ゴリラーマン
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『ゴリラーマン』は、「週刊ヤングマガジン」(講談社)に1988年から219回にわたって連載されたハロルド作石原作による漫画である。
目次 |
[編集] 概要
不良高校生の日常の中で、外見的・性格的に極めて特徴的な主人公ゴリラーマンが巻き起こす、または巻き込まれる騒動を淡々と描き、人気を博した。表面的なギャグ的な要素とは裏腹に内面は暗く渇いている。
1990年、第14回講談社漫画賞一般部門を受賞。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] ストーリー
ある日白武(しらたけ)高校に転校してきた池戸定治は、徹底した無口ながら、なぜか不良グループと気が合い、外見から「ゴリラーマン」というあだ名を進呈され、行動をともにする。
実は、ゴリラーマンはケンカをすれば並の不良では全くかなわない強さであり、これまでいた学校では必ず問題を起こし、転校に追い込まれてきたのだった。しかしながら、普段は無口でほとんど自己主張がないため、仲間たちはゴリラーマンの恐ろしさに気づかない。
ストーリーは、大きく前期と後期に分けられる。全般的に、仲間たちと過ごす高校での日常の描写を淡々と描きながら、校内球技大会などのスポーツや、バイト、生徒会活動、周辺の高校の不良たちとの抗争などのエピソードを加え、最後まで読者を飽きさせない内容となっている。
前期のメインテーマは「友情」だとされている。白武高校の不良のトップを自負する藤本は、転校してきたゴリラーマンを自分より下位の立場と見なし、その中でゴリラーマンとの人間関係を築いていった。しかし、藤本はゴリラーマンの真の姿(ケンカの強さ)に次第に気付き始め、自らのプライドを刺激された藤本は、ゴリラーマンとついに激突することとなる。ゴリラーマンと対決した藤本は、仲間の前で圧倒されるが、偶然の一撃でゴリラーマンに勝利する。両者の関係は修復不可能と思われたが、ほどなくして従前どおりの関係に戻り、奇妙な友情関係が生まれた。前期のストーリーでは、思春期の不安定な自我同士が衝突や和解を繰り返しながら互いの関係を止揚させていき、決して単純ではない愛憎織り混ざった複雑な友情関係を築いていくさまが描かれており、その友情を築くに至るまでのストーリーの強い統一感・テーマ性を高く評価する見解もある。
後期にも、ゴリラーマンと仲間たちが決裂しかけながら、藤本が仲介し、両者が和解するという友情のエピソードがあるが、全体的な基調は、強い敵(他の高校)が現れる中でゴリラーマンの謎が解かれていくという内容であり、前期ほどの強いテーマ性はない。
連載開催時は、主要登場人物は2年生であったが、途中から進級し、連載終了時は3年生である。白武高校がどこにあるかの設定は不明であるが、作者が愛知県出身である事、作中に名古屋市今池(歓楽街)を思わす中部地区限定の鈴木ヒロミツ出演によるサウナCMの描写がある事から、作者の出身高である愛知県立守山高等学校がモデルだと言われている。しかしながら、作中に登場する「東今中駅」は、横浜市神奈川区のJR東神奈川駅がモデルになっている。
[編集] 登場人物
[編集] 白武高校
- ゴリラーマン
- 本名・池戸定治(いけど さだはる)。白武高校転校後はゴリラーマンと呼ばれているが、前にいた五天王寺(ごてんのうじ)高校ではゴリポン、その前にいた万菜(まんな)高校ではゴルゴ池戸と呼ばれていた。外見がゴリラに似ており、徹底した無表情。どのような場合にも表情が変わらず、照れたときに頬が赤くなること、困ったときに目が寄り目になることが、わずかに確認できる程度である。また、最終話に至るまで、徹底した無口を通しており、たった一度の例外を除き、せりふがまったくない。好物はドリンクタイプのカロリーメイト(ミルク味)、好きなタバコはリベラ。ケンカの際の得意技は「裏拳」をはじめとした手技と各種バックブリーカー。蹴り技はほとんど使わない。弱点は首。犬も苦手。格闘技のほか野球を得意とする(五天王寺高校時代は野球部に所属)。名前の由来は、父親の名前が「哲治」(元読売ジャイアンツ監督、川上哲治を想起させる)であることから、福岡ソフトバンクホークス監督の王貞治ではないかと推測される(漢字は違う)。3年生のときになぜか生徒会長に自ら立候補し当選。9人兄弟の5番目 (?) で、世界的な格闘家で現在は「いけど食品」経営の父、高校生の姉の美穂、「九」という名前の弟などがいるが、全員同じ顔、無表情、無言。すでに死亡している長男の「一(はじめ)」、どこにいるのか最後まで説明のない母親を除き、家族全員で住んでいる。
- 藤本(ふじもと)
- 白武高校不良グループのリーダー。ケンカが強く、スポーツは万能で、1年生のときは野球部のエースであったが、練習についていけず退部。2年生の時点ですでに3年生の中に藤本に敵う者はなく、白武高校を仕切る存在になる。得意技は「二段蹴り」と「ゆうれい自転車」。屋上でタバコを吸い、授業をサボってパチンコに行くなどいい加減な毎日を過ごしているが、友情と責任感に厚く、周辺の高校の不良グループとの抗争では最後まで戦う。ゴリラーマンと一対一で戦ったときに、偶然の勝利を収め、ゴリラーマンの真の強さに気付きつつも、無意識ではそれを認めたくない葛藤を抱えていく。学校では番長格で一般生徒とは一線を引いている雰囲気だが、明るい性格のため割と親しまれており、前校長ともフランクに話す。ヤンキーグループと言われた時は「お、俺たちヤンキーかな…」と発言している。妹がいる。母親はストーリー中病死するが、そのエピソードはコミックスには未収録。下の名前は修二(しゅうじ)。名前の由来はホークスの元投手、藤本修二からであろう。
- 中島(なかじま)
- 藤本軍団の副リーダー格。ほぼ毎回登場するが、最後まで下の名前は不明。マンガが得意。ドラえもんの顔の線が目の下を通ってないと怒る。
- セースケ
- 藤本軍団の一人。苗字は鶴田(つるた)。相撲最強論者。女の子を好きになってはフラれる。オバケが苦手。
- ジュンロー
- 藤本軍団の一人。苗字は阿部(あべ)。メガネを割られると異常に強くなり、藤本のライバル的存在だった上級生で番長の昌ちゃんを倒した。
- 仁村(にむら)
- 藤本軍団の一人。頭脳明晰で、勉強しているシーンはほとんどないが、テストで学年2番を取ったことがある。藤本グループの知恵袋。早くからゴリラーマンの強さに気づいた一人で、連載の後半では、ゴリラーマンの過去を調べることで彼を理解しようとする。ケンカはあまり強くはない。下の名前は透(とおる)。漢字こそ違うものの名前の由来は中日ドラゴンズの元内野手、仁村徹からであろう。
- 藤瀬(ふじせ)
- 藤本たちと同学年の不良であるが、藤本と性格が合わないため、不良グループには属していない。空手をやっており、ケンカをすれば藤本と同じかそれ以上の強さ。早くからゴリラーマンの強さに気づいた一人。
- 北村香織(きたむら かおり)
- ゴリラーマンたちと同学年の美少女。内気な性格で、ゴリラーマンのことを「気軽に話しかけられる人」として好感を持つ。そのうち、本人は強く否定するがゴリラーマンに恋愛感情を持つようになり、ゴリラーマンとの微妙な感情のやり取りがストーリーのひとつの軸となる。
- 藤瀬健次(ふじせ けんじ)
- 藤瀬の腹違いの弟で、藤本たちが3年生のときの1年生。空手が得意で、ゴリラーマンに挑戦し負けたことから藤本軍団に入る。兄よりも身軽でゴリラーマンのようなバック転を使いこなす。
- ミヤーン
- 藤本たちが3年生のときの1年生。入学時に藤本に挑戦し負けたことから藤本軍団に入る。本名:谷宮庵(たに みやあん)。大洋ファンだった父親が当時いた外人選手(フェリックス・ミヤーン)にちなんで命名。珍名にコンプレックスを持っており、普段からケンカは強いが、名前のことを言われると特に強くなる。
- 飯塚(いいづか)
- 藤本たちが3年生のときの1年生で、藤本グループに入る。名前、外見ともに元たけし軍団のダンカン(本名:飯塚実)がモデル。
- 松田あおい(まつだ あおい)
- ゴリラーマンが生徒会長に当選したときの副会長。水泳部で白武高のアイドル。藤本グループのほぼ全員が思いを寄せる。
- 不破明(ふわ あきら)
- 野球部員で、エース投手。球技大会でゴリラーマンにホームランを打たれる。のちに千葉ロッテマリーンズの投手として『ストッパー毒島』に登場。この当時は監督にスタミナがなさすぎることを懸念されていた。ちなみに作中では「将来ロッテオリオンズに入団」となっている。ゴリラーマンの才能に早くから気づいていた一人。
[編集] 周囲の高校
- 塚本(つかもと)
- フルネームは塚本美鶴(みつる)。古くから白武高校と抗争を繰り返してきた間柴(ましば)高校の不良グループのリーダー。歴史(及び歴史的戦術)が好きで、白武高校との抗争に信長の奇襲戦法を応用したりする。早くからゴリラーマンの強さに気づき、白武高校との抗争に怖気づいたため、リーダーの座を館井に奪われる。
- 館井(たてい)
- 間柴高校の不良。塚本に代わり不良グループのリーダーとなり、陰険な方法で白武高校への攻撃を仕掛ける。
- 泉里(いずみさと)
- 間柴西高校の不良グループのリーダー。表向きは真面目な生徒を装っているが父親は暴力団組長で「サウナ泉里」の経営者。部下に競馬のノミ屋をやらせており、大穴を当てたゴリラーマンらと揉めており、配下のヤクザを使ってゴリラーマンらをねじふせようとした所に突如現れた池戸美穂に殴られ、惚れてしまい、結果、抗争は終結する。その後、藤本に協力して堂上商業と戦う。
- 日沼(ひぬま)
- 吉豊工業の不良グループのリーダー。藤本の中学校時代の友人で、中学時代は100キロを超える巨漢であったが、池戸美穂(ゴリラーマンの姉)のことを思うあまりやせてしまったという。中学時代は「森田」という名前だったが両親が離婚した為、苗字が変わった。藤本と堂上商業との抗争では藤本に加担する。
- 片桐純哉(かたぎり じゅんや)
- 堂上(どのうえ)商業の不良グループのリーダー。ケンカが極めて強く、不良界のスーパースターといわれる存在。後半最終章は、片桐をトップに抱く堂上商業の不良に立ち向かう藤本たちの戦いがクライマックスとなる。すさまじい強さの秘密は、ゴリラーマンと同門であったためで、手技のゴリラーマンに対して蹴り技が得意。次々を近隣の高校を傘下に収めて、ステッカーをさばき金を稼いでいたことで藤本と敵対するが…
[編集] その他
上記のほか、もと柔道の日本代表だった用務員(後に『BECK』にも登場)、「教育委員会のホワイトウルフ」といわれた渋い校長、ゴリラーマンの友達のレゲエスタイルの浮浪者、信号無視をするたびに星のマークを車に貼っていくタクシー運転手など、個性的な脇役が多数登場するのも読者の楽しみであった。
[編集] 余談
登場する高校名はプロ野球の実在投手白武佳久、間柴茂有、堂上照より。吉豊工業は吉田豊彦からか。4人とも通算100勝未満の中堅選手であり、筆者独特のプロ野球への偏愛ぶりが伺える。
[編集] 刊行書
- ヤングマガジンコミックス:全19巻。
- 講談社漫画文庫:全12巻。
[編集] メディア展開
[編集] アニメ
- 「ゴリラーマン」:1992年6月25日、徳間ジャパンコミュニケーションズより発売のOVA。
- キャストは以下のとおり。なお、主役のゴリラーマンにはせりふがまったくないのに声優が割り当てられたことが話題となったが、実際にはうめき声が入っているだけである。
- 「ゴリラーマン2」:1993年12月24日、徳間ジャパンコミュニケーションズより発売
[編集] ゲーム
- 「ゴリラーマン」:1993年4月28日、ヨネザワより発売。ファミリーコンピュータ用ソフト。