オンブズマン
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オンブズマン(おんぶずまん)は、スウェーデン語では ombudsmanと表記し、その意味は「仲介者、仲裁者」で、いずれの党派にも加担しないで、冷静な判定者の役割を果たす人や委員会のことをいう。
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[編集] 概説
オンブズマン委員会は、複数の人々から成る中立の監視・査定委員会である。新聞社の報道倫理や消費者の目から見た食品管理といった、中立性や公共性の要求されるテーマを取り扱うことが多い。
スウェーデンから生まれたもので、現地では既に200年以上の伝統と組織作りがなされている。スウェーデンでは、国王が周囲の諌めも聞かずに他国との戦争に臨んで敗戦の挙句自らも戦死したという場合に、休戦を取りまとめ軍を率いて帰国するという権限が王の宮廷道化師に与えられていた。このように、様々な事由から国家(権力者)による意志決定が難しい事態に陥った時に、政治体制・身分階級の序列に加わらない人がその仲裁・査定を行うものとして制度化されてきたのがオンブズマン制度である。
世界的にオンブズマンの考え方が普及したのは1970年代である。
以下には、スウェーデンの行政オンブズマンのあらましを紹介しているが、今日では、日本国内でも市民レベル・公的レベルの別を問わず、労働基準、行政施策、医療過誤、障害者の権利といった領域でさまざまなオンブズマン活動がなされている。市民レベルで自主的に始める場合、市民オンブズマンと呼ばれることが多い。
[編集] その役割
オンブツ、もしくはオンブズ(ombuds)というのは、古代ノルウェー語で「全権、全権掌握」の意味で、ある特定のテーマについて公共の場やある組織の中で、一部の人たちが不正な行為に及んでいる場合、特定の人に課されたそれを阻止するという、元々は名誉的な職務のことだった。
この意味で、こうした職務の遂行は、実際のところどちらにも加担しない厳正中立な手法が必要だと考えられた。ただいろんな人々の思惑も絡んでくるし、また一部には自分たちの利害関心を主張することが出来にくい立場の人たちもあるので、特に子どもや病人、障害者の人たちには格別の配慮がされている。
このような機能を可能にするのが、オンブズマンであり、係争中の案件の圏外にいて、官僚組織的な制約からも完全に自由な立場を委ねられている。
[編集] 必要とされる過程
- 係争中の案件の客観的な考察
- 両者から提出された主張の考慮
- それがもたらす損害、反論、そして経費などについての比較
- 裁判の枠外での比較検討での帰結
- 当該のケースについての推奨される解決の提案
[編集] スウェーデンでの組織
スウェーデンでは、オンブズマンは議会によって任命された独立行政的に信任を受けた監査官のことで、行政に対し苦情、抗告がなされた場合、それを調査する。そういった点においては、オンブズマンに就く人々は、行政倫理の分野ではますますその重要性を持つようになってきた。
オンブズマンの役目は無報酬の職務である。この職務には誰でも就任することができる。規則では、オンブズマンはこうした苦情を個人的に受け取り、自分でその真偽を吟味、行政が間違っているのか、それとも問題なしなのかを判定することになっている。その上で、正しいことをやっている側からだけでなく、両者から納得のいく解決を提案するのであるが、強制力をもったものではなく、あくまで推奨として提案するのである。
オンブズマンは議会に対してのみ責任を負い、議会にはその職務についてその事の次第をなにかあれば釈明する義務を負っている。情報へのアクセスについては、あらゆる官庁の文書に書面でも口頭でもその公開を要求する権利がある。いかなる文書も必要な情報であれば、閲覧することが出来、また自らの発案でもこうした調査活動を遂行することができる。
[編集] 日本の「市民オンブズマン」
日本では、(公的)オンブズマンに対して、市民団体が「いずれの党派にも加担しないで、市民の立場から行政や企業などを監視しよう」という目的で、自ら市民オンブズマンを名乗ることがある。
[編集] 関連項目
- (効力があるとは言い難いものの)オスロ合意においてノルウェー が仲介役を果たした。
- スリランカ政府とタミル・イーラム解放のトラの仲介役としてノルウェーが尽力している。
- 市民運動
- 全国市民オンブズマン連絡会議
[編集] 外部リンク
カテゴリ: 出典を必要とする記事 | 市民活動