フレーム形式 (自動車)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
フレーム構造 (自動車)とは自動車の構造の技術。
自動車のフレーム構造ボディ・オン・フレームとよばれる。ボディ・オン・フレームの種類には幾つかのものがある。また、フレームを使わない構造(フレームレス構造)としてモノコック構造がある。
目次 |
[編集] ボディ・オン・フレーム
ボディ・オン・フレーム(Body-on-frame)構造は、単純にフレーム型、フレーム構造ともいわれる。堅牢なフレームをつくり、そこに別に製作したボディを乗せる構造のこと。フレームはエンジン、トランスミッション、車軸、サスペンション、タイヤなどドライブトレーンを支える役割がある。これは自動車のはじまりから現在まで続く基本的構造である。最初のフレームは木製で一般にはトネリコが使われた。これは1930頃より鉄製(スチール製)に置きかわる。
フレーム構造には、さまざまなタイプがある。
米国では自動車のデザインを頻繁に変更したので、はしごフレームが使用されることが長く続いた。モノコックよりも、シャーシに与える影響がすくないから。これにより消費者に一番アピールするボディースタイルとインテリアが、車の基本性能に影響を与えることなく頻繁に変更できた。これにより車のモデルチェンジにかかるコストを下げ、期間を短縮できた。また、このことは同じシャーシから別の車両を容易に製作できることになり、モデルの多様化にも貢献した。特にコンピュータ化されていない時代にはこの点が大きな優位性をもっていた。
小型車の多くは1960年頃よりモノコック構造に移行しており、トラック、バス、大型乗用車のみが従来型のフレーム構造を用いていた。移行には数十年を要したが、今日ではSUVといわれるカテゴリーに属する車両でもモノコックが採用されるケースも出てきている。(技術的観点からはフレーム構造で作成された車両が本来的なSUVであり、モノコック構造の車両、言い換えると乗用車ベースのSUVはクロスオーバー車両(またはCUV)というサブカテゴリーに属するとされる。しかしながら、日本市場におけるマーケティングでは細かい区分を主張するのをためらいがちなため、日本メーカーは主にどちらもSUVとして扱っている。)
しかしながら、重量物を積載するヘビーデューティ車両ではいまだボディ・オン・フレーム構造が主流となっている。
フォード社のリンカーン・タウンカーはラグジュアリークラス最後のボディ・オン・フレーム構造であり、リムジン車両製作業界ではその製作のしやすさから主流となっている。
[編集] 特徴
長所
- 一般的により快適性が高い。エンジンやタイヤからの振動が車室に伝わりにくいため。
- 設計、製作、修正が容易。CADが一般的に使用されるようになった今日においてはこの項目の重要性は低くなっている。)
- 頑丈で耐久性が要求される用途に向いている。
- 事故にあった際の修復が容易。
短所
- モノコックよりも重い
- 一般的に重心が高め
- モノコックに比較してトーション(曲がる際の全体のねじれ:ねじれ剛性)に弱い
[編集] 種類
[編集] X型
2本のサイドメンバーをX形に組み合わせたフレーム。
[編集] はしご型
H形フレームともいわれ、はしごの形をしたフレーム。製作が容易で、剛性がある。フレームのサイドメンバーがボディフロアの下にくるため室内が高くなる。
[編集] バックボーン型
[編集] プラットホーム型
[編集] トラス型
[編集] ペリメーター型
ペリメーターとは、周囲、周辺の意。ボディフロアの周囲にフレームをつけたもので、中間にメンバーを通さないために、フロアを低くすることができる。しかし、そのためにねじり剛性や曲げ剛性が弱くなるのでボディと一体になっている。
他のフレーム構造のものにくらべて軽量でコスト的にも安く、衝突時のエネルギー吸収では、フレームレス構造よりボディ変形を少なくすることができるというメリットがある。
[編集] 代表的車種
- GM シボレー・コルベット:フレームは1本のスチールから形成された、ペリメーターフレームを採用。GMが独自に開発した高圧流体プレスによってプレス成型している。ボディ剛性の向上、軽量化などのメリットがある。また、ドライブトレーンはフラットに配置できるので、広い居住空間とラゲッジスペースを実現した。(GM社の説明[1])
- GM キャディラック・XLR
- トヨタ・クラウン 3代目S50系から9代目S140系(1967年~1995年)まで
- マツダ・AZ-1
- マツダ・アテンザ
[編集] トラス型
[編集] バックボーン型
車のセンターに太いフレームを通したフレーム
[編集] 関連
従来、車の構造を修復する機械をフレーム修正機とよんでいたが、現在ではモノコックボディ構造が主流のため、ボディ修正装置とよぶようになった。
[編集] モノコック
モノコック:フランス語monocoqueからモノ(mono)=単一の、コック(coque)=卵。
フレームレスボディの代表。捻れや撓みに強く、必要以上に構造材を必要としないため軽量化が図れる。一方、局部的に過大な応力を受けるとその部分が変形、破断しやすく、補助の構造材(サブフレーム)で補強するのが一般的である。
フランスのドペルデュサン社の設計者ベシュローの発明で、卵の形が理想形であるが実際はコックピットなど開閉、開放部分が必要となるため、完全とはいかず、一般に使用されているモノコック構造とは正確にはセミモノコック構造のことを指す。飛行機では応力外皮構造と訳された。飛行機の機体の内部は骨組みだらけであったが、モノコック構造となり大きな空間が生まれた。車ではバスのような車内に大きな空間が必要とされる構造で使用され、後に乗用車にも用いられた。現在では乗用車のほとんどがモノコック構造である。米国ではモノコックは技術用語として使われ、一般の自動車ジャーナリズムなど一般にはユニボディ(unibody)が使用される。
最初のモノコック構造車は1923年のランチア・ラムダである。
関連:モノコック