フロン類
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フロン類(-るい)とは、フルオロカーボン(FC)、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)といった化学物質の総称である。単にフロンという場合には、クロロフルオロカーボン(CFC)の事を指す場合が多い。
フロン類は炭素、水素、塩素、フッ素などからなる化合物群でありCFCsと略される。フロンという呼び方は、日本でつけられた俗称であり、世界ではデュポン社の商標名であるフレオン®(freon)と呼ばれている。
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[編集] 歴史と性質
オハイオ州デイトンにあったゼネラル・モーターズ・リサーチ・コーポレーション(General Motors Research Corporation)で働いていたアメリカの化学者トマス・ミジリー(Thomas Midgley)が親会社ゼネラルモーターズ社(GM)から依頼を受け、家庭用冷蔵庫の冷媒として使われてきたアンモニアの代替品としてフロンの開発にあたり、1928年に開発に成功し特許を取得。GMは1919年から1979年まで米国の冷蔵庫メーカーフリッジデール社の親会社だった。GMは1930年に、化学薬品メーカーであるデュポン社と共同でキネティック・ケミカル・カンパニー(Kinetic Chemical Company)を設立し生産を始め、この製品の商標を「フレオン」とした。化学的、熱的にも極めて安定であるため、開発当時は「夢の化学物質」としてもてはやされた。
多くの人がフロンは無色・無臭で人体に対して無毒であると思っているが、これはミジリーが最初に合成に成功したフロン12がフロン類の中では毒性が低いものであったことによるもので、その後の研究により、フロン類の中にはトリクロロエチレンやクロロホルムより毒性の強いものも存在することがわかっている。また大量に使用する環境では肝障害の発生報告例がある。そのためフロン類の取扱いには充分な注意が必要である。
化学的性質が安定なため様々な用途に用いられ、冷媒、溶剤、発泡剤、エアゾール噴霧剤などとして使用された。
[編集] フロン類とオゾン層の破壊・地球温暖化
大気中に放出されたCFCは紫外線によって分解し、塩素原子(塩素ラジカル)が発生する。この塩素原子(塩素ラジカル)がオゾンを分解し、酸素分子と一酸化塩素ラジカルになる。この時発生した一酸化塩素ラジカルは再度オゾンと反応し、塩素ラジカルへと戻る。このサイクルが繰り返されることによりオゾン層が破壊される(このことは一酸化塩素に詳しい)。
そのため1985年のオゾン層の保護のためのウィーン条約、1987年のオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書(1999年改訂)により、製造及び輸入の禁止が決定された。これによりCFCの代わりとしてオゾン層を破壊しにくい代替フロン(HCFCやHFC)が登場した。
ところが、代替フロンのHCFCやHFCにおいても二酸化炭素に比べ数百~1万倍以上の温室効果を持つことがわかり、地球温暖化への影響を懸念して規制されつつある。ちなみにCFCも二酸化炭素より強力な温室効果ガスである。
日本においては、ウィーン条約やモントリオール議定書を受け1988年に特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律が制定され、1996年までに15種類のフロン類が全廃されている。また、これまで使用されてきたフロン類の回収・破壊のためにフロン回収破壊法、家電リサイクル法、自動車リサイクル法などの法律が制定され、フロン類の含まれる製品の廃棄時における適正な回収および破壊処理の実施等が義務づけられている。
しかし、モントリオール議定書では開発途上国での使用はまだ認められており、問題となっている。
なお、臭素を含むものはハロン(halon)と呼ばれ消火剤などとして用いられていたが、クロロフルオロカーボンよりもオゾン層破壊能力が強いため、こちらも現在では規制対象になっている。
[編集] 化学式
- CFC-12 CCl2F2
- CFC-115 C2F5Cl
など多数
[編集] 主なフロン類
[編集] フルオロメタン類
[編集] フルオロカーボン
- 記事フルオロカーボンに詳しい。