クラップス
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クラップス(Craps)とは、2個のサイコロの出目を競うゲームの一つである。 プレイ進行自体は単純なものの、非常に様々な賭け方ができることに特徴がある。 アメリカを始め多数のカジノで遊ばれている。
ビデオポーカーやブラックジャックのように戦略によって勝てるゲームではないが、他のゲームに比べ熟練が要求されないわりに、控除率(胴元の取り分;ハウスエッジ、ハウスアドバンテージ)が少ないため、初級者から上級者まで幅広い層に人気がある。 バカラ同様ハイローラー(大金を賭けてゲームをする人。カジノから宿泊費、滞在費はもとより交通費やゲーム代の一部まで支給されることもある。俗語に「ホエール<鯨>」とも)が愛好するゲームでもある。
12世紀ごろ中近東で遊ばれていたクラッブス(Crabs)が、ヨーロッパ経由で世界に伝わったとされる。
目次 |
[編集] 遊び方
まず2人で遊ぶ場合を示す。
- 最初のシューター(投げ手)が2個のサイコロを振る。この最初のロールをカムアウトロールと呼ぶ
- 7,11が出ればただちに投げ手の勝ち(ナチュラル)
- 2,3,12が出ればただちに投げ手の負け(クラップス)
- 他の目、4,5,6,8,9,10 が出た場合、相手側と投げ手を交代しそのままゲームを続行する。ここで、この時出た目をポイントと呼び、ポイントが確定した後、7が出て負けるまでをシリーズと呼ぶ。
- 交代した投げ手がサイコロを振る
- ポイントを出せばその時の投げ手の勝ち
- 7が出れば負け
- 他の目であればまた投げ手を交代して、決着がつくまで2項を繰り返す
カジノ(特にアメリカ)で行われる場合は、投げ手はつねに一人で、
- 最初に7,11を出して勝つ。もしくは2,3,12を出して負ける
- 最初に負けなかった場合、そのまま続けてサイコロを振り、ポイントを出して勝つか7を出して負けるまで続ける
をひとつの流れ(シリーズ)としてゲームが進行する。ここで投げ手を含む人々はゲームの負け、勝ちを始めとする賭けを行う。ただし、ここの勝敗は便宜的なもの(投げ手は自分の負けに賭けることもできる)となる。
[編集] 主な賭け方
配当を x-y で示す。これは、相手が x 自分が y の掛け金をだし、勝ったものが両方を取る、を意味する。 つまり 2-1 という表記は日本語でいう3倍の賭けをあらわす。また、末尾の(数字)は控除率を表す。
- パスライン(pass line)
- シューターが勝つことに賭ける。1-1 (1.41%)
- ドントパス(don't pass)
- シューターが負けることに賭ける。ただしカムアウトロールで12が出たときは引き分け。1-1 (1.36%)
- カム(come)
- パスラインと似ているが、カムアウトロール後の任意のタイミングで参加することができる。この場合のポイントは次に振り出されたロールで決定され、その賭け固有のものとなる。1-1 (1.41%)
- ドントカム(don't come)
- カムの逆。12が引き分けとなるのもドントパス同様。1-1 (1.36%)
- エニークラップス (Any Craps)
- 次のロールで2,3,12が出ることに賭ける。7-1 (11.11%)
- エニーセブン (Any Seven)
- 次のロールで7が出ることに賭ける。一般的なベットの中ではもっとも率の悪い(控除率の高い=プレイヤーに不利な)賭け方である。4-1 (16.67%)
- ビッグシックス (Big Six)
- 7が出る前に6が出ることに賭ける。1-1 (9.09%)
- ビッグエイト (Big Eight)
- 7が出る前に8が出ることに賭ける。1-1 (9.09%)
- ハードフォー、ハードテン (Hard four/Hard ten)
- 次のロールで、2,2または5,5のペアが出ることに賭ける。7か他の4(1,3/3,1:ハードフォーの場合)、他の10(4,6/6,4:ハードテンの場合)の組み合わせで負け。他は引き分け。7-1 (11.1%)
- ハードシックス、ハードエイト (Hard six/Hard eitht)
- 次のロールで、3,3または4,4のペアが出ることに賭ける。7か他の6(1,5/2,4/4,2/5,1:ハードシックスの場合)、他の8(2,6/3,5/5,3/6,2:ハードエイトの場合)の組み合わせで負け。他は引き分け。9-1 (9.09%)
他にも、
- ある目が次の一投でただちにでること
- 特定の範囲の定まった組み合わせが次の一投でただちにでること
- 7がでてゲームが終了する前にある目がでること、でないこと
など多数の賭け方ができる。当然ながら配当も控除率も様々である
[編集] オッズ
パスライン、ドントパス、カム、ドントカムにおいて、カムアウトロール後に自分の賭け額へ追加でベットする賭け方。オッズは、確率的に計算された正しい期待値で配当が算出される。つまり、オッズで追加された額への払い戻しに関しては、控除率がゼロということになる。
これではカジノがまったく得をしないため、通常、最初のベットの何倍かに限定される。倍率はテーブルやカジノによって決まっており、現在最も一般的な「x3 x4 x5」ルールでは、ポイント4または10に対してのオッズ上限は元の賭け額の3倍まで、ポイント5または9に対しては4倍まで、そしてポイント6,8に対しては5倍までとなっている。
ここで、仮に10倍までだとすると(実際にラスベガスのダウンタウン地区では客寄せのためにこの設定がよく見られる)、控除率はわずか0.18%となり、これは、ベーシックストラテジをマスターしたうえでプレイするブラックジャック、もしくは、最適なセオリーに完全に則ってプレイするビデオポーカーの 9/6 Jack or better を凌駕する、非常にプレイヤー側の不利が少ないゲームとなる。これらのゲームに比べなんの熟練もいらないのが、クラップスの大きなメリットである。
[編集] 遊び方の目安
オッズを併用したパスラインもしくはカムをベースに、自分の信念もしくは直感によって控除率のそれほど悪くないベットを行っていくのが一般的なプレイスタイルである。
クラップスでは、テーブル一体となって、カジノ側を負かす(つまりシューターが勝つ)スタイルでプレイされるため、確率的にもっとも有利なベットであってもドントパスおよびドントカムは好まれない。特に投げ手がドントパスに賭けることは、パスラインおよびカムに賭けている大多数のプレイヤーの願い(=シューターに勝ってほしい)の逆目に賭けている者が投げることとなるため、タブーとされる。どうしてもドントパスやドントカムでプレイしたい場合は、シューターではないタイミングを選ぶべきだが、それでも「このテーブルには負けを願うプレーヤーがいる」ことそのものが異端視されることが多い。もちろん、自分以外にプレーヤーが誰もいないテーブルでドントパスやドントカムプレイをすることは何の問題もなく、実際に早朝の空いたカジノではこのような場面が散見される。