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生命保険

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

生命保険(せいめいほけん)とは、人間生命や傷病にかかわる損失を保障することを目的とする保険で、契約により所定の条件のもと、死亡した場合などにおいて保険金を受取人に支払うことを約束するもの。生保(せいほ)と略される。

日本では生命保険会社が行っている。なお、生命保険会社以外にほぼ同様の商品として、日本郵政公社簡易保険があり、農協生協などの共済では、「生命共済」の名称で取り扱われている。

損害保険の扱う傷害保険に似るが、損害保険の要件とされる「急激・外来」の条件に拘束されない点で異なる(但し、特約として傷害保険を含む場合もある)。

病気にかかる危険度や死亡率は(新生児を除けば)一般に年齢とともに高まるから、外来の事故のみを保障する傷害保険と異なる。統計に基づいて年齢ごとに死亡する確率に応じた保険料を設定することで保険会社が受け取る保険料と、支払われる保険金が均衡する仕組みになっている。生命保険の保険料は、保険期間内の死亡する確率に応じた保険料を均した金額となるのが一般的である。

生命保険会社では、他にも貯蓄や老後の保障といった幅広いニーズに対応するため、「財形貯蓄積立保険」や「個人年金保険」などの商品を取り扱っているが、これらも広い意味で生命保険と言える。

目次

[編集] 商法上の定義

生命保険契約は、当事者の一方(保険者)が相手方(保険契約者)または第三者の生死に関して一定の金額を支払うべきことを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって効力を生ずる契約である(商法第673条)。

[編集] 歴史

[編集] 生命保険の始まり

17世紀、イギリスの牧師たちが葬式代をまかなうために、お互いにいくらかずつ出し合って積み立てていったのが、生命保険の始まりだといわれる(香典前払保険・香典前払組合)。ただし、これは年齢に関係なく同じ金額を払い込んでいたため、高齢者は比較的少ない保険料で保険金を受取ることになり、若い者の不興を買い、10年ほどでなくなったとされる。

[編集] 近代的生命保険の成立

この問題を解決するきっかけを作ったのが、「ハレー彗星」で有名な天文学者エドモンド・ハリーである。 彼は実際に調査して人間の寿命を統計化した生命表を作成した。それは年齢ごとに生存している人死亡した人の割合をまとめた統計データである。

ここで重要なのは、こうした統計ができたことで、「誰がいつ亡くなるかは全くわからないが、年齢ごとの亡くなる人数(死亡率)はおおむねはっきりする」ということである。

これは「大数の法則」と呼ばれるもので、この法則でよく知られる例としてはサイコロを数多く振ると回数が増えるにつれてそれぞれの6つの目の出た回数は六分の一に限りなく近づいていく、というものがある。つまり、生命表での場合、少ない人数だと誰がいつなくなるかは全く分からないが大勢集まると限りなく生命表の死亡率に近づくので、「そのうち何人が何歳のときになくなるかおおよそわかる」ということになる。つまり、各年齢ごとに保険料を払う者の人数と亡くなる(保険金を受け取る)者の人数が推定できる。

こうして、この統計による死亡する確率に応じて保険料に差をつけることが考えられ、18世紀、イギリスで死亡率に基づいた保険料を集める制度ができ、これが今の生命保険のルーツとなっている。

ただし、この生命表に基づく計算は、戦争地震等の大規模災害による大量死にまで対応できるものではない。このため、現在の生命保険の多くは、戦争・災害に関する免責事項を設けている。

現在の近代生命保険の発祥は、1762年にイギリス・ロンドンに設立されたThe Equitable Life Assurance Society(※英国・エクイタブル生命)en:Equitable Lifeである。

死亡率に応じて保険料を徴収すると年々保険料が上がっていくことになる(これを自然保険料という)が、同社は、その保険料を契約期間に応じてならす、「平準保険料」方式を採用した。この仕組みは契約期間の前半に将来の保険料を前払いし(この前払いした保険料がいわゆる責任準備金となる)、契約期間の後半に積み立てられた金額を保険料として取り崩すことになる。これが現在の生命保険の保険料計算の主流となっている。

本来、相互扶助の仕組みであった生命保険だが、平準保険料の採用により、前払いされた保険料が生命保険会社の多額の運用資産となった。そしていわゆる機関投資家として金融市場に大きな影響力を持つ礎となった。

[編集] 簡易保険の成立

当初は生命保険は資産家や牧師など特殊な人々のものであった。ところが、産業革命により、都市生活者や給与所得者が急増すると一家の収入の稼ぎ手が亡くなった場合の生活保障や、葬儀費用などが問題となった。19世紀半ばのことである。

そこでロンドンの労働者達が、生命保険会社・プルーデンシャル ローン&保険組合(現イギリス・プルーデンシャル)en:Prudential plcに少額な保険料で葬儀費用を賄える保険を作って欲しいと申し入れ、プルーデンシャルはこれを受け入れて少額・保険料建・週払の労働者向け保険を開発した。このことで、生命保険は一挙に庶民のものとなった。一時期、英国の全世帯の1/3がプルーデンシャルと契約していたとも言われている。当時の労働者にとってこうした問題がいかに深刻であったかを物語る事例といえよう。

また、こうした問題は現在の先進国各国で問題となっており、カナダでは国策として生命保険会社を整備した。国会の議決により労働者向けの生命保険を扱う保険会社を設立している。これが現在のマニュライフ生命保険である。

[編集] 日本における生命保険の始まり

日本では1868年に福沢諭吉がこの制度を紹介しており、明治14年7月、日本で最初の保険会社・有限明治生命保険会社が開業された。だが、当初は「人の生死によって金儲けをするのか」という誤解に基づく批判も多く、その普及には時間がかかった。

戦前までの生命保険会社の特徴としては、法人の形態が現在のような保険業法に定める相互会社ではなく、株式会社が主流であった。また、普通の生命保険会社とは別に、徴兵保険と呼ばれる保険を扱う徴兵保険会社があった。現存する保険会社の中でも、現 富国生命(富国徴兵保険)、旧 東邦生命(第一徴兵保険、AIGエジソン生命に継承)、旧 第百生命(第百徴兵保険、マニュライフ生命に継承)、現 やまと生命(日本徴兵保険)などがそうである。徴兵保険とは、養老保険の一種で子供が小さいうちに加入しておくと、その子供が徴兵などのときに保険金が給付されるというものであったようだ。現代で言えば学資保険のような商品といえる。こうしたことからも戦前までは養老保険などの貯蓄性の高い商品がその主流であり、遺族補償の重要性は現代ほどウエイトが薄かったといえる。

[編集] 第二次大戦後の日本の生命保険

戦後、こうした生命保険会社の多くは株式会社から相互会社に衣替えし、再出発した。現在のような女性営業職員による募集が始まったのはこのころからである。また、核家族化の進展を背景にして、主流の商品は貯蓄性の高い養老保険から保障の大きな定期付養老保険、さらには定期付終身保険へとシフトしていった。

[編集] 近年の日本の生命保険

近年の主な動きとして、ガン保険などの第三分野を足がかりとして、外資系保険が参入。これを契機に、日本の保険会社も統廃合が進む。また一方でいわゆるバブル景気による金利の上昇と不動産の価格高騰は、「超長期固定金利」の商品を扱う生命保険会社にも多大な影響を与えた。一つにはバブル崩壊後、高い予定利率の保有契約を多数抱えてしまったこと、もう一つには、資産運用手段として不動産への投資、あるいは不動産関連の融資を行ったことで、保有資産・貸出資産が不良化してしまったことである。この結果、資産運用による収益力が落ち込むとともに、運用は延びずに予定利率との差額が発生する「逆ザヤ」により経営基盤が不安定になっていった。当時、経営が不安定な保険会社で渋谷付近に本社をおく会社が多かったことから、「シブヤ系」という言葉も生まれた。そして、そのうち東邦生命、千代田生命が経営破たんし、他にも第百生命などが経営破たんした。

一方、バブル期には、株式投資が活発化したことから変額保険が注目された。本来、変額保険はインフレなどにより長い期間の間に保険金が著しく目減りする定額保険の欠点を補うものとして開発された商品だが、相続対策などの名目で生命保険会社各社は銀行と組んで営業活動を行った。 その仕組みは、その加入契約の毎年の保険料は契約者本人が負担せず、銀行からの融資で賄う。しかし、責任準備金は株式市場で「複利運用」しているため、満期にその保険料相当分の融資と満期返戻金を相殺しても、十分に利鞘が出る、というプランであった。生命保険の保険金の評価は、現金よりも低くなり、なおかつ保険料分が債務として相続財産から控除されるため、相続対策としては「有効」と顧客に説明されていた。 しかし、株式市場の著しい下落は満期返戻金と融資金の逆ざやをもたらし、多くの資産家達に損害を与えることとなった。また、当時の保険会社・銀行のリスク説明が不十分だった点や、募集行為上の問題(銀行が積極的に募集に関わったなど)があったことなどにより、一部の保険会社は多くの訴訟を抱えることとなった。

現在の変額保険は運用方法について、ファンド(投資信託)を顧客が選択することにより分散する、死亡保険金の保険金額は保証されるなどの規制を行うことにより、大きくリスクは減少してる。しかし、死亡保険金額を保証することとしたために、海外の類似の商品にくらべ、保険会社が破綻した場合の信用リスクがやや高くなってしまった。(本来、ファンド(投資信託)は運用会社の預かり資産であるため、運用会社や保険会社が破綻してもほとんど影響は無い。)

また、バブルと前後する時期に、金融の自由化の一環として銀行・保険・証券や損害保険と生命保険など業界の「垣根(ファイヤーウォール)」を取り払い、相互に参入を自由化しようという政策が進展した。保険業界も、生保は損保子会社を作ることにより損保業界への参入が認められ、損保は生保子会社を作って生保業界に参入することが認められた。 他業種の保険業界参入が進む。 明治生命がアカウント型保険を開発。 太陽生命、大同生命が手を組んで、T&Dグループ形成。 株式会社化が流行の兆し。銀行の窓口販売スタート。 平成16年1月明治安田生命発足。財閥の枠を超えた経営統合であり、発表時には生保業界のみならず、経済界全体に大きな衝撃が走った。

この節は執筆の途中です この節は、書きかけです。加筆、訂正して下さる協力者を求めています。

[編集] 生命保険のしくみ

[編集] 生命表

現在の生命保険では、人間の生死にかかわる統計データ、すなわち生命表が用いられるのが常である。すなわち、生命表による加入者の生死の予測に基づいて、適切な保険料が設定される。

ただし、死亡統計は過去から現在までのデータのみが使用されるのに対し、実際の生死は将来発生することであるから、当然予測に誤差が発生し得る。そのようなときに保険料収入が不足する事態になってはいけないので、保険料計算に用いる死亡率にはあらかじめ安全が見込まれている。このときの死亡率を予定死亡率と呼び、保険料計算の重要なパラメータのひとつである。

[編集] 平準保険料と責任準備金

保険料率の計算は、自然保険料方式と平準保険料方式の2種類がある。

「自然保険料方式」とは、加入者の年齢ごとにその死亡率に応じた保険料を徴収する方式で、保険期間中、毎年保険料が増加する。
「平準保険料方式」とは「自然保険料方式」の保険料上昇のデメリットを補うために、あらかじめ保険期間に応じて保険料を前払いするもので、保険期間中の保険料の変動がない。

ところで、平準保険料方式を採用すると、本来は高齢になってから支払うべきであった保険料をあらかじめ若いときに支払うことになるので、結果として生命保険会社は将来の保険料を事前に徴収して留保していることになる。この資金のことを責任準備金と呼ぶ。責任準備金は平準保険料方式の契約者についてそれぞれ存在するので、総合すると大きな資金となり、生命保険会社はこれを元に投融資を行い、利益を上げることができる。これは生命保険会社の金融機関としての顔である。

また、責任準備金を元手に運用益をあげられるために、実際の保険料はこの運用益を見込んで割引かれている。この割引分を算出するためにあらかじめ運用利率を予定しておく。この利率を予定利率とよび、これも保険料計算の重要なパラメータである。ちなみに自然保険料方式の場合、その年に払い込まれた保険料は、すべて保険金として出て行くことが前提になっているので予定利率という概念がない。予定利率は前払い保険料が発生する平準保険料方式のみの概念である。

[編集] 解約返戻金

平準保険料方式をとると、本来はまだ必要ではない保険料を事前に徴収していることになるので、保険期間中に何らかの理由で保険契約を解約することになると、その保険料のうち一部は契約者に返還される。これを解約返戻金と呼ぶ。

[編集] 基本的な保険商品のモデル

生命保険商品は極めて多岐にわたるが、その多くが基本的な死亡保険と生存保険の組み合わせによって設計されている。

  • 死亡保険
保険期間の間に被保険者が死亡したときに保険金が支払われる。
定期保険は純粋な死亡保険である。定期保険においては、満期保険金が無いので、満期時には全ての保険料収入を保険金として支払う設計になっている。そのため、責任準備金は保険期間後半で多少蓄積されるが、満期時にはゼロであり、全体としてもそれほど多くはならない。
  • 生存保険
被保険者が満期時に生存しているときに保険金が支払われる。
いわゆる「年金」は生存保険に該当する。生命表によって生存している人の年齢ごとの割合から延べの受け取る回数を計算して、その間の金利(予定利率)も考慮に入れて、積み立てられた原資から加入者すべてが毎年一定の年金額を終身で受け取れるようにしたもの。
  • 生死混合保険
死亡保険と生存保険を重ね合わせたもので、被保険者が死亡したときには死亡保険金が、満期時に生存しているときには生存保険金が支払われる。
養老保険は上記死亡保険と生存保険を1対1でブレンドしたもので、保険期間中に死亡したときと満期時に生存しているときに同額の保険金が支払われる。また、終身保険は生存が支払条件とはなっていないが、保険数理上は養老保険の満期を105歳に伸ばしたものとして設計されている。

現在多種多様な保険商品が開発、販売されているが、その多くはこれらの保険を適宜組み合わせたものである。

[編集] 三利源と配当金

生命保険の保険料は、純保険料と付加保険料からなる。純保険料とは、保険金の支払に充てるために徴収される保険料であり、付加保険料とはそれ以外の、保険会社の事業経費として徴収される保険料である。

純保険料として必要な金額は、前述のように加入者の死亡率と責任準備金の運用利率に基づいて決定され、そのときに用いられる予定値がそれぞれ予定死亡率、予定利率である。

生命保険の付加保険料は、新契約締結にかかる費用、契約の維持にかかる費用、保険料の集金にかかる費用という名目で徴収される。これらについてもあらかじめ必要な額を見込んで保険料計算を行うが、そのときの率を予定事業費率と呼ぶ。

これら予定死亡率、予定利率、予定事業費率はあくまで見込みであるため、実際に保険料として必要となった金額との間に差額が発生する。それらをそれぞれ死差益利差益費差益と呼び、この三つを合わせて三利源と呼ぶ。実際の見込みは保険料の不足が発生しないようかなりの余裕をもって設定されるので、基本的に差額は剰余金として発生する(逆ザヤ(利差損)の問題については「歴史」の節を参照)。これらの剰余金は本来保険料として徴収する必要の無かった金銭であるので、保険会社はこれを契約者に還元する。これを配当金と呼ぶ。

ただし、最近は保険料を安くしたいというニーズに応えるために、配当金がまったく無い、あるいは利差益のみを配当金として還元するようなタイプの保険商品も設計されている。

[編集] 危険選択

生命保険においては、収支相等の原則を守るために同一の危険を持つ被保険者集団を形成する必要があるが、その裏をかいて不当に利益を得ようとする行為が発生する恐れが常にある。言い換えると生命保険会社と加入者の関係に内在する情報の非対称性に起因するモラル・ハザード逆選択が常に発生し得る。

そのため、生命保険会社は、同一の危険を持つ被保険者集団を守るために危険選択を行う。具体的には加入時に医師による診査や告知書などを用いて、特に標準的な危険よりも大きな危険を持つと考えられる加入者を識別している。ただし、それはそのような加入者が保険に加入できないことを意味しない。その加入者と同等の危険を持つ被保険者集団が形成できれば、その集団に対する適切な保険料で保険に加入することができる。

また、支払時にも査定を行い、保険金詐欺を防ぐことが行われている。

[編集] 現在販売されている保険商品

[編集] 個人保険

個人保険とは被保険者を個人とする契約を指す。団体保険に対する意味で個人保険と呼ばれる。

[編集] 主な生命保険の種類

現在販売されている保険商品のうち主なものについて述べる。

一定期間以内の死亡に対して保険金が給付される生命保険。いわゆる「掛け捨て」と呼ばれる保険であり、死亡のみ保障するため、保険期間を満了したときの満期保険金はない。途中解約した場合の解約返戻金は一般に少ない(ただし、保険期間が60年・70年といった長期になった場合、契約後期の解約返戻金の額はそれなりに大きくなる)。保障される金額に対する保険料は比較的安いため、子どもが成長するまでの世帯主など、一定期間、高額な保障が必要とされる場合に利用される。近年では保険料を安く保障額を多くしたいというニーズに対応するため、中途解約の場合、解約返戻金がまったくない商品も開発されている。
一般に「定期保険」と言った場合は保険期間中は保険金額が一定だが、保険期間中に保険金額が増加したり減少したりするものもあり、それぞれ「逓増定期保険」「逓減定期保険」という(契約時に将来の保険金額がすべて固定されているという点で変額保険とは異なる)。
詳細は定期保険の項目を参照。
保険期間を定めず、生涯にわたって保障される保険。死亡した場合必ず保険金が支払われるので、定期保険と比較すると保障される金額に対する保険料が割高である。途中解約をした場合に解約返戻金が出ることが多いが、通常は払い込んだ保険料の総額よりは少なく、また契約してからの経過年数が短いほど返戻金は少ない。解約返戻金の増減は、払込期間をどのように設定するかによって大きく変わる。60歳で保険料を全て払い込む形(払込期間60歳)にした場合、おおむね60歳前後で払い込んだ保険料よりも解約返戻金のほうが多くなる。保険料を上回るタイミングが60歳より前に来るか、後に来るかは、金利(予定利率)よりも、保険会社の経費(予定事業費率)の影響が大きい。したがって一般に「金利(予定利率)が高いときの終身保険契約はお得」と言われるが、60歳前後で解約した場合、低金利時より保険料が安いというだけで、最終利回りとしては、あまり高金利のメリットは得られない。また、60歳以降から数年は勢いよく解約返戻金が増加するが、70歳を超えると責任準備金としてプールされる金額が減り、かえって死亡保険料として取り崩される金額が増えるので、解約返戻金の伸びは鈍る。最終的に105歳前後で解約返戻金と保険金が合致する。一方、保険料を一生涯払い込む形(終身払)にした場合、加入時期によっては最終的に70歳代半ばで保険金よりも、払い込んだ金額の方が多くなるという現象が生じるケースが多い。詳細は終身保険の項目を参照。
保険期間内に死亡した場合に保険金が支払われるのはもちろんだが、満期になった時に生存していた場合、満期返戻金として保険金額と同額が支払われるというもの。契約満了時には通常、満期返戻金に加え、配当金が支払われるため、払い込んだ保険料よりも多く受け取れる為「貯蓄型」とも呼ばれる。加入時の年齢や保険期間によっては貯蓄性がない場合もある。これは、生存保険と死亡保険を同額組み合わせることで保険金給付に関わるリスクを減らし、貯蓄的な色合いを濃くしたものである。かつては、途中で解約した場合にも、払込金額以上の金額が戻って来ること、一定条件を満たせば被保険者死亡時にかかる相続税の取り扱いが優遇されていることなどから、本来の目的を離れ、貯金代わりに利用するものも多かったが、バブル崩壊後徐々に予定利率が減少し、途中解約しては支払金額以上には戻って来なくなったので、この利用法は廃れた。養老保険の場合、満期時に生存していれば確実に保険金が受けられるので、保険料は定期・終身保険よりもさらに割高になっている。バブル期には当時の高利回りを狙った「一時払養老保険(契約時に保険料を一時金として一括払いする養老保険)」が流行った時もあった。詳細は養老保険の項目を参照。
終身保険と定期保険を組み合わせたもの。終身保険が主契約で定期保険が特約となっていることが多い。子どもが大きくなる前のように、大きな死亡保障が必要なときだけ保障を大きくすることができる。アカウント型を販売していない会社では主力商品となっている。詳細は定期付終身保険の項目を参照。
比較的新しい商品で、毎回一定の保険料のうちいくらかを定期保険、残りをアカウントと呼ばれる積立金に充当し、定期保険終了後に一時払終身保険あるいは年金に移行するタイプの保険である。現在の主力商品となっている。詳細はアカウント型保険の項目を参照。
  • 子ども保険
子どもの年齢や小中学校・高校の入学時期に応じて祝い金が支払われたり、満期時に保険金が受け取れるような保険。また、親の死亡時には以降の保険料支払が免除されたり(契約は満期まで継続する)、子どもに対して補助金が給付されたりすることもある。実態としては、子どもを被保険者とする生存保険と、親を被保険者とする死亡保険を組み合わせた複雑な保険商品になっている。
一定期間保険料を払い込み、保険料を積み立てた資金を原資として、契約で定められた年金を受け取るような保険商品。生存保険の一種。詳細は個人年金保険の項目を参照。
保険期間中に株式債券などへの投資・運用を行い、その成果に応じて死亡保険金額、解約返戻金額、満期保険金額が変化する保険商品。一般の保険は契約時に定めた保険金額が契約期間中に変化しない(定額保険という)。詳細は変額保険の項目を参照。

その他、保険商品は多種多様であるが、多くは基本的な死亡保険・生存保険の金額・期間を変化させて組み合わせたものになっているといえる。

[編集] 主な特約の種類

特約とは、終身保険や定期保険などの主契約に特約として付加出来る、いわば生命保険のオプションとしての存在である。定期付終身保険の場合、正式名称は「定期特約付終身保険」となるため、定期保険部分そのものがベースとなる終身保険の特約である。

  • 医療特約
けがや病気が原因で入院したときに所定の金額が受け取れるもの(災害入院特約・疾病入院特約)が一般的。
  • 介護保険特約
自分が介護を受ける必要が出てきた場合に給付金などが受け取れるというもの。但し、給付条件が国の障害者認定1級よりも厳しいものもある。
  • リビングニーズ特約
ガンなどで、余命数ヶ月と判断されたときに、保険金額のうちのいくらかが生前に支払われるという特約。生前給付ともいう。

[編集] 団体保険

団体保険とは、会社や官公庁等の団体に所属する者全体を保障する生命保険の一種である。団体と生命保険会社で直接契約を行い、単一の契約でその所属員が一括して保障されるようになっている。大量処理によって運営コストが節約できるため個人保険よりも安価に保障が得られることが多い。

[編集] 団体定期保険

会社等で被用者の死亡保障を目的とした定期保険商品。保険期間は1年で、1年経過後には自動で更新される。

  • 総合福祉団体定期保険
企業が弔慰金等の財源として加入する団体定期保険である。基本的に所属員全員が加入し、団体が保険料を負担する。
  • 団体定期保険(Bグループ)
所属員が任意で加入できる定期保険で、企業の福利厚生として行われている。保険料は所属員の負担になるが、個人保険に加入するよりも割安であることが多いが、当然団体から離脱すると(たとえば退職すると)保障は継続しない。

[編集] 団体年金保険

会社等で被用者に対して退職後の年金を支給するために加入する商品。

[編集] 契約にあたって

  • 何のために・誰のために・どんな時のために保険が必要なのか
  • 貯金等の他の手段ではなく、何故保険でなくてはだめなのか
  • 自分にとって、家族(遺族)にとって、本当に保険は必要なのか

必要な保障というのは、各人の価値観やライフスタイルなどによって多様である。死亡時に必要な補償額は、一概に年齢だけで決められるというものではないし、その他の保障についても同様のことが言える。自分が死んだときに、残された人にとって本当に保険金が必要かというのすら、個々人のライフスタイルによって異なる。コストをかけて生命保険の保障を受けなくても、単なる貯金や公的社会保障制度(健康保険厚生年金・遺族基礎年金・生活保護など)でも十分ということもある。生命保険ではなく損害保険で賄える場合もある。また、場合によっては、死んだときの保障よりも入院したり介護状態になったときの方に備えておかなければならないという場合もある。

つまりは、誰しも・万人が生命保険が必要というものではないことになる。個人の貯金や公的な社会保障制度でも足りない分があればそれを生命保険を使って補う、ということを念頭に置くことも、上手に生命保険を活用する方法である。

[編集] 生命保険豆知識

  • 生命保険には税金がかかる。以下の例は保険金3000万・年収800万円・生命保険以外の財産が無い場合
    • 夫が被保険者・契約者で受取人が妻の場合は保険金に対し税金はかからない
    • 夫が被保険者で妻が契約者と受取人の場合は所得税住民税が保険金にかかり、合計約433万円
    • 受取人を子供にしている場合は保険金は贈与税の対象となり、約1374万円
  • 生命保険の保険料は、保障の期間中同額の全期型と一定期間毎に保険料が上がる更新型がある
  • 契約時に提出する告知書(加入時の自分の健康状態を記入するもの)に偽りがあったり、告知漏れがあった場合には、保険金は下りないこともある(告知義務違反)
  • 被保険者の同意が無ければ、たとえ夫婦・親子であっても保険の加入は出来ない
  • 保険料が払えなくなっても、返戻金がある種類の保険であればそれを原資にして保障を継続することが出来る(保険期間を変えずに保険料を少なくする払済保険、保険金額を変えずに期間を短くする延長定期保険など。但し、付随していた特約は自動的に解約となる)
  • 保険会社が破綻した場合には、その保険は本来なら、無効になる。しかし、契約者への影響が大きいことから、保険会社がお金を出し合い、契約者保護機構というものが作られており、実際には、別の救済保険会社もしくは保険契約者保護機構が保険業務を引き継ぐ事が多い。しかし、バブル崩壊や海外生保の流入により破綻する保険会社が増え、契約者保護機構もそろそろ限界に来ている。
  • 保険料金額は、月払いより年払い、年払いよりは一括納金(全期前納)の方が、訪問集金より口座振替の方が若干安くなる
  • 個人で加入するより勤務先の企業などの団体扱いの保険があれば、後者の方が保険料も安くなる
  • 解約・減額は外交員や営業所以外にも「ライフセンター」などと呼ばれる窓口でやってもらう方法もある
  • 保険金などの請求権は、原則として支払事由発生日の翌日から起算して3年を経過した時、時効により消滅する
  • 契約期間が1年を越える生命保険の場合、基本的にクーリングオフが出来るが(書面の交付又は第一回保険料支払日から8日以内に手続きを行えば可能)、自ら保険の営業所などに行って契約した場合には、クーリングオフはできない
  • 保険金の請求事由(死亡等)が発生しても、直ちに保険金の給付が受けられない場合がある。そのため、大金が必要なとき(葬儀等)に保険から現金が用立てられないといったトラブルが発生することがある。保険金の給付までにかかる期間等は加入時に確認する必要がある。
  • 入院に関する保険金の給付に日数がかかった場合、給付時までに容態が回復したりすると、その状態に応じて給付が減額されることがある。そのため、即時給付の保険と、給付までに日数がかかる保険の場合で、給付額が異なってくる場合がある。(即日給付される保険であれば、後日回復したからといって給付額の減額(返金)を求められたりすることは通常ない)これもよくトラブルの原因になるので、よく確認すべきである。

[編集] 日本の生命保険業界の問題

日本においては950種類以上の生命保険商品が存在し、全世帯のうち93%以上は何等かの生命保険に加入していることから、日本は世界的な生命保険大国であるとも言える。

生命保険文化センターの調査によると、日本人の生命保険平均死亡保険金額の平均は普通死亡保険金額と災害死亡保険金額を合わせて1人あたり約5500万円以上。また、一世帯あたり平均4.9種類の生命保険に加入し、負担する年間保険料は平均65~70万円、一生涯に払い込む保険料の総額は2000万円以上にも及ぶ。即ち、生命保険は住宅の次に高額な商品であり、また長期の契約になることから、契約を決める際にはその必要性・かかるコストを慎重に検討し、契約者個人の人生設計・ライフスタイルも十分勘案する必要がある。

しかし、実際の保険契約は自発的に加入したというものはまれで、勤務先で外交員から勧誘されるままに入ったり、親類・友人・知人などの紹介や勧誘で加入したというケースが多い。そのため、契約書を読まない、読んでも内容を理解していない、といった事例があとを絶たない。

契約者の側には

  • 生命保険に関する知識を得る機会が少なく無関心である
  • それゆえ、外交員の言いなりに保険に加入し、自分が契約した生命保険の内容についての認識が殆どなく、その保障期間や金額・保険金の受け取り条件・一定の年齢で保険料が上がることなどを知らずにトラブルになることもある。

外交員の側には

  • ノルマが厳しく、離職率も高い。それ故にきちんとした知識を持った外交員を育てることが難しい
  • 長年、俗に言われる「GNP営業」(G:義理・N:人情・P:プレゼント)で勧誘してきたこともあり、特に女性外交員の社会的地位は大変低く、モチベーションを維持することが難しい

などの問題が指摘されている。保険会社の方でも、この問題を解決しようと対策に乗り出しているが、実効は上がっているとは言い難い。トラブルにならないようにする為にも、まず基本的な生命保険の種類とそれぞれの特徴を理解し、自分にとっての「必要性」を検討すること、また、外交員にきちんと納得がいくまで説明を求めるなどの必要がある。

また、こと生命保険においては、募集人や代理店に支払われる募集手数料が高額であり、悪質な募集人や代理店はこれを得るために、違法行為となりうる特典(保険料の立て替えなど)を付与したり、不必要な契約を迫ってくることも実際にあり、何の疑いも無く募集人の言うがままに保険に加入してしまうと最終的に契約者自身の首を絞めてしまう可能性がある。こうした危険から身を守るためにも、募集人の話は鵜呑みにせず、その募集人とは何ら関連性の無い別の方法を用いてしっかりと調べておくことが推奨される。

保険は、安心をお金で買う物である。安心は漠然としたものかもしれないが、どんな安心が欲しいのかは契約者の方で認識をする必要があるといえよう。

また、生命保険の保険金を狙った犯罪も後を絶たない(モラルリスク)。団体定期保険や消費者信用団体生命保険については、被保険者に契約内容や受取人のことが周知されておらず社会問題となったことがある。


保険の問題点も参照されたい。

[編集] 不当な不払い問題

2005年2月に判明した明治安田生命保険による保険金の不当な不払いの発生を受け、2005年10月、生保各社から過去5年間に保険金や配当金の不払いがあったかどうかを調査した結果が発表された。これによると28社もの生保が不適切な事由で保険金や給付金を支払っていなかったことが明らかになった。

しかし、この調査結果が発表される以前や以後に損保各社による大量不払いが明らかになっており、それに飲み込まれる形で生保の不当な不払いはあまり関心が寄せられず、以降は続々と不正が判明する損保関連の不祥事が目立つようになっていった。

こうして一連の不祥事が終息したかに見えた生保業界であったが、2006年12月22日のジブラルタ生命保険での不払い発覚を皮切りに、新たな保険金の不当不払い事案が生保各社から大量に発覚し始めてしまう事態になった。このため、2007年2月1日に金融庁が日本の全生命保険会社(38社)に対して、2001年~2005年の過去5年間に行われた保険金不払いの件数や不払い合計金額を調査し、2007年4月13日までにその調査結果を報告するように命令した。

各生保の状況は以下の通り。(2005年10月末時点でのデータを元にしている)

保険会社 件数(件) 金額(円) 資料
明治安田生命保険 1053(内保険金:542) 33億(内保険金:31億) [1]
日本生命保険 57(内保険金:9) -(内保険金:-) [2]
朝日生命保険 45(内保険金:11) 9820万(内保険金:9096万) [3]
アメリカンファミリー生命保険 45(内保険金:-) 961万(内保険金:-) [4]
アリコジャパン 32(内保険金:3) 7764万(内保険金:7000万) [5]
損保ジャパンDIY生命保険 30(内保険金:2) -(内保険金:-) [6]
第一生命保険 25(内保険金:6) 2327万(内保険金:-) [7]
オリックス生命保険 17(内保険金:0) 184万(内保険金:0) [8]
アクサ生命保険 14(内保険金:0) 278万(内保険金:0) [9]
大同生命保険 12(内保険金:0) 232万(内保険金:0) [10]
アクサグループライフ生命保険 12(内保険金:0) 167万(内保険金:0) [11]
マニュライフ生命保険 11(内保険金:2) 2336万(内保険金:1952万) [12]
AIGスター生命保険 10(内保険金:0) 67万1400(内保険金:0) [13]
損保ジャパンひまわり生命保険 9(内保険金:-) -(内保険金:-) [14]
プルデンシャル生命保険 8(内保険金:7) -(内保険金:-) [15]
三井住友海上きらめき生命保険 8(内保険金:2) -(内保険金:-) [16]
富国生命保険 7(内保険金:5) 6067万(内保険金:6062万) [17]
三井生命保険 7(内保険金:1) 601万(内保険金:500万) [18]
住友生命保険 5(内保険金:1) 1166万(内保険金:1000万) [19]
東京海上日動あんしん生命保険 5(内保険金:0) 724万(内保険金:0) [20]
ソニー生命保険 4(内保険金:2) 6億144万5千(内保険金:6億) [21]
AIGエジソン生命保険 3(内保険金:1) 659万(内保険金:640万) [22]
T&Dフィナンシャル生命保険 3(内保険金:0) 33万(内保険金:0) [23]
日本興亜生命保険 2(内保険金:0) 22万6千(内保険金:0) [24]
共栄火災しんらい生命保険 2(内保険金:0) 10万(内保険金:0) [25]
東京海上日動フィナンシャル生命保険 1(内保険金:1) 300万(内保険金:300万) [26]
あいおい生命保険 1(内保険金:1) 1億5千万(内保険金:1億5千万) [27]
富士生命保険 1(内保険金:0) 4万(内保険金:0) [28]
合計:28
  • 表内の「-」は非公表または不明を表す。
  • 金額はおよその数値も含まれている。

保険業界全体における保険金不払い問題の歴史や詳細は、保険金不払い事件を参照のこと。

[編集] 日本国内主要保険会社

現在、日本国内で保険料収入が5000億円を超える大手は同系列を含め合算した場合12社あり、系列企業を分けて考えた場合には、国内大手9社、外資主要8社という状況である。

以下は、日本国内の主要保険会社である。 また、保険料収入が高い順に並べてある。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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