コンクリート
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コンクリート(混凝土、英: concrete)は、砂、砂利、水などをセメントで凝固させた人造石である。
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[編集] 概要
コンクリートは、広義の意味では砂や砂利(骨材という)、水などをセメントなどの糊状のもので結合させたものを指す。そのためセメントで結合させたものをセメントコンクリートと呼び、アスファルトで結合させたものをアスファルトコンクリートと呼ぶ。建築資材として一般にコンクリートと呼ばれるものはセメントコンクリートの方である。(省略してコンクリ、COとも読み書きされる)。別名ベトン(Béton - フランス語)。凝固する以前の状態はフレッシュコンクリートと言われる(生コンクリートまたは省略して生コンとも)。強度と価格の面から、また施工の安易さから、現在最も優れている建築資材の一つであり、建築物、道路、ダム、高架橋、トンネル、港湾設備と用途は幅広い。
コンクリートは圧縮力(押さえつけられる力)には強いが、引張り力には弱い。このためコンクリート単体で使うのではなく、コンクリートの中に鉄筋を入れた鉄筋コンクリートとして使われることが多い。鉄筋を入れることでどちらの力にも十分な強度を持たせることができる。また、鉄筋コンクリートに鉄骨を埋め込んだ鉄骨鉄筋コンクリートや、鉄骨鉄筋コンクリートの鉄骨を鋼管に置き換えた鋼管コンクリート、あらかじめ圧縮力をかけておくことによって引張力が作用しても軽減できるプレストレスト・コンクリート、生コンクリートに合成樹脂や鉄の繊維を混ぜ込んで強度・延性を増した繊維補強コンクリートも用いられる。
コンクリート構造物の供用年数は50~60年程度といわれており、高度成長期に大量に建設された構造物の維持・管理が21世紀の日本の大きな課題となる。
[編集] コンクリートの製造
コンクリートの材料は、セメント、骨材、水、混和材および(化学)混和剤である。それらをうまく配合して、強度や耐久性、施工性を得る。コンクリートの強度は水セメント比で決まる。水とセメントの比率を変えることで、さまざまな強度のコンクリートを作ることができる。近年、化学混和剤を用いて水を減らすことで高い強度を得る高強度コンクリートも多用されている。
コンクリートを生産方法で分類すると、工場(バッチャープラント)で生産されるレディーミクストコンクリート(レミコン)と、建設現場で生産される現場練りコンクリートに大別されるが、ほとんどはレディーミクストコンクリートである。レディーミクストコンクリートはトラックミキサ(アジテータートラック、レディーミクストコンクリート運搬車)によって現場に運ばれる。現場練りコンクリートは、ごく少量のコンクリートを必要とする場合や、逆に非常に大量のコンクリートを必要とする場合に用いられる。ごく少量のコンクリートを必要とする場合は主に手作業で、非常に大量のコンクリートを必要とする場合は建設現場内にバッチャープラントと同様の設備(サイトプラント)を建設して行う。
[編集] コンクリートの施工
未だ固まらないコンクリートはそれ自体形を保つ事が出来ないので型枠に打ち込み硬化までの所定時間を型枠内部で養生する必要がある。 コンクリートの型枠への打設(打込み)の際には、コンクリートの均一性の確保と初期欠陥の防止が重要である。主な防止策として打設時のバイブレーターの使用、木づちによる空気の除去が挙げられる(これらの動作などを締固めという)。初期欠陥として、未充填箇所、豆板、コールドジョイント、ひび割れなどが挙げられる。
締固めが不足すると、未充填箇所を生じてしまう。一方、過剰な加振によって材料分離を生じることもある。また、十分なかぶり(建築用語ではかぶり厚)の確保が必要である。かぶりとは、鉄筋からコンクリート表面までの最短距離を指す。
適切な仕上げ、養生(ようじょう)を行う。 打継ぎ箇所には適切な処理を施す。 全体に防水処理を施す(見栄えが悪くなる可能性が高いため注意が必要)。
施工業者の経験の豊富さや技術次第で、強度や外見に大きな影響を与えると言っても過言ではない。近年打ちっ放しの建造物が多いが、常に外気・水・日光、そして視線に晒されるので、業者の慎重な選定が必要である。
[編集] コンクリートの劣化機構
コンクリートはメインテナンスフリーの材料と称される時代があったが、実際には様々な原因によって劣化を生じる。以下に主な劣化機構を挙げる。
- 荷重の増大と設計
- 環境の変化
- 材料の品質
- 人的要素
- 実際に施工する人々の無知、怠慢によるもの。
- アジテータトラックから現場への搬出時に、作業を容易にする目的で現場作業員が勝手にレミコンに水を加え(一部の現場では、水を加えることをのませると呼んでいる。要は不法加水)、結果として想定していた強度や耐久性が不足する「しゃぶコン」など。
[編集] コンクリートの検査
[編集] 施工時に行う検査
打設に使う生コンクリートの柔らかさを測定するためにスランプ試験を行う(試験内容についてはスランプを参照の程)。現場監督や施主にきちんとした知識が有ればこの試験によりしゃぶコンなどの使用を未然に防ぐことが可能である。
従来は、使用材料、かぶりといった仕様を規定していたが、近年は、供用予定期間、温度変化などの性能規定型へ移行している。
- ※ 照査は、検査とは別の言葉であり、「設計・計画された内容が要求性能を満足しているかどうかを、実施工が始まる前の段階で施工主が判定すること」である。
[編集] 非破壊検査
非破壊検査には外観検査と内部検査とがある。
[編集] コンクリートの維持管理計画
ジャンカなどを防ぐために初期点検、劣化予測、要求性能の評価・判定、対策、点検、記録をする必要がある。
[編集] 参考文献
- 小林一輔『コンクリートが危ない』1999年 岩波新書 ISBN 4-00-430616-7
[編集] 関連項目
- 鉄筋コンクリート(RC) - プレストレスト・コンクリート(PC)
- プレキャストコンクリート(PC,PCa) - プレパックト
- モルタル
- レイタンス
- コールドジョイント
- 白華
- 古代コンクリート
- 関連学問: 土木工学 - 建築学 - 材料工学 - 材料力学 - コンクリート工学
[編集] 外部リンク