トラックミキサ
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トラックミキサとは、車体に回転可能な円筒形の容器(ドラム)を装備した自動車のことである。
生コンクリート(生コン)など、輸送中に撹拌させておく必要のある物を輸送する目的で使用される。発明者は「スカイラインの父」として知られる桜井眞一郎である。
ミキサー車、アジテータトラック、アジテータ、トラックアジテータ、生コン車、移動式ミキサとも呼ばれる。マスメディア及び一般社会においては専ら「ミキサー車」の呼称が使われている。官公庁および土木・建築業界においては「アジテータ」の呼称がよく使われる(詳しくは後述)。
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[編集] 用途と呼称
主に生コンクリートを製造工場から建築・土木工事現場へ輸送するために使われる。生コンクリートは輸送中でも適度な撹拌を行わないと骨材や水が分離し、均一でなくなってしまうので、容器を回転させ撹拌しながら輸送する。このような特別な構造を持つため、特種用途自動車(いわゆる8ナンバー)の形態の一つとなっている。
厳密にいえば、コンクリートの材料(セメントや骨材など)を積み込み、容器内で練ってコンクリートを製造する機能を持つものを「ミキサー車」または「移動式ミキサ」といい、あらかじめ工場で生産されたコンクリート(レディーミクストコンクリート、略してレミコン)を撹拌しながら輸送するものを「アジテータ」という。ミキサー車はアジテータに比べ、容器を高速で回転させることができる。構造的にはどちらも大差なく、最近ではコンクリートの輸送が容易になったことや、現場内に製造設備を設置したりするようになったことから車両内でコンクリートを製造する需要が少なくなってきていることで、アジテータが普及しており、ミキサー車もアジテータとして使えるものが主流になった。そのため現在ではミキサー車とアジテータは厳密に区別されなくなってきているが、一般社会では「ミキサー車」、業界では「アジテータ」の呼称がよく使われるようになっている。
[編集] 主要装備
- ドラム
- 生コンクリートを積載するための円筒状の容器である。走行中も常に回転し続けて骨材や水の分離を防ぎ、生コンクリートを均質に保つ。ドラム全容量は1.5m3(2ton車)~9m3(10ton車)。(混合容量は半分)
- ホッパ
- 車両後部上方にある、生コンクリートの投入口。
- シュート
- 生コンクリートを目的の荷降し位置へ導くための樋。
- 水タンク
- 荷降し後にドラム、ホッパ、シュートを洗浄するための水を貯蔵する。容量は通常200リットル。
- 水ポンプ
- 水タンクの水を噴射するためのポンプ。
- 汚水バケツ
- シュートを洗浄する際に出る汚水を貯蔵するバケツ。ドラムおよびホッパを洗浄する際に出る汚水はドラム内に溜まる。
- レバー
- ドラムの回転方向および回転速度を調整するための操作レバー。横に動かして回転方向を、縦に動かして回転速度を調整する。車両後部左右、ホッパ付近、および運転席にある。ただし運転席のレバーは回転方向のみで回転速度は調整できない。運転席にはアクセルペダルがあり、回転速度はこちらで調整できるためである。
- 無線機
- 多数台数で隊列を組むことが多いので、工場や先行車、後続車との連絡用に装備することが多い。
[編集] 問題点
[編集] 路上駐車問題
大規模な現場ではトラックミキサは数十台から数百台の隊列を組む。トラックミキサを送り出す生コンクリート工場としては、顧客である土木・建築業者の利便を図る意味から、現場へ途切れ目なく生コンクリートを供給するため、早め早めの出荷をしがちである。そこで、早く現場付近に到着したトラックミキサの路上駐車問題が発生する。
無線で連絡し合って、出来るかぎり迷惑にならない場所を工夫するが、一方で、出来るだけ現場に近い場所で待ちたい心理もあり、周辺住民とのトラブルが発生することもある。
一方、荷降し後のトラックミキサは、車両各部を路上で洗車するのが常である。建前としては工場へ帰ってから洗車するべきなのだが、生コンクリートは時間とともに硬化するので、早く洗車すればするほど短時間で綺麗に出来るため、早く洗車したいのが運転手の心理であり、生コンクリート工場としても作業能率の点もあり、黙認しているのが現状である。大規模な現場ならば専用の洗車場所が確保されているが、中小規模の現場では付近の路上で洗車することになる。ここでも路上駐車問題が発生する。
[編集] 過積載問題
通常のトラックでよく問題になる過積載だが、トラックミキサでは極端な過積載は行われない。極端な過積載を行えばドラムに収まり切らず溢れてしまうからである。
ただし、溢れない範囲での過積載は行われているのが現状である。この場合、技量の低い運転者や内部にコンクリートが付着してドラム容量が減ったトラックミキサでは、変速時のショックなどで溢れてしまう。
[編集] 不法加水
現場で打設に従事するポンプオペレータや土工が運転手に対し、ドラム内の生コンクリートへの加水を要求することがある。水分の多いコンクリートの方が打設作業が順調に運ぶからである。この加水には、洗浄用の水タンクの水が使われる。この行為はコンクリートの強度と耐久性を大きく損なうため、厳しく禁じられているが、かなりの現場で行われているのが実状である。現場での加水や降雨で水分の増したコンクリートを俗にシャブコンと称する。
[編集] 製造業者
ミキサー車は自動車メーカーが製造したシャーシに架装業者がミキサーの装置部分を装備(架装)することで製作される。シャーシ製造業者は主に自動車として機能するために必要な部分(エンジン・タイヤ・ホイール・車軸・運転室・各種灯火など)を製造し、架装業者はミキサーの部分(ドラム・ホッパ・シュートなど)を製造する。
以下に、日本において高いシェアを持つ架装業者を挙げる。
[編集] 関連項目
カテゴリ: 車両系建設機械 | 建築施工 | 自動車関連のスタブ項目