クイル式駆動方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クイル式(クイルしき)は、国鉄ED60形電気機関車などの初期の新性能電気機関車に採用された駆動方式。
本項目ではクイル式の他、車軸側に中空軸が有る他の駆動方式も取り上げる。
目次 |
[編集] クイル式駆動方式
クイルと呼ばれる電動機設置スペースと大歯車を持つ、台車に固定された中空軸に主電動機を嵌め、車軸に固定されたスパイダ(8本の腕)を経て駆動力が動輪に伝わる。そのため、クイル軸が垂直方向、スパイダが水平方向に変位を許す構造となり、主電動機の完全台車装架が達成される。電車のカルダン駆動方式に似ている点があるが、ギアボックスを密閉できないため、大歯車のスパイダ穴にたまった砂や埃による磨耗から噛合いが悪化することで異常振動が多発するなどの欠点が明らかになり、国鉄EF60形電気機関車の2次形以降は吊り掛け駆動方式に変更された。その後、クイル式であった機関車の大部分は下記のリンク式に改造された。
[編集] リンク式駆動方式
リンク式は、上記のクイル式の欠陥を改善したもので、車軸と大歯車の双方から腕が4本ずつ出て、その腕にゴムを介して8個のリンクが装着され、リンクを介して駆動する方式。ギアボックスが密閉され、メンテナンス性が改善された。EF200形は製造当初から、この方式を採用したが、それ以降に登場した新型機関車は従来通りの吊り掛け駆動方式と成った。
[編集] 中空軸可撓吊り掛け駆動方式
国鉄EF66形電気機関車を特徴付ける駆動方式で、日本ではEF66が唯一の採用である。中空軸の中を動軸が通り、中空軸に大歯車が付き、中空軸からは左右に8本ずつピンが伸び、ゴムを介して動輪に挿入される。クイル式、リンク式とは異なり、モーターの重量は台車枠と中空軸に掛かり、これは従来の吊り掛け駆動と同様だが、車輪からの衝撃は軽減される。動力の伝達順はモーター→小歯車→大歯車→中空軸→ピン→ゴム→動輪。この駆動方式はドイツでは電気機関車、電車、共に広く使われてる。
[編集] 直角中空軸積層ゴム駆動方式
ドイツ製LRT(コンビーノ、等)に採用の駆動方式。モーター、ギアボックスは台車枠より外側に固定され、大歯車と車輪側から6本ずつ腕が伸び、腕の間に積層ゴムを挟み、積層ゴムで変位許容と駆動を行う方式。日本ではドイツ製の広島電鉄5000形電車に採用。台車横のカバーを開けると腕や積層ゴム等、駆動装置の様子を観察できる。尚、日本製の広島電鉄5100形電車(JTRAM)はWN継手式直角カルダン駆動方式である。
カテゴリ: 鉄道車両工学 | 鉄道関連のスタブ項目