スズキ (魚)
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スズキ | ||||||||||||||||||||
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![]() 釣獲されたスズキ |
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分類 | ||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||
Lateolabrax japonicus (Cuvier et Valenciennes, 1828) |
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英名 | ||||||||||||||||||||
Japanese seabass Japanese seaperch |
スズキ(鱸) Lateolabrax japonicus は、スズキ目・スズキ亜目・スズキ科に属する魚。海岸近くに生息する大型の肉食魚で、食用や釣りの対象魚として人気がある。成長につれて呼び名が変わる出世魚でもある。
目次 |
[編集] 特徴
全長は最大で1mを超える。体は細長くて左右に平たい(側扁する)。口は大きく、下あごが上あごより前に出る。体色は背中側が緑黒色-灰緑色、体側から腹部にかけて銀白色をしている。尾びれはハート型に切れこむ。若い個体の中には背側や背びれに小黒点が散在する個体もあり、成長とともに消えるが、背びれの黒点は大きくなっても残ることがある。
北海道南部から九州までの日本列島沿岸と朝鮮半島東・南部、沿海州に分布する。冬は湾口部や河口など外洋水の影響を受ける水域で産卵や越冬を行ない、春から秋には内湾や河川内で暮らすという比較的規則的な回遊を行なう。昼間はあまり動かないが夜になると動きだす。食性は肉食性で、小魚や甲殻類などを大きな口で捕食する。
産卵期は冬で、春になると河口付近の沿岸浅所や河口域で仔稚魚が見られる。中には川を遡上し淡水域で過ごすものもいる。仔稚魚はカイアシ類や枝角類、アミ類、端脚類を捕食して成長する。
[編集] 分類
スズキ属の上の区分「科」の分類は見解が分かれることがある。日本での代表種であるスズキの名をつけて、和名では「スズキ科」という名を用いる場合が多いが、これの意味するところは場合により異なる。
- ペルキクティス類(温帯性スズキ類)と呼ばれる主にオーストラリア産のスズキ類と一緒にして、スズキ科( Percichthyidae ペルキクティス科)と呼ぶ場合
- モロネ類(温帯性シーバス類)と呼ばれるヨーロッパやアメリカ大陸産のシーバス、スズキ類と一緒にして、スズキ科( Moronidae モロネ科)と呼ぶ場合
- スズキ属だけを含む単独のスズキ科 (Lateolabracidae) を設定する場合
がある。ここでは 1. に従っている。スズキ亜目にも関連記事。
[編集] 近縁種
スズキ属魚類の分布は東アジアに限られ、スズキの他に近縁な2種および交雑個体群に由来する集団が知られる。いずれも食用や遊漁の対象として有用である。
- ヒラスズキ Lateolabrax latus Katayama, 1957
- 全長1mほど。スズキによく似ているが和名のとおり体高がより高くて平たい体型をしている。他には吻がやや長くて下あごの下面に鱗があること(無いものもある)、尾びれのつけ根が太くて切れこみも浅いこと、側線下方鱗や背鰭の軟条数などで他の2種と区別できる。房総半島および福井県から九州までの太平洋側および日本海側の沿岸、朝鮮半島南岸に分布する。外洋に面した岩礁域に主に生息し、内湾や河川にはあまり侵入しない。産卵期は太平洋側ではスズキとほぼ同じと考えられるが、九州などでは3月ごろかもしれない。土佐湾では1月[[ごろから仔稚魚が砂浜海岸などの沿岸浅所に出現し、河川にも進入する。
- タイリクスズキ Lateolabrax maculatus(McClelland, 1844)
- 全長1mほど。近年までスズキと同種とされていた。鰓杷数、脊椎骨数および側線鱗数で区別できる。スズキと異なり成魚でも多くの個体で黒点が目立つため「ホシスズキ」とも呼ばれるが、黒点の全くない個体もある。もとは中国沿岸、台湾、朝鮮半島西岸に分布し、日本沿岸には分布していなかったが、養殖用に輸入された個体が逃げ出して野生化した外来種である。日本で再生産を行なっているのかについては不明である。産卵期は渤海では8月から11月ごろ、台湾では1月ごろである。
- 有明海産スズキ
- 成魚や仔稚魚の形態が日本の他地域のスズキL. japonicusと異なり、アイソザイムやDNAのAFLP解析の結果、スズキとタイリクスズキとの交雑個体群に由来する独特な集団であることが示された。最終氷期のころに交雑が生じたと考えられる。仔稚魚は有明海湾奥部河川などに出現し、その河川の激しい潮流と高濁度といった特殊な環境の中、特異な生態を見せる。一方、有明海の前浜干潟にも多数出現する。
[編集] 漁業
定置網、刺し網などの沿岸漁業で多く漁獲される。普通のエサ釣りは勿論、海のルアーフィッシングの対象魚としても人気が高い。ルアーフィッシングではスズキによく似たヨーロッパスズキ(スズキ亜目を参照)の英語名からとった"シーバス"(Seabass) の名が定着している。釣りジャーナリストの西山徹がこの名を使用しはじめたといわれる。
[編集] 陸揚げ漁港
[編集] 食材
身は血合いまで白っぽい白身で、「スズキ」という和名も「すすぎ洗いしたようなきれいな身」に由来するとされる。身の質はタイに似て、柔らかくて癖もなくあっさりしている。関東よりも関西でよく食べられる。
産卵期である冬に、内湾に産卵回遊した大型のスズキが多獲されて多く市場に出回り、そのためにスズキの旬が冬とされることがあるが、この時期には生殖腺に栄養が多く要求されるために体は痩せて肉質は非常に悪い。スズキの肉質がよくなるのは夏で、夏のスズキはよく太って非常に美味である。旬の定義をその魚が最もおいしい時期とするならば、スズキの旬は夏である。
新鮮なものは刺身にするが、洗い、昆布じめ、膾、寿司ネタなど、刺身に手を加えて味や歯ざわりを楽しめるようにした料理もよく作られる。他にムニエル、塩焼き、奉書焼、煮付けなど、いろいろな料理にされる。
[編集] 別名
スズキはいわゆる出世魚で、成長とともに呼び名が変わる。ただし、地方によって呼び名は様々に異なるほか、分類も微妙に異なるなど、正確な定義は無い。
例として関西では1年ものと2年もの(体長 20-30cm 程度まで)を「セイゴ」、2、3年目以降の魚で体長 40-60cm 程度までを「ハネ」、それ以上の大きさの通常4-5年もの以降程度の成熟魚を「スズキ」と呼んでいる。東海地方では、60cm程度までを一律に「セイゴ」、それ以上の大きさの成熟魚を「マダカ」と呼んで二分することが多い。