ディオファントス近似
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ディオファントス近似(-きんじ)とは任意の無理数αに対して、
となるような整数x, yを求める方法、もしくはその値である。上式を満足するxとyは無数に存在する。不等式は
と書き直すことができることから、「任意の無理数αに対して、誤差が以下であるような、近似有理数
を求める」と言い換えることができる。
[編集] 性質
円周率πを小数点以下3桁まで十進数表記するとすれば3.141である。これを分数で表記すれば3141/1000であり、
- | 3141 / 1000 − π | < 1 / 1000
が成立するので誤差を1/1000以下に出来ることはあきらかである。しかし、ディオファントス近似はより小さい分母にてよりよい近似できる可能性を示唆するものである。
実際
- | 355 / 113 − π | < 0.00000027 < 1 / 1000000
である。故に、ディオファントス近似は無理数を有理数で近似するよりよい近似方法の存在を示しているとも言える。
ディオファントス近似の不等式を満たす x, yが無限にあることの証明は鳩の巣原理を使って証明可能である。この証明の過程を利用して、πの近似で性能がよいものを分母が小さい順に求めると、以下のようになる。
- | 3 − 1π | < 1 / 3
- | 22 − 7π | < 1 / 7
- | 333 − 106π | < 1 / 106
- | 355 − 113π | < 1 / 113
これからπの近似として、3, 22/7, 333/106, 355/113, ... を得ることができる。これらの近似値は古代からよく知られた円周率の近似値である。
また、近似値と連分数展開は深い関係にある。例えばπの連分数展開は
であるが、7の時点で計算を打ち切ると22/7、15の時点で打ち切ると333/106となる。この手法で5番目の近似値を求めると、円周率の近似として、103993/33102を得ることができる。また実際
- | 103993 − 33102π | < 1 / 33102
である。