シスターコンプレックス
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シスターコンプレックスとは、女姉妹に対して、強い愛着・執着を持つ状態をいう。もともとはフェティシズムの俗語であったが、分析心理学ではフェティシズムとコンプレックスはほぼ同義であるため、コンプレックスとして一般化している。ただし、正式に認められた心理学用語ではない。相手が兄弟の場合、ブラザーコンプレックスと言う。
俗に「シスコン」と略され、この場合は兄弟姉妹自体についても使われ、特に「姉妹に対する恋愛的感情」や「自分のものにしたい独占欲」のある兄弟、と言う図式で捉えられマイナスイメージをともなうことが一般的になっている。実際のシスコンの中には近親姦的な者も多くいるため、シスコンの定義を掴む事は非常に困難であるが、近年増加傾向にあるとも言われる。
異性間に使われる事が多いが、同性にも無論使われる。
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[編集] 概説
シスターコンプレックスに関しては異性の場合は2つのパターンが考えられている。
- 姉妹に対して恋慕を抱く場合
- 姉妹のブラザーコンプレックスに対応している場合
現在シスターコンプレックスの男性に対しては人妻と不倫経験があるとか、他者を見下している雰囲気があるなど色々と囁かれているが、それらが一般の傾向なのかは分かっていない。
「妹コンプレックス」「姉コンプレックス」と細分する場合もあるが、「妹コンプレックス」は省略すると「イモコン」になってしまい「妹コントロール」を皮肉ったものとも言われるためあまり流通していない。
[編集] 原因
原因に関しては複数の心理学者が自説を展開しているがそれぞれかなり異なっており定説と呼べるようなものはない。しかし、幼少期の状態がそのまま深化してしまった結果であると一般に言われている。
ラカンによると、男児は初め母親に対して性愛を向けようとする。しかしその際に彼女が実際には自分ではなく父親を見ている事に気づき、それゆえにより純粋かつ身近な相手として姉や妹に対して愛情を持ってしまうのだと言う。ただし、この場合も母親の場合同様通常父親の去勢不安によって止められるのが普通であるとされ、続く事はほぼないであろうとされた。
過度のシスターコンプレックスがなぜ起こってしまうのかについてははっきりとした論はないが、家族に何らかの機能障害が起こっているためというのが一般的である。父親の不在や、自分勝手な母親など、両親と正常な意思疎通が行われていない状況が絡んでいる可能性もあるとされる。
児童心理学者ビアジェに関連する解釈では、兄の場合自己がはっきり形成されていない時期に自分が妹によって中心であることが出来ず非中心化が起こるため、その我慢した分を妹を支配する事で解消している場合もあるとされる。また、姉のブラザーコンプレックスに対し、弟が「いい子」を演じようとするあまりシスターコンプレックスのようになってしまったという事例もある。この場合女っぽい感じが目立つようになると言われる。
また、両親の離婚などで離れている場合には姉妹を姉妹であると見られないため、その場合にも恋慕が起こる事もあるが、これをシスターコンプレックスに含めるかは微妙である。例えば、古代日本では異母兄弟姉妹の結婚が許可されていたが、これは家が違ったためであり、兄弟姉妹という認識が薄かったためである。
[編集] 萌え用語としてのシスコン
萌え用語としては、シスコンは多く妹に対する愛情を指し、姉に対するものは少数であった。これは、妹萌えという用語で代用される事もある。
この用法の奇妙な点は、この用法でシスコンという用語を使う人間の中には実際には妹がいない場合も多いという点である。また、妹がいる場合であっても本物の妹に対しては何も感じない場合も多い。実在の妹に対するシスコンもかなり多いのであるが、2000年代に入りこの用法の使われ方がメディアでは多くなり、実際のシスコンの影が薄くなってしまっている。
これは実際にはロリコンの一種であるとも考えられるが、この場合には幼さではなく「妹」という存在自体に対して興味があるとされるため、必ずしも同じではない。姉に関して使う事は少ないが、姉萌えという用語が2000年代半ばにかけて波及したため、最近は姉に関しても使う事が多々ある。
同性間にシスターコンプレックスの用語が使われる事もあるが、男性側では「お姉ちゃんを取られたくない」という意味合いのものが多い。女性側では姉と妹のカップルに用いられる事も多い。なお、これらは概念としては確立しているが作品描写は少数である。
これらの意味でのシスコンは「妹的存在」「姉的存在」にも応用されており、その適用範囲は実に多岐にわたる。