ナインボール
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ナインボール(英:Nine-ball)は、ビリヤードのゲームの一つ。プレイヤーは通常2人。1番から9番までのカラーボール9個と手球1個の計10個の球を使い、手球を番号順に的球に当ててポケットに落としていく。最終的に9番のボールを落としたプレイヤーの勝利となる。
映画『ハスラー2』の影響により爆発的人気を博したことで有名。そのため、日本ではナインボールがスタンダードなゲームとして広く認知されている。しかし、実際は狙える的球が1つしかないという制約が厳しく、単純なルールのわりにそれほど簡単なゲームとは言えない。初心者向けにナインボールを易しくしたゲームとして、ネオナインボールが考案されている。
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[編集] ゲームの流れ
[編集] ラック
1番を先頭、9番を中央に置き、菱形にラックを組む。この際、1番がフット・スポットの上に来るようにする。1番と9番以外のカラーボールの配置は自由である(テキサス・エキスプレス・ルール、後述)。
[編集] バンキング
先攻、後攻を決めるためバンキングを行う。プレイヤー2人が同時に手球をヘッドラインからフット側の短クッションに向かって真っ直ぐ撞き、戻って来た手球がヘッド側の短クッションにより近い方が先攻を得る。
なお正式な試合でない限り、必ずしもバンキングを行う必要はなく、じゃんけんなどで決めても良い。また、一般のビリヤード場では普通カラーボールを直接撞く行為は禁止されているので注意。
[編集] ブレイク
先攻のプレイヤーはまずブレイクを行う。ブレイクとは、手球を強く撞いてラックされているカラーボールを散らすショットのことである。ブレイクショットとも言う。手球はヘッドラインの内側であれば、自由な位置に置いてよい。なおブレイクでは手球を最初に1番に当てなければならない。
ブレイクで1個以上の的球がポケットされた場合、プレイヤーは続けてプレイすることができる。反対に、的球がポケットされなかった場合(ブレイクノーイン)、相手のプレイヤーに交代する。
ナインボールでは手球を左右どちらかの長クッション付近に置き、レールブリッジから撞き出す、いわゆるサイドブレイクが主流であり、アマチュア・プロを問わず多くのプレイヤーがこれを採用している。
[編集] 勝敗の決定
テーブル上にある一番小さな番号のカラーボールを的球とし、手球を的球に当てて(この行為をショットという)順番にポケットしていき、最終的に9番を合法的にポケットしたプレイヤーの勝利となる。的球をポケットすることに成功した場合、プレイヤーは継続してショットすることができるが、ポケットに失敗した場合やファウル(反則)があった場合は相手のプレイヤーに交代する。
ショット後、手球や的球の振る舞いによって他の的球がポケットされてもそれはセーフプレイ(ファウルにならないプレイ)である。このため、途中で9番が間接的にポケットされてゲームが終了することもある。ブレイクショットで9番がポケットされることもあり、これはブレイクエースと呼ばれる。
ゲームは通常セットマッチ形式で行い、5セット先取した方が勝ち(5先という)などとあらかじめ決めておく。セットマッチの場合、ブレイクは交互に行うか(交互ブレイク、オルタネイト・ブレイク)、勝利したプレイヤーが行うか(勝者ブレイク、ウィナーズ・ブレイク)の二通りがある。
[編集] ファウル
以下はファウルとして扱われる。
- 手球が一番小さい番号の的球以外の的球に最初に当たった場合。
- 手球がいずれの的球にも当たらなかった場合。
- 手球が的球に当たった後、テーブル上のいずれの球もクッションに当たらなかった場合。ただし、これは的球がポケットされなかった場合に限る。(ノークッション・ファウル)
以下は他のゲームにも採用されている共通ファウル。
- スクラッチ(手球がポケットされること)
- ショットなど必要な場面以外で身体やキューが球に触れた場合。
- 手玉を撞いた後、再度タップ(キューの先端)が手玉に触れた場合。
- テーブルの外にボールが飛び出した場合。
- 両足を床から離してショットした場合。
USナインボールにおいては、ファウルを犯した場合、相手のプレイヤーは手球を自由なところに置いてプレイを続行できるが(これをフリーボールという)、ジャパンナインボール(後述)などでは特殊な配置で再開しなければならない。
また3回連続でファウルを犯した場合、その時点で負けとなる。これを3ファウルという。
[編集] ルール
- テキサス・エキスプレス・ルール
- テキサス・ルールとも。現在最も広く採用されているルールである。特徴として、ファウルの際に誤って落ちた9番以外の的球は台に戻さない、ラックの位置は1番と9番以外自由である、などその名の通りゲームをスピーディーに行うための工夫が多い。
- ジャパン
- 5-9 (ごっきゅー)
- どちらも変則ルールのナインボールで、特定の球に点数がついておりポケットした得点の合計にて争う。サイドポケット(長辺にある2つのポケット)に落とすと得点が2倍になるなど、ギャンブル性が非常に高いことでも有名。ローカルルールが多数存在すると考えられ、得点条件やファウル後の処理も比較的複雑である。5-9では5番と9番の2球のみが得点の対象となるが、ジャパンでは3,5,7,9番の4球が対象になるなど細部のルールが異なる。東日本では5-9、西日本ではジャパンが好まれる傾向にあるようである。
[編集] ブレイク・ラン・アウト
ラン・アウト、マスワリとも言う。ブレイクから一度もミスせず、つまり相手にショットさせることなく、1番~9番の的球を全てポケットすること。ただ単に的球をポケットさせるだけでなく、次の的球をポケットしやすい位置に手球をコントロールするポジション・プレイの力が強く要求される。
[編集] ネオナインボール
ナインボールを元にしたゲーム。異なるのは1番から8番までを自由な順番でポケットしてよい点である。9番だけは最後にポケットしなければならない。従って、ファウルは「9番以外の的球が残っているときに、手球を最初に9番に当てた場合」と「手球がいずれの的球にも当たらなかった場合」になる。他の共通ファウルは適用される。
番号順に狙う必要がないため、ナインボールよりも難易度が低くなっており、初心者でも比較的簡単にポケットの楽しさを味わうことができる。