ピアリング
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ピアリング(Peering)とは、インターネットサービスプロバイダ(ISP)同士が相互にネットワークを接続し、互いにトラフィックを交換し合うこと。
一般的にはインターネットエクスチェンジ(IX)を介して行うものを指すが、IXを介さずにISP同士が直接専用線などを用いて接続を行う場合(プライベートピアリング)もある。
[編集] IX経由のピアリング
IXにおいては、一般的に単にIXが用意するスイッチングハブにケーブルを接続しただけでは全くトラフィックが流れることはなく、当該IXに参画するISPに対し個別にピアリングを行ってくれるように交渉を行う必要がある。これは大手ISPにおける「トラフィックのただ乗り」に対する危惧が背景にある。
日本初のIXであるNSPIXP1が誕生した当初は、IXに参加しただけでNSPIXP1に参加する他の全ISPと無条件にピアリングが成立し、相互にトラフィックを流すことができた。しかし当時は海外に直接接続する回線の価格が非常に高く、ISPの中でもインターネットイニシアティブ(IIJ)など一部の大手ISPしか海外に接続していなかったため、中小ISPの中には海外回線の費用負担惜しさにNSPIXP1への加入を試みるものも現れた。また実際そのようなISPが増加するにつれ、IIJなどは海外向け回線の増強を行わざるを得なかった。
そのためNSPIXP2の開設以降は、そのような「海外向け回線へのただ乗り」を防ぐため、IXにおけるピアリングは原則としてISP相互間で合意するまで行わないこととすることが一般的となり、ISPの規模に大きく差があるようなケースでは中小ISP側が大手ISPに対し海外向け回線の費用相当額を負担すること(=IPトランジットの購入)をピアリングの条件とするケースも見られるようになった。
しかしIXの規模拡大と共に参加するISPの数も大きく増加しており、それらのISPに対し個別にピアリングの交渉を行うことは非常に手間がかかる作業となっている。そのため最近の商用IXでは、IXの運営会社がピアリングの交渉代行を行うケースも多い。またBBIXが最初からYahoo! BBのネットワークに対するピアリングを保証しているように、後発のIXの中には大手ISPとのピアリングを保証して新規加入者の勧誘に努めているところもある。
[編集] プライベートピアリング
IXにおけるピアリングを利用した接続は、IXが保有するスイッチングハブの性能とポート数に大きく速度が左右される。場合によってはスイッチングハブの性能を大きく上回るトラフィックが集中して速度が大きく低下するケースや、IX自体のトラブルによりトラフィックが全く流れなくなるケースもある。またトラフィックの増加に伴い回線を増強したくても、あるIXにおいて1社が保有できるポート数には上限があることが多く、その制限のために回線増強が行えない場合がある。
このような状況に対応し、IXの障害発生時におけるバックアップの確保、あるいはIXの能力を上回る回線速度増強などを目的として行われるのがプライベートピアリングである。接続手段としては一般的には専用線やダークファイバーが使われるが、IX接続のためのハウジング設備が同じビル内に置かれているISP同士の場合はLANケーブルなどで接続を行う場合もある。