がん保険
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がん保険(がんほけん)とは、対象疾病をがんに絞り、公的医療保険の自己負担分、および、その他の雑費を含めた損失を補償することを目的とした任意保険のこと。第三分野保険の1つ。
日本では1974年11月にアメリカンファミリー生命保険会社(アフラック)が発売したのが最初とされ、日本の生命保険会社も参入していったが、給付金を受けるにはがんと診断されることが必要であるため、がん告知の浸透速度と連関して、ゆるやかな契約数の伸びを見せていた。ただし、がんの5年生存率が低かった時代には、診断されてから死亡するまでの期間が短かったため、手術・抗癌剤・放射線治療などの費用を合計してもそれほど多くの費用がかからず、また、被用者保険では時期により自己負担率が0割~1割と低かったため、がん保険の必要性は高くはなかった。
がん検診・健康診断・人間ドックなどの予防医学の普及で早期診断・早期治療が進み、また、がん治療の進歩によって5年生存率が高くなってくると、がんと診断されてから死亡するまでの期間が長くなってきた。そのため、医療費が高騰し始め、医療保険の保険者である国などは保険料と自己負担率を引き上げてしまい、がん治療は個人の経済的な負担が増加する傾向が強まった。医者の側ではインフォームドコンセントが浸透してがん告知が加速し、患者の側では、クオリティ・オブ・ライフの追求によって、告知から死亡までの期間の生活を充実させるための経済的な裏付けの必要性が出てきた。
このような背景の中、2001年1月から規制緩和が始まり、2001年7月から全ての保険会社ががん保険を扱えるようになったことで、テレビを用いたCM戦略や価格競争が始まり、がん保険は一気に一般化した。
近年、退職金や年金の低下や不景気などから、貯蓄率の低下傾向が見られるようになり、病気になった際に預貯金を切り崩して対応する人よりも、保険に入って急な支出に耐える人が多くなるものと考えられ、がん保険の重要性も高くなっていくものと考えられる。