P-800 (ミサイル)
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P-800「オーニクス」Оникс(縞瑪瑙)は、ロシアで開発された超音速対艦ミサイルである。輸出型は「ヤーホント」Яхонт(宝石)と呼ばれており、一般には、こちらの名称の方が知られている。地上発射型は「バスチオン」Бастион(城塞)と呼ばれている。
アメリカ国防総省は、このミサイルに対し、SS-N-26(艦発射型)/SSC-5(地上発射型)のコード番号を与えたが、それは、ロシアがこのミサイルの存在と名称を公表した後の事だった。
[編集] 概要
オーニクスは、従来、長距離ミサイルと、中・短距離ミサイルの二本立てで開発が進められてきたロシア(ソ連)海軍の対艦ミサイルを統合する新世代対艦ミサイルである。設計は、旧ソ連の長距離対艦ミサイルを手掛けてきたNPOマシノストローイェニェ(旧チェロメイ設計局)が担当し、1985年から開発が始まった。
マシノストローイェニェがソ連邦時代に設計した長距離大型対艦ミサイル「グラニート」SS-N-19)を小型化したような外見で、エンジンは、グラニートと同様に固体ロケット・ラムジェット統合推進システム(Integrated Rocket Ramjet、IRR)を採用している。このIRRは、まず、固体ロケットで超音速まで加速し、その後、ラムジェットに切り替えるもので、固体ロケットの推進剤を燃焼させた後の空間が、ラムジェットエンジンとして使われる。旧ソ連海軍では1980年代初頭から使われている推進システムであり、オーニクスは、旧ソ連の対艦ミサイルの正当な後継者という位置付けになる。
ミサイルは、全長8.9m、直径70cmの発射コンテナに収められ、コンテナ込みの重量は3,900kgとなる。
オーニクスは、1990年代に、水中発射型はプロジェクト670M(チャーリーII型)原子力潜水艦K-452「ベールクト」、水上発射型はプロジェクト1234(ナヌチュカIII型)ミサイル艇「ナカト」を改造して搭載され、各種テストが行われた。テストは1998年頃には一通り終え、同年に正式採用されたが、このミサイルを搭載する予定の新型艦艇の建造が遅れに遅れている為、ロシア海軍では、未だに実戦配備には就いていない。
航空機からの運用も可能であり、戦闘機Su-27の各種発展型や、爆撃機Tu-22Mなどが、このミサイルを搭載できる。
オーニクスは、対艦攻撃が主任務であるが、この他に地上攻撃も可能とされている。
[編集] 発射プラットフォーム
オーニクスは、専用の垂直発射機もしくは、連装発射筒から発射されるが、この他に、ロシア原潜の650mm魚雷発射管からも撃ち出せる、と記述しているものも見受けられる。
しかし、本当にオーニクスが650mm発射管に対応しているのであれば、1990年代に水中発射型のテストを行うに当たり、わざわざ670M型ミサイル原潜K-452を改造する必要など無く、当時、多数が在籍していた650mm発射管装備の原潜(949A型、971型、945型、671RTM型)でテストが行えたはずである。
また、建造中の新型原潜セヴェロドヴィンスク級にしても、専用の3連装垂直発射機を搭載する必要は無く、650mm発射管を装備すれば事足りたはずであり、これらの事実から見ても、オーニクスは650mm魚雷発射管から撃てない事は明白である。
[編集] 諸元
- 全長:8.9m(コンテナ含む)
- 直径:0.7m(コンテナ含む)
- 翼幅:1.4m(展開時)
- 発射重量:3,900kg(コンテナ含む)、3,000kg(ミサイル本体)
- 射程:300km(低空巡航のみで120km)
- 速度:マッハ2.5
- 飛翔高度:高空巡航時14,000m、低空巡航時5~15m
- 推進装置:固体ロケット・ラムジェット統合推進システム
- 弾頭:250kg通常HE
- 誘導装置:慣性(高空巡航時)、アクティブ・レーダー・シーカー(終末時)
- 発射装置:コンテナ
- 搭載艦船:セヴェロドヴィンスク級原子力潜水艦、22350型フリゲート、キーロフ級ミサイル巡洋艦