トライク
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トライク(Trike)とは、三輪の自転車もしくはオートバイのことである。Tricycleの略で、二輪のバイク(Bike)に対する言葉。
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Inspired Cycle Engineering社の X2R back-to-back リカンベント・トライク
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[編集] トライクの定義
前輪または後輪のどちらかを、製造時もしくは改造により車輪を二つにし、上から見て前後輪を二等辺三角形の角にあたる部分に配置した構造のものが一般的である。
したがって従来のオートバイまたは自転車の側面に一輪を増やしただけのサイドカーとは構造的に異なるが、サイドカー(側車付き自動二輪)の側車側の車輪も駆動されている場合は、トライクと見なされる。この場合、サイドトライクと呼ばれることがある。過去に、外観はサイドカーだが、側車側車輪も駆動されたオートバイを、ヘルメットを着用せずに運転して違反とされたが、後に警察側が「トライクであった」と間違いを認め違反を取り消した事例がある。
なお、トライクにハンググライダーの翼とプロペラをつけた超軽量動力機もトライクと呼ばれている。
[編集] 法律的要件
- 自転車の場合は、1978年以降道路交通法上、二輪の自転車と異なる扱いはされない。普通自転車としての要件を満たせば歩道を通行することもできる。
- オートバイの場合、道路交通法上はオート三輪に準ずるものとして扱われ、運転免許は普通自動車免許が必要となる。
[編集] 自転車のトライク
昔から作られているものは前一輪後二輪のものが多く、前輪直結のペダルを直接回す小児用の三輪車とは異なり、普通自転車と同じ構造で後輪をチェーンにより駆動させている。
しかし昔は後輪の片側だけを回す構造のものが多く、駆動力の程度によりスリップや走行不安定になることもあるため、最近では後二輪ともに駆動力を与えられるよう造られている。
また前輪のハンドル部分しか曲げることが出来ず、曲がる時のバランスが悪くなる欠点があったが、最近では前輪だけでなく車体を支えるフレーム自体を後輪部分と分離して傾けられるようにし、バランスが取れるように改良された。
最近は前二輪後一輪のものも造られており、これもカーブを曲がるときに前輪が傾かずバランスが取れなくなる弱点があったが、前二輪を自動車と似た懸架構造にして傾かせることにより克服し、普通の自転車感覚に安定性を加えた車両となっている。
[編集] オートバイのトライク

オートバイのトライクは、基本的には既存の二輪車の後輪部分を改造したものであり、構造はシャフトドライブや独立懸架を用いるなど自動車の技術を応用したものが多い。なお最初から車体全体を車室(ボディ)が覆う形で製造されたものはオート三輪に類することになるため、狭義のトライクから外れるという解釈をする人もいる。
元々はアメリカで流行したものであり、日本国内でも近年は業者による改造が盛んになってきたが、当初は過去のオート三輪についての法律の扱いに拠る車両製作を行っていたため、「三輪幌型自動車」としての扱いを受けることになり、税金や車庫証明などで自動車と同じ扱いとなっていたため、トライクの法的位置付けが問題視されるようになった。
そして1999年(平成11年)に当時の運輸省より『50cc超のトライクは道路運送車両法上では側車付き自動二輪車(サイドカー)・道路交通法上では普通自動車とみなす』という見解が出され、これにより同年7月16日以降、車両登録とナンバープレートは二輪車となったが、運転免許では普通自動車免許が適用されるようになり、オート三輪同様に二輪用ヘルメットを装着しない公道走行が認められることになった。なお有料道路の料金はオートバイ扱いとなるが、駐車場では普通自動車の扱いとなる。
1990年代までの全地形対応車(ATV)はトライクが一般的であり、本田技研工業ではATC(ALL TERRAIN CYCLES)という通称で販売していた。しかし転倒例が多く、アメリカでは訴訟にまで発展したことから、オートバイメーカーによる生産も全て4輪に切り替えられ、急速に衰退した。
[編集] トライクの特徴
長所としては通常の二輪よりバランスに優れており、特に遅い速度で走る時は有利であるため、身体障害者が手軽に乗れる乗り物としても注目されている。ただし「転倒しない」ということではない。
前一輪後二輪のトライクは積載能力に優れていることから、後部に座席を設けて乗客を乗せる自転車タクシー(輪タク)に用いられている。また箱根駅伝などのマラソン中継で、機動性と安定性が両立できる面からオートバイのトライクがカメラ撮影用に使用されることがある。
短所としては、通常の二輪に比べ車体が大きく重いため機敏な動きがしづらいことと、二輪より数倍も高価であることが挙げられる。またオートバイのトライクは現在でも法律的に曖昧な部分があるため、所有者も関係する法律をよく把握しておく必要がある。
[編集] レンタルトライク
- 2006年より、日本ではマツダレンタカーが試験的に一部店舗で導入した。
[編集] 参考文献
雑誌『別冊 MOTOR CYCLIST』八重洲出版(連載記事より引用)