おとり捜査
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おとり捜査(おとりそうさ)とは、捜査機関又は捜査機関に協力する第三者が対象者に犯罪の実行を働きかけ、犯罪の実行を待って対象者を逮捕する捜査手法をいう。
本来犯罪を阻止すべき国家が自ら犯罪を作り出し、また、自ら作り出した犯罪を訴追することとなるため、その適法性には争いがある。
アメリカ合衆国における「わなの理論」を参考に、おとり捜査を犯意誘発型と機会提供型とに二分し後者のみを適法とする考え方が団藤重光によって示されて以来、これが実務・学説の主流となっている。犯意誘発型とは、犯罪意思のない者に対して働きかけにより犯意を生じさせる場合をいう。機会提供型とは、既に犯意を有しているものに対して犯行の機会を与える働きかけをいう。 かいつまんで言えば「犯罪しうる人間を予防的に摘発する」と「摘発・逮捕する機会を得るために罠を仕掛ける」ということである。
しかし、おとり捜査そのものを適正手続きの観点から違法とする考え方も根強い。さらに、二分して考える説に対しては、この分類自体に意味はなく他の一般の捜査手法同様にその適否は任意処分と強制処分の区別により判断され、ただおとり捜査はその性質から任意処分とされた場合の相当性が厳格に判断されるに過ぎないとの見解も示されている。
おとり捜査の適法性に関する最高裁判所の判例は長らく存在しなかったが、2004年(平成16年)7月12日に第一小法廷が、機会提供型であって通常の捜査方法による摘発が困難な場合には適法とする初の判断を下した。