ケイリー・ハミルトンの定理
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ケイリー・ハミルトンの定理 (Cayley-Hamilton theorem) とは,正方行列 とその固有多項式(特性多項式)
に対して,
が成り立つという定理のことである.ここで
はそれぞれ 単位行列と零行列を,また
は正方行列
の行列式を表すものとする.
おもにケイリーの仕事であるが,ここにハミルトンの名が冠せられているのは 3次の場合に彼の詳しい研究があったからである.
[編集] 2次の場合の証明
2次の正方行列 に対して,
より,
を得る.
から直接計算により, が確かめられる.
[編集] 一般の場合の証明
次正方行列
の固有多項式を
とし, 行列
の余因子行列を
とおくとき,
が成り立つ.この左辺の単位行列
の成分はクロネッカーのデルタで表せるから, この両辺の行列の第
成分を比較して次の式を得る:
多項式 および
における
に行列
を代入してできる行列
および
の第
成分をそれぞれ
および
と書くことにする.このとき,
の両辺の行列の第
成分を比較して次の式を得る:
この式の両辺において, とした上で
について
から
までの和をとると次の式を得る:
この右辺は明らかに消えるので,これにより行列 のすべての成分
が消えることが言える.