サイレント・マジョリティ
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サイレント・マジョリティ(Silent Majority)とは、「物言わぬ多数派」という意味で、積極的な発言行為をしないが大多数である勢力のこと。1969年、ニクソン大統領が演説に用いてからは「発言はしないが現体制を支持している多数派」というニュアンスで用いられるようになった。
概要
アメリカのニクソン大統領が、1969年11月3日の演説でこの言葉を用いた。当時、ベトナム戦争に反対する学生などにより反戦運動がうねりを見せて高まっていた。しかし、ニクソンはそういった運動や発言をしない大多数のアメリカ市民はベトナム戦争を支持しているという意味[1]でこの言葉を使った。事実、兵役を回避しながら反戦運動をする学生などに対して低所得者層の労働者たちが反感を強めていた。このため、反戦運動のデモは、幾度かベトナム戦争を支持するブルーカラーの人々のデモと激突した。実際に1972年の大統領選挙ではニクソンは50州中49州を獲得し、圧勝している。
日本においても、昭和35年(1960年)のいわゆる「安保闘争」の際に、当時の首相岸信介は国会において、安保反対運動に参加していない国民を声なき声という言葉で表現し、ニクソン大統領の「サイレント・マジョリティ」とほぼ同じ意味で用いた。これに反論する意味で結成されたのが「誰デモ入れる声なき声の会」(現・「誰デモ入れる市民の列」、模索舎主宰)である。
現在においても、民主主義国家の多くには「サイレント・マジョリティ」と呼ばれるべき人々が存在すると見られ、見えない大勢力への配慮が政治上欠かせないものとなっている。
ただし、「サイレント・マジョリティ」とされる人々自身は公の場で広く発言することはまずない(であるからこそ“サイレント”・マジョリティなのである)ため、しばしば、客観的な根拠なしに「サイレント・マジョリティは自分たちを支持している」という主張がなされる事が起きる。時には「しかし、サイレントマジョリティの存在を考えると…」等と、自己の主張が明らかに社会の中で少数派なのにもかかわらず、あえて少数意見を極端に重視する言い訳に利用されることすらある。