと思われる同様の信号が確認されており、新型OTHレーダーではないかと云う噂がある。特徴としては旧来のOTHレーダーがパルス状の信号発信であったのに対して、この新型は周波数掃引を使っている点であり、掃引中心周波数/掃引周波数幅/掃引間隔を適宜変更し一定の対抗手段から回避可能としている様である。
この新型は主に1.8MHz近辺の中短波帯で発信されており、掃引間隔が短いため「ヴァー」という連続音として聴取される。また、1.8MHz帯の高調波関係である3.6MHz、7.2MHz近辺の周波数に対してもスプリアスと思われる信号により、広範囲にわたって通信障害を発生させている。高調波関係に当たる周波数で受信した場合、掃引帯域が広がるため、例えば7MHz帯での聴取音は、「ビー」という連続音となる。
この方式の場合、掃引間隔に同期または近い掃引信号に弱い可能性がある。