ザ・ワールド・イズ・マイン
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『ザ・ワールド・イズ・マイン』(The World Is Mine)は、新井英樹の漫画作品。週刊ヤングサンデーに1997年~2001年まで連載された。通称:TWIM、WIM。
小学館から単行本全14巻が発売されたが、すぐに絶版になった。2006年よりエンターブレインからストーリー変更はないが大幅に加筆、修正した豪華版『真説 ザ・ワールド・イズ・マイン』全5巻が出版された。この復刻版は発売三日目にして増刷り決定、二ヶ月で五刷りという売れ行きを見せている。
目次 |
[編集] 概要
その過激な暴力描写とストーリー性から話題を呼び呉智英、岩井俊二、松尾スズキ、庵野秀明といった著名人から絶賛された。
同時期に連載された『殺し屋1』とともにカルト的な人気を持つ異色の漫画である。とくに理由もなく殺人を犯すモンちゃんとトシ、正体不明の生物ヒグマドンが起こす騒動に関わる人々の人間群像劇が描かれている。人間の愚かさ、尊さ、加害者、被害者の心理を、当時の現実世界の暗い世相を反映させながら、神話的な世界で描いている。が、それゆえに映像化は不可能といわれている。そのラストは読者から賛否両論が噴出した。
作中でインターネットが重要な役割を果たしたり、9.11以前に同時多発テロを描くなど、時代に先駆けた描写が多数存在する点も見所である。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
都内各所で消火器爆弾を設置するモンちゃんとトシの二人組(トシモン)は、これといった理由もなく北海道を目指し道中の青森県で成り行きから連続爆破、警察署襲撃、殺人代行といった日本全土を震撼させる無差別殺戮を開始する。それは内閣総理大臣までも舞台に引きずり出す大きな勢いとなる。丁度時期を同じくして北海道から津軽海峡を渡ったといわれるヒグマドンと名付けられた謎の生物が出現して次々に人々を惨殺して東北を南下していった。それを追いかける鉄人と言われる熊撃ちの老人と新聞記者。そして遂に3つの点が秋田県大館市で遭遇する。ここで初めてヒグマドンの全貌が明かされ物語はアメリカ大統領すら巻き込む全世界レベルで進行していく。
市内で別れた後、ヒグマドンは自衛隊で捕獲が決定され仙台市で仮死状態にされたあと太平洋を海上輸送されたが途中で巨大化。水爆を打ち込まれることでようやく成長が止まった。
トシモンはモンちゃんが秋田市内で銃を乱射した後、警察と銃撃戦ののち山中へ逃走してトシだけ逮捕される。モンちゃんは国内の支持者を使って関東同時多発テロを引き起こしたのちに海外に脱出して世界のテロリストのカリスマになった。
こうして世界は殺伐としたまま、今までと変わらず続いていくと思われたが……。
[編集] 登場人物
モンちゃん
- 正体不明の謎の男。本名はなくこの呼称はトシが付けた。見た目も中身も原始人で本能のままに行動し、楽しければ殺人でも、強姦でもする。しかし、人を引き付ける魅力があり口数は少ないが、その言葉は時として真理を得ている。その生い立ちは、母親に放置された状態で育ち、亡くすと各地を放浪しながら一人で育ち凶悪事件を次々に起こす。だがなぜか発覚せずに大阪でトシと出会い二人で無差別殺戮を繰り広げることでその存在を世間に知られるようになった。クマのぬいぐるみを身に着けている。
三隅俊哉(トシ)
- モンちゃんの相棒。元々は、爆弾作りが趣味だが常識のある大阪市内在住の平凡な郵便局員だった。ある日パソコンのEメールに予言が届きその夜モンちゃんと運命的な出会いをする。彼に魅了され引きずられるように犯罪を犯す。当初は罪悪感からオドオドしていたが次第に顔つきが変わり逃走中に母親の自殺を知ると本物の殺人鬼に変貌した。
阿倍野マリア
- 秋田県の女子高生。実家の旅館に犯行が発覚する前のトシモンが泊まりにやってきた。当初はトシのネット仲間であった「マリア」と勘違いされるが別人。心優しい性格からモンちゃんを心配する。
由利勘平
- 第75代内閣総理大臣、通称ユリカン。特に目立たない政治家と思われていたがトシモンが警察署襲撃時に要求した返答をテレビでの会見で驚くべき回答をして国民を驚かす。その後のテレビ番組でも「ひとまず殺してみよう」「バカは罪だ」等、政治家らしからぬ過激な言動で話題を集めた。
塩見純一
- 青森県警捜査一課長。モンちゃんにテレビの生中継のなか警察署を襲撃され、多数の死傷者が出たショックで現場を放棄する。責任を取らされて警部補に降格し、薬師寺とともにトシモンを追跡する。
薬師寺喜治
須賀原譲二
- 秋田県警本部長。非常災害対策本部の指揮官に任命される。潔癖症のため「G・C(ジョージ・クリーナー)」という渾名を付けられている。犯人逮捕・射殺のためなら人質の犠牲もやむなしとする冷徹な性格。
浜喜多初江
- 青森西署襲撃事件の際、モンちゃんに大量の武器を調達した老女。モンちゃんとは4年前に北海道で出会っており、流氷の上に全裸で立つ彼を見た瞬間、恋に落ちる。直後、性欲処理のはけ口にされるがそれを受け入れ、一時的にではあるが同居人の女性と三人で穏やかな時間を過ごしていた。
伊丹修造
- 日本を代表する「キング・オブ・ロック」。貧しい家庭の出から成り上がり、「Jumbo Itami」の名で全米一位をも獲得した。TV特番でのユリカンとの激論をきっかけに親交が深まり、彼のストリップの場に自身のライブ「ワールド・イズ・マイン・ツアー」の会場を提供する。矢沢永吉がモデルと思われる。
ヒグマドン
- 突如、日本に出現した熊に似た怪獣。北海道に落下した隕石と関係があるとされ南下しながらトシモンと同時期に殺戮を開始する。当初は、熊と思われトシモンの陰に隠れた扱いを受けていた。しかし、秋田県大館市に出現して大暴れをしてその正体を現し世界中を驚かした。モンちゃんにすら恐怖を与え暴力を振るえなくするほど迫力があったが、自衛隊に仙台市内で仮死状態にされて捕獲される。
飯島猛
- ヒグマドンを狙う老猟師。ヒグマドンに殺された娘の親から依頼を受け射殺を引き受ける。足跡を辿るうちにその正体を見抜き秋田市内にヒグマドンが出現した際は、片目を銃で撃ち抜く。太平洋戦争で死地を生き抜いた猛者でもある。
星野隆之
- ヒグマドンを取材する新聞記者。バツイチ。穏やかな人あたりとは裏腹に、取材相手や同僚の悪口を大量の性器のイラストと共に手帳に書き込む卑屈な性格だが、取材中に出会った飯島と同行する内に彼の生き様に感化され始める。
ダグウッド・ヘイズ
坂本 淳
- 陸上自衛隊東北方面総監部防衛課運用班長 。ヒグマドン偵察のため、秋田県に向かう。一見挫折や苦悩とは無縁の人物の様に見えるが世界各国のマスコミ関係者からインタビューを受けた際に発した下手糞な英会話は淳自身のみならず、ヒグマドン対策に負われる自衛官の心情を代弁している。
- 深作欣二監督による映画化の企画もあったが、深作監督の他界により立ち消えとなっている。