オゾン層
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オゾン層(オゾンそう)とは地球の大気中でオゾンの濃度が高い部分のことである。
オゾンは、地上から約20~50kmほどの成層圏に多く存在し、特に地上から20~25kmの高さで最も密度が高くなる。 オゾンは、酸素原子が3個結合してできる分子であり、人体に有害である。
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[編集] オゾンの発生
成層圏中では、太陽からの242nm以下の波長の紫外線を吸収して酸素分子が光解離し酸素原子になる。この酸素原子が酸素分子と結びついてオゾンとなる。また生成したオゾンは320nm以下の波長を持つ紫外線を吸収し、酸素分子と酸素原子に分解するという反応も同時に進行する(反応式のMは主に窒素や酸素の分子で、反応のエネルギーを受け取る役割をしている)。各反応素過程は次のように示される。hνとは光(太陽からの紫外線)のエネルギーを表している。
[編集] オゾン生成のプロセス
この反応のメカニズムは1930年にチャップマンによって考え出され、チャップマン機構と呼ばれる。大気中のオゾンは、その90%以上が成層圏に存在し、オゾン層では濃度は2~8ppmと、地表に比べれば非常に高い。
[編集] オゾン層と紫外線
オゾン層は、太陽からの有害な紫外線の多くを吸収し、地上の生態系を保護する役割を果たしている。 紫外線は波長によってUV-A、UV-B、UV-Cに分類される。最も波長が短く有害なUV-Cはオゾン層によって完全に吸収され、地表に届くことはない。UV-AとUV-Cの中間の波長を持つUV-Bは、そのほとんどがオゾン層によって吸収されるが、その一部は地表に到達し、皮膚の炎症や皮膚がんの原因となる。最も波長の長いUV-Aは、大半が吸収されずに地表に到達するが、有害性はUV-Bよりも小さい。
[編集] オゾン層の破壊
オゾンはヒドロキシラジカル、一酸化窒素、塩素原子などの存在によって分解される。これらは成層圏で自然にも発生するものであり、オゾンの生成と分解のバランスが保たれてきた。
しかし冷蔵庫、クーラーなどの冷媒や、プリント基板の洗浄剤として使用されてきたフロンなどの塩素を含む化学物質が大気中に排出されたことで、成層圏で塩素原子が増加し、オゾン層の破壊が進んだ。 フロンは非常に安定な物質であるため、ほとんど分解されないまま成層圏に達し、太陽からの紫外線によって分解され、オゾンを分解する働きを持つ塩素原子ができる。
成層圏における、塩素原子による触媒反応系はダイマー駆動機構(dimer-driven mechanism)と呼ばれ、その反応素過程は次のように示される。
[編集] オゾン分解のプロセス
正味:
この塩素原子は、たった1つでオゾン分子約10万個を連鎖的に分解していく。 こうした原因からオゾンホールと呼ばれるオゾン濃度が極端に薄くなった部分が出来た。南極上空では、オゾンホールが毎年9~10月に現れることが知られている。
このままオゾン層が破壊され地表に有害な紫外線が増えると、皮膚がんや結膜炎などが増加すると考えられている。 気象庁の観測によると、日本上空においても、オゾンの減少傾向が確認されている。しかし近年になってフロンガスの全世界的な使用規制が功を奏したとみられ、オゾンは徐々にではあるが再生されつつあるが、まだまだ予断を許せる状況ではない。
なお、「これまでに放出されたフロンが成層圏に届くまでには数十年かかるので、オゾン層破壊はこれから更に進行する」というのは俗説である。実際、対流圏でフロン濃度が最大になってから成層圏でフロン濃度が最大になるまでに要する時間は、3~4年程度である。
[編集] 関連項目
- オゾン層の保護のためのウィーン条約
- オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書
- 特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律
- 特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律
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