ケーフェイ
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ケーフェイ、ケッフェイ
- プロレスにおいて口外してはならないタブーや暗黙の了解(様式美)のことを指す隠語。以下で詳述する。
- 佐山聡の著書。1.の詳細が関係者自身により語られた数少ないケースとして出版当時にプロレスファンの間で話題を呼んだ。(ISBN 9784795220720)
ケーフェイ(ケッフェイと表記されることもある)とはプロレスの試合をショーとして成立させる上で守らねばならないタブーや暗黙の了解のこと。「be fake」の倒語である「kayfabe」が語源と言われる。
[編集] 代表例
- 5秒ルール:反則は、レフェリーの5カウントまでにやめなければ反則負けとなる。しかし、これは「カウント内なら許される」ものであり、カウント内の範囲で凶器の使用をも行う点がプロレスらしさであるといえる。
- ロープブレイク:ロープブレイク時に技を解除しない場合、即時の反則負けではなく5秒ルールが適用される。一旦その場で技を解除し再びかけたり、カウント中にリング中央に引きずり戻した場合、カウントは解除され、試合は続行される。つまり、技がかかっている状態のみがカウント対象となる。
- 基本的にリング内のレフェリーのみが試合を裁く権利を持つ。このため、レフェリーが見ていなければ、どのような反則も咎められない。カウントの速さも審判次第。観客が楽しめる試合を構築するため、選手・レフェリー・時には観客を含めての行いが試合を盛り上げる。
- リング外に出た場合、団体規定のカウント内に戻れなければリングアウト負けとなる。カウント数は適用されるルールによっても異なる。通常は20カウントでリングアウト負けだが、両者がリング外にいる時はカウントを行わなかったり、間隔が長くなることがある。
- 攻守交代を除き、基本的に技を拒否しない。負傷させたり、生死に関わるような危険な技はかけない。
- 基本的にプロレスは80%の力で拳で顔面に殴りかかって、実際に当たる寸前で止める事ができるかだと言われている。当たっていないのに倒れたり、かすっただけで痛がる事は普通であるが、それを観客に気付かせるものはプロレスが下手である、と批難される。
- 3カウントが入ると負けだが、対戦相手のスタミナが尽きかけていると判断した時、上に乗っている方が自分から離れたりする。離れた後は観客へのパフォーマンスや、相手に顔を近づけて罵るなどで仕切り直しをする。試合中のアクシデントで脳震盪や失神してしまった場合も、何らかの方法により(レフェリーやセコンドと口論するなど)試合再開のための時間を稼ぐ。この場合、ダウンカウントは中断される。場外で失神してしまった場合は場外カウントも停止する。
- 関節技は格闘技と異なり、完全には極めない。ロープエスケープや切り返しを相手が出来る状態を保持、場合には力を弱めるなどの協力をする。技を自ら解除することもある。
- 相手をロープに振ると相手はもの凄い勢いで戻ってきて相手の技をまともに受ける。明らかにロープに届かない勢いだった場合も確実にロープまで行って戻ってくる。
- プロレスラーが流血する際は、大半が試合中の事故ではなく、人為的なものである。カッターナイフなどの刃を隠し持ったレフェリーなどの選手以外の人間が、試合中に血の出やすい場所を傷つけているという。主に場外乱闘時に行われる。流血しない側がリングに先に戻り、アピールなどにより観客の注意を集める間に行われることが定番である。選手自身がカッターの刃をリストバンドやバンデージに隠しておくこともあるが、アクシデントにより隠し場所をカットしてしまい、試合の流れ上おかしい場所から流血してしまう場合がある。また時にリング下に隠してある血糊を使うこともある。攻撃を受け、口から血を吹く際などに用いられる。
- 相手がコーナーポストに上った時、相手は攻撃を放つまで待機する(要するに寝ている)。また明らかにコーナーから飛んでも届かない場所に倒れてしまった場合、客にわからないようにコーナーに近づく。ボディプレス系の技の場合、コーナーポストに上る際、かける側が相手の上をまたぐ・もしくは迂回して上るかで回避するかどうかを決定する。
- 技に入る前の挙動で対戦相手に次の技を示す。格闘技スタイルの試合の場合は、構えた時の手をヒラヒラさせる回数などで、攻撃パターンを示す。これによりキックをカットしたり、パンチなどの攻撃をかわして反撃に行く、といったことが円滑に行うことが可能になる。
- 選手は必殺技(フィニッシュ・ホールド)や得意技を持っている。一流のレスラーは技が代名詞となっている。近年は、試合終了直前に大技を放ちフォールに入り、カウント1で返させ、負け側のタフネスを演出した上で、必殺技で勝利する終わり方が見られるようになった。これによりフィニッシュホールドの価値を保持し、高めることが出来る。悪役レスラーには凶器攻撃(メリケンサックや金属製の棒など)や噛み付きなどの反則技を得意技とする者がおり、プロレスの独自性を示している。
- 攻撃を加える箇所は原則として、相手の逆利き手側の半身を中心に行う。利き手側を攻めると、反撃が遅くなり試合のテンポが削がれるため。キックの場合はこれが逆転することがある。右利きの選手同士のミドルキックの撃ち合いの場合、軸足を右足にするため、左足を当てる場所は相手の右半身になる。概して身体と右腕の間に足を放つ。
- 相手と両手を組んでの押し合いとなった場合には、相手が前進してくるのに合わせて自分の足を引き、スムーズに相手が前進しやすくする。
- リーグ戦では優勝者・チームは序盤戦で2~3ほど連敗する。その後「破竹の快進撃」という形で連勝し、優勝する。これにより優勝者・チームの勝負強さをより際だたせることが出来る。また、決勝戦のカードは勝利する側はリーグの通常戦ないしは前哨戦で一旦敗北しておくことが多い。「リベンジ戦」の名目を付け加えることが出来るため。しかし場合によっては全勝での優勝が実現する事もあった。
- 特に日本の女子プロレスに多いが、場外へのダイビング技を受けるときは、レスラーだけではなくセコンドも一緒に受ける。1対1よりも1対3程度で受けることで事故を回避する。出来る限り巻き添えで受けたかのように振る舞う。対抗戦の場合は、相手団体側のセコンド協力を得ることが多い。相手団体のレスラーが試合に介入するかのように見せることで、より対立軸を明確に出来るため。
- 団体の王者が他団体の興行に出場する際は、あらかじめタイトルマッチで王座から転落しておくことが多い。王者が負けると、その団体のベルトの格が落ちるため、それを避けるための処置。
[編集] ケーフェイの存在が認められた判例
プロレスの場外乱闘により重傷を負ったとしてプロレスラーが対戦相手及びそのセコンドの側に損害賠償を求めた訴訟の判決で東京地裁の野村高弘裁判官はプロレスでは試合の勝敗等に関する「事前の取り決め」が存在するという事実を認定した上で当事者間の一連の行為に対して「観客に見せる興行としてのプロレスとは異質な暴行」や「事前の打ち合わせにない行き過ぎ」といった司法判断を下した。
暴行で大仁田議員側に賠償命令:スポーツ報知
http://hochi.yomiuri.co.jp/battle/prowrestling/news/20060428-OHT1T00657.htm