ショートリコイル
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ショートリコイルとは、大威力の弾薬を使用する自動拳銃や、一部の機関銃などに採用されている機構。日本語で反動式とも言われる。
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[編集] 概要
遊底と結合された銃身が、一定距離ともに後座する自動火器の閉鎖機構。そののち結合が解けて銃身は停止、遊底のみが後退を続け、抽筒、排莢、撃発機構の再セット等を行う。バネ等により復座した遊底は次の弾薬を薬室に装填した後、後座したままの銃身に突き当たり、これを元の位置に押し戻して再結合する。
[編集] 開発の背景
ショートリコイルが必要になった理由として、弾薬の大威力化が挙げられる。
火薬式の火器において、銃身の中の弾丸はその背を高温、高圧の発射ガスに押されることで加速する。前後に貫通したパイプ状の銃身を持つ後装式火器では、弾丸が銃口を飛び出し、同時に発射ガスも放出され内部の圧力が安全な程度に下るまで、遊底でもって後部に栓をしておかなければならない。閉鎖が完全でないと、高圧ガスが噴き出したり、薬莢が割けたりして極めて危険であり、次弾の装填にも支障をきたしてしまう。
威力の弱い弾薬ならば、遊底の重みと複座バネの力だけで、弾丸が銃口を抜けるまで閉鎖を維持する事が出来た。だが軍用に耐え得るような大威力弾では、必要な遊底重量やバネの反発力が過大になりすぎ、操作性や携帯性の限界を超えてしまう。
そこで銃身と遊底を一定の距離、つまり一定の時間、ともに移動させる事で、遊底開放までの時間をかせぐショートリコイルが考案された。
[編集] 方式
実用となった最初のショートリコイル機構は、ボチャードピストルのトグルジョイントと言われているが、同時期のモーゼルピストルやその他無名無数の試作品ともども、黎明期のショートリコイル機構はとても複雑である。ブローニング考案によるコルト・ガバメントのティルトバレル式機構は、極めてシンプルという点で画期的だった。
現在、自動拳銃のショートリコイル機構は、改良型ブローニング式が大部分を占めるが、中には上下に動く独立した閂子を特徴とするプロップアップ式や、銃身を回転させる事で結合、解除を行うロータリーバレル式等も採用されている。また機関銃でもショートリコイルを採用しているものがあるが、一般的なガス作動方式に比して、銃身やガス抽出孔の汚れを気にする必用が無く、さまざまな種類の弾丸を使用できるという優位点がある。
[編集] 遊戯銃におけるショートリコイルの再現
自動式の銃器を模した遊戯銃において、遊底が後退する機構を持つものはモデルガンと、エアソフトガンの一種であるエアコッキングガンとブローバックガスガンの3種が主である。これらの遊戯銃では、モデルガンとブローバックガスガンでは作動ガスの圧力が低いこと、エアコッキングガンではそもそも手動装填を行うことから、本来ショートリコイルは不要である。しかし、モデルになった実銃の動きを再現するために、あえてさせている機種は多い。
エアソフトガンの銃身は、実銃の銃身を模したアウターバレルと、実際に銃身としての役割を果たすインナーバレルによる2重構造となっている。エアソフトガンによるショートリコイルの再現は、アウターバレルだけが動くものと、アウターバレルとインナーバレルが一緒に動くものの2種類が存在する。前者はインナーバレルが動かないため命中精度が確保できること、後者は銃身付近の構造をリアルに再現できることがメリットとされている。例外的なものにインナーバレルのみが動くものがあるが、これはBB弾を確実にバレル内に誘導するのが目的である。(東京マルイのセンチメーターマスターなどがそれにあたる)
もともと作動機構上不要であることもあり、モデルガンをステージガンに、あるいはブローバックガスガンを競技用に改造する場合、このショートリコイル機構を取り払ってストレートブローバックにし、作動の確実性や速度を向上させることもある。