THE 推理
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『THE推理』(ザ・すいり)は、D3パブリッシャーより2001年4月26日に発売されたSIMPLE1500シリーズ第59作目のゲームソフト。開発はトムキャットシステムが担当。以後シリーズ化され、2006年4月現在までに合計4作が発売されている。
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[編集] 概要
主人公の探偵となり、各話の謎を解いていくアドベンチャーゲーム。1作目は全18話、2と3作目は全20話、4作目は10話で構成されており(話数は再録分は除外)、各話はそれぞれ独立している。プレイ時間は1話につき5分~15分。システムは画面上をクリックしてヒントを集め、推理していくオーソドックスなもの。2作目以降はキャラクターに音声が付くようになった。
メッセージスキップがないなどシステムの不親切さが不評ながら、テンポの良いキャラの掛け合い、サクッと楽しめる所などが好評を得ている。また、世界観を共用したゲーム(『THE裁判』、『THE鑑識官』)も発売されている。
[編集] 歴史
- SIMPLE1500シリーズ Vol.59 THE推理 ~IT探偵:18の事件簿~
- 2001年4月26日発売。プレイステーション用ソフト
- SIMPLE2000シリーズ Vol.17 THE推理 ~新たなる20の事件簿~
- 2002年12月26日発売。プレイステーション2用ソフト
- SIMPLE2000シリーズ Vol.67 THE推理 ~そして誰もいなくなった~
- 2004年11月11日発売 。プレイステーション2用ソフト
- 第1作の再録と新作20話。再録分は音声はなし。
- SIMPLE2500シリーズ Vol.3 THEどこでも推理 ~IT探偵:全68の事件簿~
- 2006年4月27日発売 。プレイステーション・ポータブル用ソフト
- これまでの全話に新作10話を追加。全話に音声が付加されている。メッセージスキップ機能付。
[編集] ストーリー
5年後か10年後か、少しだけ未来の日本では、擬似人格インターフェイス(以下擬人)という、一種の会話専用人工知能が社会に広まりつつあったが、それと同時に、引きこもり・人間雇用の減少・人間になりすます詐欺などの社会問題も生んでいた。
主人公は擬人スタッフと共に、近所の揉め事の仲裁から殺人事件の捜査まで、インターネット社会の様々な事件に挑んでいく。
[編集] 主な登場人物
- ボス(声:なし)
- このゲームの主人公。本名不明。叔父の探偵事務所を引き継ぎ、事務所から外に出ることなくインターネットで送られてくる情報を頼りに事件を解決していく人情派安楽椅子探偵。趣味は競馬と将棋、古典推理小説鑑賞など。彼と賢作は「THE 裁判」にゲスト出演している。
- ジニー(声:平松晶子)
- 擬人秘書。しっかり者だが、ややきつい性格。実は法律で禁止されているブレインコピー(人間の脳を複写した擬人)で、ブレインコピー特有の難病を抱えている。ふてくされると簡素な顔文字になる。
- 賢作(声:川上とも子)
- ネットペット(猫)型検索ソフト。ジニーと同じく擬人。元野良(ウィルス)で、勝手に事務所に住み着いているが高い検索機能や画像解析機能を持ち、事件解決には欠かせない有能な人材でもある。気まぐれで負けず嫌いな性格をしており、元がウィルスなのでやや倫理観に欠ける。語尾に~にゃとつくのが特徴。
- お嬢(声:松岡由貴)
- 2以降に登場するキャラクター。中田中外務大臣の娘。名前不明。裏表がなく、親しみやすい性格をしているが、大雑把な中学二年生。ある事件を機に探偵事務所の面々と知り合ったことから事務所に遊びに来るようになる。
- 江波警視(声:2=斎賀みつき、3=大田詩織)
- 時々、やっかいな事件を依頼してくる主人公の知人。ドライで冷徹だが、有能な女性。主人公の弱みに付け込んで無理やり仕事を引き受けさせようとすることも……。ゲーム途中で警視正に昇格した。ちなみに「THE 鑑識官」の主人公江波識子は、彼女の姪(彼女自身もメインキャラの一人として出演している)。
[編集] 原点回帰の傑作
主人公である探偵の基本的な捜査パターンは、事務所内のパソコンから得られる情報のみで推理を進め解決に至るもので、事務所から飛び出して事件現場に行ったり、関係者に直接会って聞き込みをしたりする事はほとんどない。過去に発売された本格的な推理系アドベンチャーゲームのように、多くの場所に移動し、多くの人々に会って捜査するようなスケールの大きい事件はこのゲームでは存在しない。しかし、それ故にこのゲームは多くのプレイヤーに高く評価されている。
過去に発売された多くの推理系アドベンチャーゲームの傾向を見ると、ハードであるゲーム機が高性能化するにつれ、必然的にシナリオのスケールアップを求められた。結果として、無理に膨らませたシナリオを成立させる為、『あの場所に行ってアノ人に話を聞いたら、次はこの場所に行ってアレを発見し、さらにその場所に移動したら、アノ人にこの証拠品を見せて云々…』と言ったイベントばかりを繰り返す、所謂『お使いゲーム』が増えてしまったと言われる。
『お使いゲーム』自体は、ある意味アドベンチャー系やRPG系ゲームの基本パターンの一つでもあるので、否定することはできないし、シナリオの完成度さえ高いものであるならば、むしろプレイヤーを楽しませる要素の一つですらある。だが、現実にはゲームをプレイしていると言うよりも、『やらされている』という印象を受けるゲームが多いのも事実である。 そもそもがテキストを中心とした構成になっている推理系アドベンチャー系ゲームでは、画像や演出を強化するかシナリオを長くする以外には、ハードの高性能化の恩恵を受けにくい面がある。 だが、無意味なシナリオや演出を増やしても、それは単なる『贅肉』にすぎず、ゲームの面白さには何の貢献もしないばかりか、質の低下を招くことになりかねない。
この『THE推理』シリーズは、極限まで『贅肉』を削ぎ落としつつも、推理系アドベンチャーゲームの基本となる部分はしっかりと造り込まれており、長編ゲームにいささか食傷気味だったプレイヤーに、新鮮で何処か懐かしい印象を与え、結果として多くの支持を獲得するに至った。正に原点回帰とも言える本作の成功は、このジャンルのゲームの新しい境地(可能性)をプレイヤーやゲームメーカーに示している。